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雇用創造の方向性と担い手 |
私は日本経済は四つの不安の中に置かれていると主張している。 一つは“過去からの不安”だ。バブル経済の崩壊による不良債権問題など過去から積み残しにされている問題がある。 二つ目は“近未来からの不安”である。日本は未曾有の少子・高齢化社会に突入していく。その時代、老齢年金や介護保険(注4)がどうなるかといった近未来に到来する社会保障に関する不安がある。 |
ひいては、その時代にそなえるための財源確保を目的とした消費税や社会保険料の個人負担のアップが大きな負担となりつつあり、三つ目の“現在の不安”をつくり出している。その三つの不安が現在の消費の抑制をもたらしている。
さらに四つ目の不安がある。廃棄物処分場の逼迫、ダイオキシンに代表されるような“環境問題の不安”だ。 |
過去からの不安を除いて、近未来からの社会保障の不安、現在の生活不安、環境不安はいわば市民生活の基盤を形成するものに対する不安といえる。 社会保障や雇用、環境問題に起因する生活不安を解消するような方向で、雇用を創造していく必要がある。具体的にはファミリー・サポート産業、福祉産業、環境産業といった“生活支援型産業”が |
おきるような社会的な枠組みを法律によってつくっていくことが求められているのだ。 ファミリー・サポート産業とは家族の中にある個人をサポートしていくものをさす。例えば個人の能力転換のための教育産業、保育園、託児所、あるいは家族で楽しめるようなリゾート施設などである。 |
福祉産業は高齢化社会を迎え、必要でありながら、不足が予想される分野だ。介護保険を担うホームヘルパーが少ない。政府もこれを増やすとしている。 2000年に介護保険の制度が始まるが、これを雇用の創造という面から見た場合、その分野できちんとした雇用が生まれるかが重要になってくる。残念ながら現在、考えられている介護保険の仕組みのままではホームヘルパーはパートの形態が多くなり、 |
常勤が足りないという事態になると予測される。本格的な高齢化社会を迎えたとき、それで本当に介護保険の制度が維持できるのだろうか。問題は介護報酬の少なさにある。質の良い常勤のホームヘルパーを必要なだけ確保するためには介護報酬を上げ、ホームヘルパーに十分、生活できるだけの年収を保障しなければならない。 そのためには当然、財源が問題になるが、余地はある。 |
まず私が疑問に感じているのは保険料の支払いが40歳からという点だ。これを20歳からに引き下げてもいいのではないか。また「保険」と呼ばれているが、その財源の半分は税金で賄われる。当面、税の部分を増やし、介護報酬の価格を上げることも可能だ。 |
必要な介護報酬を確保できれば、民間企業もこの分野に参入しやすくなる。いずれにしてもきちんとした介護が受けられる仕組みをつくり、生活不安を解消することが雇用の創造につながるのである。 |
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