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雇用

生涯にわたるワークシェアリング


 企業内でストック型とフロー型の選別が始まれば、ストックとして生き残ろうとする従業員は今まで以上に会社に忠誠心をもって、一所懸命に働かなくてはならない。加えて、裁量労働制(注2)がスタートする。企業内のサバイバル競争がより激しくなる中、いっそう過剰な労働を強いられる可能性がある。

 では、このような労働環境の変化は働く女性にはどのような影響を与えるだろうか。
 4月1日に改正された男女雇用機会均等法(注3)が施行され、労働基準法の「女性保護規定(時間外、休日、深夜労働の禁止)」が撤廃された。よく言われているように、男性並に働く時間のある女性にとっては良いことかもしれない。


 ただし、今後総合職で働く女性たちが新しい雇用の環境である一・五極化の波の中に入っていく。雇用の複線化のもと、長期蓄積能力活用型の適用者の選別は男女の区別がなくなる。いっそうの精勤が求められるが、性別役割分業のもと、結婚・出産・育児などのため、男性並の労働時間で働けない多くの女性たちは、常勤か、子育てか、結婚の先延ばしかの選択を迫られる。子育ての場合、その後パートなどの臨時採用だけが残される。  またこれまでは“女性も社会に出て働くべきだ”という主張がなされていたが、やがて“女性も働かざるをえない”という状況が訪れると思われる。夫婦中心型家族のなかで婚姻した男女がともに働き続けなければならず、これらの事態を放置すれば、少子化はますます進むだろう。今後、日本が迎える労働環境の変化のシワ寄せの影響をもっとも大きく受けるのは労働者であり、家族という単位だ。


 今、求められているのは育児や介護などをしながら働くことができ、しかもボランティアなど公的な活動にも参加できるような社会の実現だ。男女ともに家族生活を維持しながら、個々の自己実現も図ることを可能にするような家族政策・労働政策を総合的に講じていく必要がある。それには育児休暇、介護休暇、ボランティア休暇などの制度、あるいは再雇用制度をきちんと整備することだ。  そのような制度を整えることにより、生涯にわたる労働時間の短縮を実現できる。私はそれが生涯の労働時間にわたるワークシェアリングになると考えている。わかりやすく言うなら、ある人が育児休暇を3年間とるとすれば、その間、ほかの人がその代りに働くことになる。生涯にわたる労働時間の譲り合いである。


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