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雇用

生活の質を見据えた構造改革


 日本経済の現状を見ると、このまま事態が進めば、アメリカが先例を示した「雇用の回復なき経済回復」という経緯を辿ることも考えられる。すなわちリストラによる企業の業績の回復の過程で、臨時雇用化が進み、やがて企業の業績が回復し、経済が再生するという方向性だ。
そのような手法をとることも一つの考え方だろう。
 ただし国民の幸福という観点から見た場合、どうだろうか。QOL(quality of life=生活の質)を高めていくという観点から考えたとき、現在、日本で志向されている、“アメリカ的な方法”には疑問をもたざるをえない。


 今、多くの日本人の目はアメリカを向いているが、ヨーロッパ、例えばドイツなどの社会的市場経済の仕組みも参考にする必要があろう。社会的市場経済は端的に言えば、人間の暮らし方を市場のルールにするものだ。
 そもそも日本で“アメリカ的な方法”とされる方法はあまりにも一面的な情報からとらえられている。例えばアメリカではボランティアが社会の基盤として機能していることを経営学者のドラッカーは著書『非営利組織の経営』の中で指摘している。
市民が公共的分野で活動できる枠組みをつくり、自主自立の市民社会を形成することが雇用の創造にもつながるが、そのような部分が日本では見落とされて議論されている観がある。
 今、日本で志向されている構造改革の手法は生活の質という側面を見据えたものだろうか。人間の生活をどのようにしていくのか。それこそが重要なのであり、それを置き去りにした社会の将来には危惧を抱かざるをえない。


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