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雇用

従来型の雇用対策の限界


 このような雇用を巡る環境の変化に対して、政府の雇用対策の位置づけはどうなっているのか。
 これまで政府は基本的に、できるだけ失業者を出さないという“雇用の維持”を重視し、雇用調整助成金を中心とした対策をとってきた。これはあまり指摘されていないことだが、雇用調整助成金は緊急避難的ワークシェアリングという性質がある。確かにこれまでのような循環型の不況であれば、不況時に緊急避難的ワークシェアリングを行い、景気が回復したら、
それを解くという方法をとることができた。
 問題なのは雇用調整助成金というシステムが想定しているのは循環的不況だが、現在、日本が直面しているのは循環型ではなく、産業の抜本的な改革を必要とする構造的な性質をもつ不況であるという点だ。1991年以降、政府は少しずつ雇用調整助成金の適用を拡大しているが、緊急避難の繰り返しという形になっていることは否めない。旧来型の手法である雇用維持政策の限界が見え始めているのである。


 現在、政府はこれに代って、労働力の流動化を政策の柱の一つにしようとしている。労働力が余っている産業から必要としている産業への労働力のシフトであり、そのための能力開発の政策などだ。
 それを実施するとき、前提条件となるのは雇用の受け皿があるということだ。今、流動化の必要性を説くとき、ミスマッチという言葉がよく使われるが、問題はミスマッチとともに、
働き口がなくなっているということだ。失業した人を吸収する産業が育っていないということが最大の問題点である。抜本的な雇用対策として、新たな働き口となる雇用の場をつくり出すことが必要な段階に入っているのである。それをどのような方向にもっていくのか、そして、その担い手をどこに求めるかということがもっとも重要なのである。


 当然ながら政府も雇用創出の政策を模索している。通産省もベンチャービジネスの支援などを行っているが、その実効性には疑問を感じざるをえない。
 生涯にわたるワークシェアリングによる雇用維持を行いつつ、雇用創造の政策を講じなければならない。
そのとき、雇用創造の方向と担い手が問題となる。では雇用創造のニーズがある分野とは何か。
 私はもっとも有望な分野が“生活支援型産業”であると考えている。一言で言えば市民生活の不安を解消していく産業である。


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