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派遣法で改善すべき点

-- 次に労働力需給調整機能についてお聞きします。昨年12月に施行された改正派遣法・職業安定法をどのようにご覧になっていますか?
「需給調整機能の効果としては限定的に考えるべきでしょう。派遣法・職業安定法だけをもって労働力需給のミスマッチが解消され、失業率が劇的に低下することはありません。
 諸外国を見ても、労働者の求職活動は新聞や雑誌、チラシ広告などが中心です。どこの国も、5〜6割がそれで就職しています。今ではインターネットという新しい媒体にも求人が出るようになり、情報量は増えています。では、求人情報
を多く出せば、需給がマッチングするかといえば、それも過大な期待です。むしろ紛争コストがかかることを想定しなければなりません。今は労働力が過剰ですが、労働力が不足する局面になれば、誇大広告などのトラブルも増加することが予想されます。退職届を出した後、それに気づいたのではどうにもなりません。政策としては職業情報に対する教育・啓発などが必要です」
-- 派遣法でさらに改善すべき点はございますか?
「派遣法の改正で、これまで特定の業務だけに規制されていた派遣の対象業務が原則自由化になったわけですが、今


回、新たに認められた業務については派遣期間を1年間とする規制がつけられました。また従来から認められていた業務は、これまで通り最長3年間という派遣期間になっています。そのふたつの原理が入ったことで、おそらく派遣労働者を受け入れる企業は混乱することもあるのではないでしょうか。使い勝手の良い制度にするには、対象外業務を定める方式に一本化したほうが良いのではないかと思います。
 また以前は60歳以上の派遣労働は高年齢者雇用安定法の特例で、自由に認めていましたが、今回の改正で、それを派遣法に取り込みました。60歳以上の
派遣労働者は1年間しか働けなくなってしまったわけで、これについては高年齢法の規定に戻すべきだと思います」
-- 高梨先生は昭和61年に派遣法が導入される際、ご尽力されたわけですが、現在までの派遣法をめぐる議論をどのようにご覧になっていますか?
「導入する時、私は常用雇用労働者と別の性格をもつ労働市場を作るという思想を持って、労使にご同意いただいたのですが、その後、第1回目の改正の時、派遣期限を3年間までと区切られたのです。私はそれには反対でした。常用雇用労働者とは違う市場を形成していくのだから、期限は制限しなくていいという考え

をもっていたわけです。派遣期限を区切ってしまったため、議論が混乱した面があると思います。
 派遣期間に制限を加えるという背景には、派遣労働は常用雇用労働に比べて劣悪な条件の雇用形態だという思想があるわけです。派遣労働は不安定な雇
用であって望ましくないという思想です。私はそういう思想ではありません。現に派遣労働者として働きたいと希望する人が存在しているわけです。であれば、それを前提として、派遣労働の条件を改善して、健全な派遣労働市場を作っていくことを考えるのが先決だと思います」

 
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