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日本型雇用慣行のメリット

-- バブル崩壊以降、長期継続雇用など日本型雇用慣行はもう限界だという議論が盛んになりました。これについてはいかがお考えですか?
「まず事実はどうかということです。労働力が『流動化』しているなら、平均勤続年数は短期化しているはずですが、統計を見てもその傾向は見えません。そもそも終身雇用は日本でも少ないのです。日本の社会が『非流動的』とする人は統計を見ていただきたい。日本のサラリーマンは6000万人に近い数ですが、約半分の2500万人は転社経験をもっています。実際にはかなり移動しているのです。
また定年まで務める人は、大企業に限定しても統計上、30%だけです。中小企業の労働者はさらに移動が盛んです。  最近の雇用の議論で、『終身雇用や年功賃金といった雇用慣行のため、労働移動が硬直的になり、それが日本の産業構造転換の妨げになっている』という意見があります。長期継続雇用のための制度を批判する方もいます。『雇用調整助成金は解雇を抑制する働きがあるからけしからん』というわけです。  私もいったん会社に入れば、一生涯そこに勤め続けるのが理想だとは思いませんが、長期継続雇用システムを悪


と言わんばかりの昨今の主張には今回の提言はくみしていません。簡単に社員の首を切って、労働市場に出すより、使用者はできるだけその社員の活用を考えながら、抱えるべきです。中高年層の労働者を解雇して、労働市場に出しても、簡単には再就職できません。そのような方法を採ることは、個人にとっても負担も大きく、また社会的負担も遥かに大きいのです。リストラを苦にした中高年の自殺が頻発していますが、そのような状況を生むほどの雇用不安が日本の経済の活性化を妨げています」
-- 日本型雇用慣行のもうひとつの象徴である年功序列についてはいかが

でしょうか?
「5年ほど前、アメリカで行われたシンポジウムにパネラーとして出席した時のことです。質疑応答の際、フロアから、『日本の年功制は年齢がくればみんな機械的に昇進、昇格、昇級するのか?』という質問が出ましたから、私は怒ったわけです。『そんな機械的な制度ではありません、日本の年功主義は実力主義・能力主義です』と。  日本の年功主義を否定する人は、実力主義や成果主義が望ましい制度であって、逆転人事は当前だとするわけですが、日本企業の年功主義は決して機械的な昇進システムではなく、きちんとした実力主義なのです。

 確かに日本とアメリカで企業の人事システムが極端に違う点はあります。アメリカの企業は入社2〜3年目で思い切った抜擢人事を行うことです。抜擢された人はやり甲斐を感じますから、一生懸命に仕事をしますが、排除された人はくさって辞めてしまうのです。  それに対して日本企業は原則として後輩は先輩を追

い抜かない 人事システムを採ってきました。追い抜くとしても、入社後10年くらい経ってからです。追い越されないと分かっているからこそ、先輩は安心して後輩に仕事を教えます。そのためチームプレーがうまくいく。ところが、そういう実態を踏まえない議論が今、あまりにも横行しているのです

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