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労働市場は「流動化」しない

-- 労働移動において、『失業なき』ということを強調されたということですが、労働力需給調整機能について、どのような考え方をお持ちですか?
「最近、労働力需給調整をめぐる議論で、『労働力の流動化』という言葉が盛んに使われますが、今回の答申では『流動化』という言葉をいっさい使いませんでした。と言いますのは、労働力は『流動化』しないものだからです。  労働力を商品として売買する労働市場は他のマーケットとは違った性質があります。資本市場であれば、世界を一気に駆けめぐり、一瞬にして価格が形成される市場があります。金、銀、銅などの一次産品にも商品
先物取引市場があって、短期的な価格変動をします。それに対して、労働力という商品は短期的な価格変動がありません。簡単に移動する性質ではないからです。ある地域で、工場が閉鎖して労働者が大量に解雇された時、その地域に求人がなければ、すぐに就職することはできません。人間である以上、家庭をかまえて、地域で生活をしているわけで、求人のある地域に簡単に移動することはできません。
 ですから、雇用問題の議論は、労働力市場に流動化はありえないという前提に立たなければなならないのです。そういう認識から、今回、『流動化』という言葉は


使いませんでした。もちろん『移動』という言葉は使っています。人間であれば当然、住居移動もすれば、職業移動もするわけです。しかし移動する際も、生じる摩擦を可能な限り少なくするために、政策を講じなければならない。そういう問題意識をもって提言をまとめました」
-- 『流動化』という言葉が流通している背景として、使用者側に『流動化』を求める意識があるのかもしれません。

「経営者の本音は分かります。大企業といっても、全社員が優秀ではないわけです。会社にとって良い人材が3分の1、可も無し不可も無しが3分の1、あとの3分の1は早くお引取りいただきたい人、
そのような採用をすれば、 その人事課長 は有能だと言われるくらい、採用は難しい(笑い)。とくに今、経営者が心配しているのが、バブル景気のときに水膨れ採用した30歳代の社員でしょう。当時の経営者が社員の採用でミスを犯したわけです。ここをいかに選別するかに懸命で、労働力を『流動化』したいというのが多くの経営者の本音だと思います。しかし私は簡単に労働者を解雇するような企業のほうが高く評価されて、株価が上がるというのは不健全な状況だと思います。経営者は人を雇った以上、それについて経営責任を負うべきだという思想を私はもっています」

 
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