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人口はあくまで予見

-- かつて事実上、完全雇用の水準を誇っていた日本の雇用状況も現在は高い完全失業率で推移するなど、雇用・経済情勢は厳しい状況が続いています。また経済・産業構造の変化や少子・高齢社会の到来など日本社会は大きな変化を迎えようとしています。
 昨年、高梨先生は雇用審議会の会長として、日本の雇用政策の中長期的在り方を定める第9次雇用対策基本計画をまとめられました。まずその計画の内容についてうかがいます。
「前回の第8次雇用対策基本計画(注1)は平成7年〜12年の5カ年計画でしたが、途中、バブル経済崩壊の影響を受
けて急遽、内容を見直すことになりました。今回の第9次雇用対策基本雇用計画(以下、基本計画)は期間を平成11年から21世紀初頭までの10年間としています。  昨年8月に閣議決定した今次計画の課題は、『労働市場の構造変化に的確に対応して、積極的に雇用の創出・安定を図り、人々の意欲と能力が活かされる社会の実現を目指すこと』です。完全失業率の目標については、今回は本文に入れず、参考にとどめました。今までの計画は5年先の雇用・失業情勢について見通しを立てていましたが、10年先となると、およそ予測しかねる面もあるわけです。今後、実質経済成長率2%


程度で推移するとして、10年先の時点における完全失業率を3%台後半から4%台前半としました」
-- 今回の基本計画の特徴はどのようなことでしょう?
「答申の副題にした『今後の労働市場』ということが大きな特徴としてあげられます。  これまでの基本計画というのは人口論から入っていたわけです。日本の総人口はどれくらいになるか、そのうち労働力人口はどれくらいかと、労働力の供給サイドから入って、議論を組み立てていたわけですが、私は、それはおかしいのではないかと指摘しました。将来の人口というのはあくまで予見ですから(笑

い)」
-- 労働力の供給面からではなく、需要面から議論を始められたということですね。
「日本全体の経済規模をどう考えるのか、経済のグローバル化やソフト化・サービス経済化の進展などで産業構造はどうなるのか、職業構造はどうあるべきか。まず経済活動と、その結果である労働力の需要の面を押さえ、それに労働力供給をどう適用させるのか、あるいは適用させないのか、そして、需給を調整する際に生じる摩擦の問題を見ていこうということです。今回、審議会会長として私はその点を強く主張しました」

注1 「第8次雇用対策基本計画」  計画期間は平成7〜12年。課題は「経済社会の変革期において雇用の安定を確保するとともに、労働者が可能性を主体的に追求できる社会、安心して働ける社会を実現するための環境整備を図ること」

 
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