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ミスマッチ解消の方向性 |
LEC東京リーガルマインド 代表取締役会長 反町勝夫 |
VS | 衆議院議員 森 英介氏 |
反町 今後、日本の労働政策はどのような方向に行くのでしょうか。例えばドイツではワークシェアリングという方法をとっていますね。ある企業でリストラが必要な事態になったとき、従業員一人あたりの労働時間を短くすることで、仕事を分けあう。つまり労働時間の調整により、失業者を出さず、雇用の場を確保することを優先するという考えだと思います。一方、アメリカの企業はどちらかと言えば人員を減らすことによって生産性を上げ、そのぶん新しい雇用の場を創出するということではないかと思います。では日本はどうかというと、現時点では企業はリストラによって生産性を上げていくというアメリカ型の方法を選択しようとしているように見えますが。 |
森 基本的に私自身は終身雇用制や年功序列といった日本型の雇用慣行の価値は認めています。しかし現実問題として産業構造の変化に応じた労働人口の再配置が求められています。そのミスマッチ(注4)をどうにかしなければならないのです。 アメリカで言えば、昨年1年間で100万人もの失業者が出ましたが、同時に300万人の雇用が創出されたと言います。日本政府も「100万人の雇用創出計画」を打ち出し、それを具体化して、「77万人」という数字を出しました。伝統的な日本型のシステムを認めつつ、流動化の方策を講じないと、ミスマッチがますます拡大していくばかりです。 そのときの政府の役割はどうやって(アメリカ型に)ソフトランディングさせるかということでしょう。 例えば私の地元の商店街の近隣に大規模小売店舗ができると、周辺の小規模な商店は廃業に追い込まれます。大規模小売店舗は雇用吸収力がありますから、マクロ的にみれば雇用面でもマイナスではないかもしれないが、現実問題として商店街が次々と廃業するのは困った問題です。できれば既存の商店街も存続させつつ、共存できるような経過措置をとるべきでしょう。そのためにはいろいろな形で国の支援が要る。同様に労働のミスマッチの解消を進めるにあたっても政府は一定の役割を果たすべきだと思っています。 |
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反町 日本の労働政策は困った問題が生じれば、政府が出て矢継早に手助けをすればいいという時代から、雇用そのものを創出する、あるいは雇用のトータルプランを展開するという時代へ変わってきたということですね。 |
森 そうです。ただ新規雇用の受け皿としても、アメリカの場合、ベンチャービジネスが育ちやすい土壌がありますが、日本の場合、それがなかなか育たない。民間の自助努力的な雇用創出を期待するだけではなく、その面でもある程度、国が支援していかなければならないと感じています。 |
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反町 確かにそのような雇用の文化が日本には残っていますね。大企業に勤めていた人々が可能性のあるベンチャー企業に移り、自らの能力を発揮することは望ましいのだというような文化をつくっていかないと。日本ではいまだに実際にその人が成した仕事の内容を評価する以前に、どれくらい有名な会社に何年勤めたということで評価されるような面が残っています。そのような雇用の文化を政府が自ら打ち破っていく姿勢を示すことは重要でしょう。 |
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