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雇用
反町勝夫 産業構造の変革が進む今、求められる労働政策とは

雇用関連の政策決定プロセス
森 英介氏
LEC東京リーガルマインド
代表取締役会長
反町勝夫
VS 衆議院議員
森 英介氏


反町
 森先生は自民党で労働政策に関する要職を歴任されておられますが、労働政策に取り組むことになったきっかけはどのようなものでしたか?


 甚だ主体性のない話ですが、労働政務次官になったことです。それまでは議員として労働政策を主たるテーマとしてやっていくという気持は特段、持っていなかったのですが、政務次官の立場に置かれてみると、労働政策は理解しやすかったのです。私は大学を卒業してから15年間、サラリーマン生活をしていましたから、このテ ーマに取り組むのは自分のような体験を持つ者がふさわしいと認識するようになりました。

反町
 自民党の議員の中で、そのような経歴の方はそう多くはないでしょうからね。


 労働政務次官をしていたとき、立場上、労働界の方々と多く接触がありましたが、私は工場で11年間、作業服を着て仕事をしていた経験がありましたから、「現場の労働者の気持はわかっている」という自負心を持っていました。そういう私であったためか、労働界のトップの方からもそれなりの親近感を持っていただけたようで、きわめて友好的な関係を保って仕事をしてくることができました。

反町
  そのようなキャリアをお持ちの森先生が労働政策に力を注がれていることは私たち国民にとっても非常に心強いことですね。



反町
 さて昨今、労働省管轄の立法が目白押しになっていますが、まず労働に関する法案がどのようなプロセスを経て成立しているのかをお聞かせください。



 政府提案の法律を例にとりますと、何らかの法律をつくったり、改正しなければならないというニーズが生じると、まず労働省内で現場の方や学識経験者とのやり取りをして、骨子をつくります。そして三者構成の審議会で審議されます。

反町
 三者構成とは行政、労働者、使用者側ですね。


 はい。

反町
 各議員につく秘書は委員会と兼務ですか?


 それは分かれています。委員たちは委員会に属するスタッフを持ちません。もちろん委員であれば委員会スタッフが援助の手を差し伸べますが、委員会スタッフは基本的に委員長に忠誠を誓っています。つまり委員会は委員長である上院議員の個人事務所と大変近しく仕事をします。裏返して言えば、委員長になると委員会のスタッフも自分のものですから、大変な知的パワーを所有することになります。

反町
 使用者側の窓口となる団体は?


 代表格としては、日経連(日本経営者団体連盟)です。労働者側は今は実態として連合(日本労働組合総連合会)です。また中立の立場として学識経験者なども加わります。

反町
 自民党内での議論はどのようにして行われますか?


 審議会の答申案を土台にして要綱をまとめますが、その前後に、党の政務調査会の労働部会に報告されます。その意見を反映させて、要綱を練り直すというプロセスを経て、最終的には党の労働部会、政策審議会、総務会でそれぞれの承認を得ます 。  もちろん自自連立内閣では自由党と連絡を取り合って、与党で合意できた段階で閣議決定されるわけです。その後、国会に提出され、そこから委員会に付託されて審議されます。

反町
 法案の成立過程における現行制度の長所・短所についてどのようなお考えをお持ちですか?

 

 政策決定プロセスの大きな枠組みでいうなら、行政府と立法府の関係の問題がありますね。最近、議員立法がだいぶ増えてきていますが、本来、立法府が立法しなければならないのに、ほとんどの法案が政府提案だというご指摘があろうかと思います。そのような前提としての問題はありますが、政府提案の法案であっても、立法府のチェック機能が健全に機能していれば、今のプロセスに特に問題はないと思っています。

反町
 連立内閣ということでのメリット、デメリットは?
 

 自民党と自由党の場合、基本政策に共通部分が多いですから、すり合わせにさほど手間取らないのですが、以前の自社さ連立政権のときは、それがまことにややこしく、あらゆる段階で、すり合わせをしては戻すということを繰り返していたため、すこぶる非効率・非能率でした。その結果、自民党は自民党らしさをなくし、社民党は社民党らしさをなくすということもありました。当時は政策決定に手間取ったり、政策がいびつなものになるといった問題がありましたが、今はそういうことがなくなり、すっきりしたと思います。

反町
 委員会の審議はどのように行われていますか? 時間の制約など、うまく機能しない部分はありますか?
 

 確かに時間的な制約はありますが、民主的な運営が前提ですから、数の理論だけで押し切るのではなく、野党の意向も反映させるわけです。多数決といっても、できるだけ多くの会派、人数の賛成を得て法案を通そうと懸命に努力しています。労働基準法(注1)の改正のときなども、双方で誠心誠意、意見調整をしました。

反町
 委員会の機能として野党の意見をできるだけ取り込むということがあるわけですね。ただ、自民党で法案をつくり、政策審議会を通して、閣議決定したとなると、委員会における修正は事実上、難しいのではありませんか?
 

 いえ、そうでもありません。政府提案の決定が委員会で修正される場合もあります。例えば金融2法(注2)などは野党案を修正して通したわけです。結果的にはあの判断で良かったと思います。私がかかわったものでも、労働基準法の改正は委員会でかなり修正を加えました。個人的には不本意な部分もありましたが、正直いって、結果的にはそのほうが良かったという面もあります。

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