↑What's New ←目次
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 通巻 193号

『女工哀史』のような世界

-- 公的機関による需給調整には労働者保護という観点もあったと思いますが?
「戦前の労働市場法は、鉱山労働者や建設労働者を搾取する者たちを規制することを想定していたわけです。だからこそ搾取しない政府が主として労働需給の調整を行い、やむを得ない場合、特定の業種に限って、例外的に民間に委ねる。これまで基本的にはそういう体制できて、例外的に民間に委ねる項目を徐々に増やしてきたというのが現状です。
 日本の労働市場法は、いまだに戦前のやり方を引きずっています。強大な独占企業が圧倒的な力をもって、無力な労
働者と対峙している、『女工哀史』の時代のような『需要独占』の世界を想定しているわけです。
 だから、政府が労働市場に厳しい規制をかけても、規制によって発生するコストはもっぱら独占企業が負担するのだから、労働者は得になるこそすれ、何のマイナスにもならない。それが前提だったわけです。  ところが、今のように市場が競争的になってきますと、国際貿易における保護主義と同じで、規制というのは、それに守られている産業にとってはプラスですが、その負担のツケは他の労働者に回されることになります。労働市場が競争的であればあるほど、規制に


よる負担は他の労働者に重くのしかかるのです。徐々にそういった状況に近づきつつあります。
 規制することが労働者の利益になるというこれまでのやり方には、それなりの歴史的背景があったわけで、その考え方が間違っているとか、正しいというより
も、経済・社会が変化して、これまでの労働市場法制がそれにそぐわないものになりつつあるということです。そのため、多様な働き方を希望する人が増えている状況に見合った法改正が求められるのです」

 
→Next

↑What's New ←目次
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 通巻 193号
Copyright 2000 株式会社東京リーガルマインド
(c)2000 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.