女性の働き方の変化を現場で見続けてきたキャリアコンサルタントの記録
M字カーブに象徴された女性の就業をめぐる課題は、大きく変化しました。女性の再就職支援から育休・復職支援へ、そして今は男女を問わず「人材を活かす」企業づくりへ。変化する社会の中で、キャリアコンサルタントに何が求められるのかを考えます。
(想定読了時間:約12分)
<この記事をおすすめしたい方>
・社会の変化に対応した支援をしたいと思っているキャリアコンサルタントの方
・企業支援をしたいと思っているキャリアコンサルタントの方
・それぞれの人の自己実現を応援したいと思っているキャリアコンサルタントの方
・社会の変化に対応した支援をしたいと思っているキャリアコンサルタントの方
・企業支援をしたいと思っているキャリアコンサルタントの方
・それぞれの人の自己実現を応援したいと思っているキャリアコンサルタントの方
- 目次
1.キャリアコンサルタントになるまでの経歴
私の子育てがひと段落し、再就職した先では若手社員の相談対応も求められていました。中には、一生を左右するような決断についての迷いなどのご相談もあり、「自分の考えだけで対応していてはダメだ。」と思いました。子どもの学校便りの中に「キャリア教育」について書かれており、相談対応に関する解決の糸口になるかもしれないと思い、検索してみたところ、偶然「キャリアコンサルタント」という仕事を知り、学習を始めました。
キャリアコンサルタントの学習を進める中で、初めて触れた理論がスーパーの「ライフキャリアレインボー
(※1)」でした。私は、出産、育児期間中、仕事を辞め、子育てだけに集中していました。その当時は、何か社会から取り残されたような不安を感じ、「早く仕事に就かなくては」と焦っていました。「ライフキャリアレインボー」を学んだことによって、「私もあの時にキャリアコンサルタントがそばにいて、この理論でサポートしてくれたら良かったのに…」とつくづく思いました。
それ以来、私は「『知らなかったから選べなかった』『知っていたら選ばなかった』というような後悔をクライエントにさせない」と心に決め、今でもそれを心がけています。
2007年にキャリアコンサルタント資格を取得し、高校生支援を行うNPOから出前授業(高校へ行き、働くとは〜、キャリア目標、職業についてなど)登壇のお声掛けをいただきました。しかし授業の依頼をいただいたものの、実践に関してはまったく自信がありません。多感な高校生に対し、「きちんと授業が出来るか?」と一旦引き受けたものの不安で、「お断りしようか」と迷ったのですが、私はキャリアコンサルタントとしてのスタートは遅れていると思っていたので、ここで足踏みは出来ないと考え、自分自身を励ましながらキャリアコンサルタントとしての仕事をスタートしました。
(※1)ライフキャリアレインボー
ライフキャリアレインボー<生涯経歴の虹>は人のキャリアを「時間軸と役割」の2次元でとらえたもので、「生から死までの間における人のライフ・キャリアはどのように構成されているか」を視覚的に描写したものです。(図1)
『ある男のライフキャリアレインボー<生涯経歴の虹>』Nevill&super/1996(図1)
2.女性支援から始まった私のキャリア
初めての個別相談は「働けない」ではなく「働く自信がない」女性との面談でした。シェルターも備えた女性センターでのカウンセリングです。
・シングルで子育てしながら仕事を探す女性
・パートナーがメンタル不調に陥り、復職が難しい。だから私が働かなければ!と思い詰めている女性
・ブランクが長く(働けるだろうか?)という不安と生活苦を抱えた女性
など 、社会福祉支援の具体的な内容や、活用法などクライエントのリソースを見逃さず提供できるような知識が必要だと実感しました。
3.20年間で女性の働き方はどう変わったか
2000年からの20年を4つに分けて考えてみます。◆第1期(2000年代頃)
*再就職・生活再建を支える女性支援(子育て、配偶者の失業、ブランク、生活苦からの復職)
女性社員さんのご相談で忘れられないのが、「彼の転勤についていきたい」という内容です。工場や支店を全国展開している企業だったので、そのクライエントは自分で彼の転勤先にある支店を調べ、上司に異動願を出したところそれが叶わない、との訴えでした。上司は「そうやって彼の転勤ごとに自分の職場を変えることが自分自身のキャリアになるのか?」「そんなことでは根本解決にならない」と言われた、とのお話されていました
自分のキャリアを自分で作る(キャリアオーナーシップ)という意識が全くないケースでした。
◆第2期(2010年代)
*女性活躍推進と育休復職支援(制度整備、企業での復職ワークショップ)
企業支援を始めた時、職務能力についてのOJTの仕組みを、仕事と子育ての両立への悩み解決にも活かしたい、と考えました。「実際にどう働き続けているのか」を先輩ママさん社員に話していただき、後輩ママさん社員の悩み解決のヒントとしていただくような機会です。
◆第3期(2020年代前半)
*コロナ禍による働き方の変化(テレワーク、仕事と家庭の境界の変化)
仕事と子育て両立のためのOJTですが、ママさん社員から「育休中社員」へと対象を拡げ、先輩だけでなくそれぞれの経験からの気づきを共有する場へと変わっていきました。
育休を取った男性社員に、当初は声をかけて参加していただきました。「『育休を取りたい』と会社にどう切り出しますか?」や「妻が育休から復帰するので様子を知りたい」という参加理由だったことを今でも覚えています。
◆第4期(現在)
*女性支援から「誰もが働き続けられる職場づくり」へ(男性の育休、共育て、ダイバーシティ、人的資本経営など)
これまで、育児=女性の問題 でしたが、現在は、育児・介護=男女を問わず誰もが経験し得るキャリア課題、と変わってきました。2025年からの育児・介護休業法の改正でも、柔軟な働き方の拡充や介護離職防止のための企業の対応が強化されています。したがって企業側も、女性社員のための制度から社員一人ひとりがライフイベントを抱えても働き続けられる環境へ視点を広げる必要があり、その支援が出来るキャリアコンサルタントが求められています。
3-1.育児・介護休業法 主な改正の流れ
〜男女ともに、育児・介護と仕事を両立する時代へ〜「人的資本経営」によって、企業の女性支援・両立支援がどう変わってきたかを考える上で、特に重要なのは、企業の考え方が、「女性が働きやすいように支援する」から「人材を活かすために、働き方・キャリア・組織を変える」へ移っていることです。
育児・介護休業法の主な改正の流れを確認すると、「女性が仕事を続けるための制度」から「誰もがライフイベントと仕事を両立するための制度」へ変わってきていることがわかります。(表1)
育児・介護休業法 主な改正の流れ(表1)
3-2.女性の就業率の変化(M字カーブ)
ここで男女共同参画白書の女性の修了率の変化を参照してみます。就業率がピークの年齢、ボトムの底(出産、育児で仕事から離れる時期)も5年くらい後ろに移り、同時にボトムの底が浅くなりました。女性の就業率は上がり、さらに出産・育児で離職する女性が減ったことが分かります。
しかし、キャリアコンサルタントとして女性の面談を実施すると悩みがなくなったわけではないことがわかります。(図2)
女性の就業率の変化(M字カーブ)(図2)
3-3.女性の年齢階級別正規雇用比率(L字カーブ)
女性の年齢階級別正規雇用比率を参照すると、以下の4つが読み取れます。(図3)女性の年齢階級別正規雇用比率(L字カーブ)(図3)
1.出産・育児による離職や非正規雇用化:30代以降、育児期に正社員からパートタイマーや派遣社員に移行するケースが多い
2.家事・育児負担の偏り:女性に家事・育児の負担が集中し、フルタイム勤務の継続が困難
3.長時間労働文化や固定的な性別役割意識:企業の労働慣行や社会規範が女性のキャリア継続を阻害
4.制度上の制約:配偶者控除や社会保険の第3号被保険者制度など、収入を抑えて働くことが合理的とされる制度の影響
これらの問題点を解消するためには政策面、企業面でのアプローチが考えられますが、それに対する課題もあります。具体的には以下の通りです。
◆政策面:育児休業制度や保育所整備の充実、男女共に育児休業を取得しやすい制度の導入、賃金格差是正、DV防止法改正など
◆企業面:多様で柔軟な正社員制度の導入、男性の育児休業取得促進、時短勤務制度の普及、キャリア自己効力感の向上支援など
◆課題:大企業と中小企業の対応格差、社会規範の変化の遅れ、非正規公務員の処遇改善など
4.私の支援の変化
女性の就業率が上がったが、女性だけが頑張るのでは限界があります。女性の「働き続ける」を取り巻く環境も改善され、男性も育児へ参加するようになってきました。企業が働き方そのものを変える様子も受けながら、私の支援も「女性が働けるようにする」から、「誰もがライフイベントとキャリアを両立できるようにする」へと変わってきました。
子育てとの両立についてのご相談はご本人である女性クライエントばかりでなく、男性からも受けるようになり、そういう課題を抱える部下のマネジメントに対するご相談も受けるようになってきました。
4-1.支援するテーマの変化
私がキャリアコンサルタントとして活動する中で、支援対象が変わったのではなく、支援するテーマが変わったと捉えています。(表2)支援対象が変わったのではない。支援するテーマが変わった(表2)
特に注目したいのは、以下の5点です。
1.「女性の両立支援」から「男女の両立支援」へ
2025年の改正では、男性の育児参加を促す流れがさらに強まっています。両立支援のOJTには男性社員の参加も増え、子育てに今までと違った視点での工夫が見られるようにもなってきました。
2.「休むための制度」から「働き続けるための柔軟な働き方」へ
「育児のために仕事を休む」⇒「育児をしながら働き方を調整する」という方向に変わってきています。相談内容には、両立支援の制度を活用しながらも、自分ならではの仕事をしたい、というキャリア相談を受けています。
3.子育てと仕事の両立を、より現実の生活に合わせて考える
2025年4月から「子の看護休暇」が「子の看護等休暇」に変わりました。「制度があるから使う」のではなく、その人の生活に合わせて仕事をどう組み立てるかという視点が重要になります。
4.「介護離職」が女性だけの問題ではなくなる
育児も介護も、男女がキャリアの途中で経験する可能性がある、ということで、キャリアコンサルタントとしてクライエントの状況にあわせたきめ細かい配慮が必要となっています。
5.「制度を整える」から「キャリアを止めない」へ
以前は、女性が仕事を続けられるように制度を整えるという側面が強かったですが、現在は、育児・介護などのライフイベントがあっても、キャリアをどう継続・再設計するかという段階に入っています。
キャリアコンサルタントとして、目の前の問題解決のみに注目しがちなクライエントの視野を中長期的視点に立って考えられるような支援が求められています。
2025年改正では、企業側にも制度の周知や意向確認、柔軟な働き方の選択肢の整備などが求められています
「女性が働けるようにする」⇒「誰もが働き続けられるようにする」・「働く一歩を後押しする」
4-2.社会の変化と私の支援
私はキャリアコンサルタントとして、社会の変化に寄り添いながら支援を進化させてきました。1.「福利厚生」から「経営戦略」へ
これまでの企業支援では、「働き続けたい女性を支援する福利厚生」という側面から育休・短時間勤務などの導入や活用を勧めるような機会が多かったです。人的資本経営では、人材を企業価値を生み出す資本として捉え、人材戦略を経営戦略と結びつける考え方が強まっています。「優秀な人材がライフイベントでキャリアを失わないための経営戦略」としてとらえ、キャリアデザイン支援、制度活用支援などにも対応しています。
2.「女性活躍=女性を管理職にする」だけではなくなった
2026年4月から、従業員101人以上の企業では女性管理職比率の公表が義務化されました。女性活躍促進の目標が「管理職」だけではなく「自己実現」という高次を目指す女性も増えていると感じます。
3.「制度を用意する」から「利用できる職場をつくる」へ
制度があっても、上司や職場の雰囲気によって使いにくければ意味がありません。
そこで現在は、制度 → 利用 → キャリア継続 までを見ることが重要になっています。
例えば、育休制度があります⇒男性も取得できます⇒復職後もキャリア形成できます⇒管理職も目指せます、など。
4.「女性の両立」から「全社員のライフイベント」へ
育児・介護=男女を問わず誰もが経験し得るキャリア課題、という変化です。
したがって企業側も、女性社員のための制度から社員一人ひとりがライフイベントを抱えても働き続けられる環境へ視点を広げる必要があります。その支援が出来るキャリアコンサルタントを目指したいですね。
5.女性支援のその先へ
人的資本経営によって、企業の「女性の両立支援」から「男女の両立支援」へ「これからのキャリアコンサルタントに求められること」は以下の5点だと考えています。
�@ 「個人支援」から「個人×組織」へ
�A 「制度を知っている人」から「制度を活かせる人」へ
�B データを読む力
�C AIを「競争相手」ではなく「支援の道具」にする
�D これからのキャリアコンサルタントに必要な「5つの力」
・ 聴く力〜一人ひとりの思い・価値観を理解する
・ 問う力〜本人も気づいていない課題を問い直す
・ 読む力〜社会・労働市場・企業・データを読む
・ つなぐ力〜個人と企業、制度とキャリアをつなぐ
・ 活用する力〜AIなど新しい技術を使いこなし、人にしかできない支援に集中する
まとめ
私がキャリアコンサルタントとして女性の支援を始めた頃、目の前にいたのは、『もう一度働きたいけれど、自分に何ができるのかわからない』という女性たちでした。それから社会は大きく変わりました。女性の就業率は上がり、育児休業制度も充実し、今では男性も育児をしながら働く時代になりました。
そして今、AIによって仕事そのものも大きく変わろうとしています。
だからこそ、これからのキャリアコンサルタントには、変化する社会や技術を理解しながらも、最後は『人』を見る力が求められるのではないでしょうか。
AIを上手に使い、データを読み、企業の人材戦略を理解する。そして、人にしかできない対話に時間を使う。
人材を活かす企業を、人と組織の両面から支援する。
それが、これからのキャリアコンサルタントの新しい役割の一つだと私は考えています。
筆者

筆者:木村 美和子 講師
取得資格;
1級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/1級交流分析士
従来から取り組んできた社員のキャリア開発、組織開発の数々のプログラムを「チャレンジング・プログラム」として統合。企業組織の開発支援、従業員のキャリア開発支援、キャリアコンサルタントの育成、資格取得の支援にも取り組んでいる。
取得資格;
1級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/1級交流分析士
従来から取り組んできた社員のキャリア開発、組織開発の数々のプログラムを「チャレンジング・プログラム」として統合。企業組織の開発支援、従業員のキャリア開発支援、キャリアコンサルタントの育成、資格取得の支援にも取り組んでいる。
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