国家資格を取りたいクライエントをいかに支援するか?〜自己理解・仕事理解から考える資格を活かしたキャリア形成支援の実践〜
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国家資格取得を目指すクライエントをいかに支援するかについて悩まれている方へ、相談業務におけるヒントやキャリアコンサルタントとしてのあり方をお伝えします。
(想定読了時間:約16分)
<この記事をおすすめしたい方>
・国家資格を取りたいクライエントにより良い支援を提供したいキャリアコンサルタントの方
・自ら国家資格を取得して、新たなキャリア形成を実現したい方
・国家資格を取りたいクライエントにより良い支援を提供したいキャリアコンサルタントの方
・自ら国家資格を取得して、新たなキャリア形成を実現したい方
- 目次
1.国家資格の魅力とは?
「国家資格を取りたい。」キャリア相談において、この言葉を耳にする機会は決して少なくありません。
国家資格は一定の知識やスキルを国が定める基準で証明する制度であり、専門知識や能力を客観的に証明できる点が大きな魅力です。資格によっては独占業務や名称独占が認められており、行政書士や社会保険労務士、中小企業診断士、宅地建物取引士などはその代表例といえるでしょう。資格は企業からの評価にもつながり、業界や職種によっては就職や転職、昇進、独立開業などさまざまなキャリアの選択肢を広げる可能性があります。
もちろん国家資格の取得には多くの時間と労力が必要です。試験の難易度や合格率、受験資格、必要な学習時間、受講する講座の選択など、事前に確認すべきことも少なくありません。
しかし、キャリアコンサルタントとして着目したいのは「資格そのもの」ではなく、「資格を取得したいと思った背景」です。
例えば、
・専門性を身につけて市場価値を高めたい
・未経験の業界へ転職したい
・将来的には独立したい
・副業を始めたい
・家族を養うために収入を増やしたい
・定年後も長く働きたい
・自分に自信を持ちたい
同じ「資格を取りたい」という言葉でも、その背景にある価値観や動機は人によって大きく異なります。
例えば、不動産業界への転職を考える方であれば宅建士の取得が有力な選択肢になるかもしれません。経理や会計分野で活躍したいのであれば日商簿記検定や公認会計士を目指すケースもあるでしょう。企業の人事や労務分野で専門性を高めたいのであれば社会保険労務士、金融業界やライフプラン支援に関心がある方であればFPなどが候補になるかもしれません。
重要なのは、「人気がある資格」や「おすすめ資格」を機械的に紹介することではありません。
資格にはそれぞれ異なる業務内容や活用場面、求められる専門知識、実務経験との関係があります。また、同じ資格であっても、企業で活躍する人もいれば独立開業を目指す人もいます。資格がキャリアに与える意味はその人の働き方やキャリアプランによって大きく変わるのです。
私はこれまで、人材業界で国家資格者の就職・転職支援に携わる一方、自らも働きながら行政書士試験に挑戦し、5回目(!)の受験で合格し、実務未経験から独立開業しました。また、現在はキャリアコンサルタント養成講座の講師としても、多くの受講生や資格取得を目指す方々と接しています。そうした経験を通して強く感じるのは「資格だけで人生が変わることはない」ということです。むしろ、資格をどのように仕事へ活用し、これまで培ってきた経験や強みと掛け合わせるかが、キャリア形成において重要なポイントになります。
2.キャリア形成における資格取得とは?
「あなたは、クライエントから『おすすめの国家資格はありますか?』と聞かれたとき、どのように答えるでしょうか。」国家資格の取得はキャリア形成において大きな転機となることがあります。転職や昇進、独立開業、スキルアップなど、資格取得によって新たな選択肢が広がるケースは少なくありません。一方で、資格取得そのものが目的となってしまい、合格後に「この資格をどう活かせばよいかわからない」「思っていた仕事と違った」と悩む方も少なくありません。
だからこそ、キャリアコンサルタントは資格取得という出来事だけを見るのではなく、その人のキャリア全体の文脈の中で資格を位置付けることが重要です。
資格取得は人生のゴールではなく、自分らしいキャリアを実現するための一つのプロセスです。キャリア形成支援では、「資格を取得すること」だけではなく、「資格を取得した後にどのようなキャリアを築いていくのか」という視点まで含めて支援することが求められます。
2-1.自己理解 × 仕事理解の中で資格をどう捉えるか?
キャリアコンサルティングでは「自己理解」と「仕事理解」はキャリア形成の土台となります。自己理解とは、自分自身について理解を深めることです。
例えば、
・興味・関心
・価値観
・強み
・弱み
・得意なこと
・大切にしたい働き方
・将来実現したい人生
などを整理していきます。
一方、仕事理解とは、
・業界
・職種
・業務内容
・労働市場
・求められるスキル
・必要な知識
・必要な資格
・入職方法
・キャリアパス
など、社会や仕事について理解を深めることを意味します。
資格はこの「自己理解」と「仕事理解」をつなぐ接点に位置付けることができます。
例えば、行政書士という国家資格に興味を持ったとしても「法律が好きだから」というだけでは十分ではありません。
行政書士としてどのような業務を行うのか、どのような専門知識が必要なのか、独占業務とは何か、実務経験はどのように積むのか、独立開業と企業勤務ではどのような違いがあるのかなど、仕事理解を深める必要があります。
反対に仕事内容だけを理解していても、自分自身の価値観やライフスタイルと合わなければ長期的に活躍することは難しいでしょう。例えば、「人とじっくり関わることに喜びを感じる」という人であればキャリアコンサルタントや社会保険労務士が適している場合もあります。
一方で「専門知識を武器に一人で仕事を組み立てたい」という方であれば行政書士や中小企業診断士などが魅力的に映るかもしれません。また「IT分野で将来性のある仕事に挑戦したい」という方であれば情報技術者試験やAWS認定資格などを通じて専門性を高める選択肢も考えられます。
このように、同じ資格であっても、その人の価値観やキャリアプランによって意味は大きく変わります。キャリアコンサルタントは「資格を紹介する人」ではありません。クライエントが自己理解を深め、仕事理解を広げ、その上で納得して資格取得という意思決定ができるよう支援する専門家なのです。
2-2.資格取得は「手段」であって「目的」ではない
相談場面で「資格を取りたいです。」という言葉を聞いたとき、キャリアコンサルタントはどのように受け止めればよいのでしょうか。私はまず「なぜ、その資格を取りたいのですか。」と問い掛けます。
一見すると当たり前の質問ですが、この問いによって相談の質は大きく変わります。
「資格を取りたい」という言葉の裏側には、さまざまな価値観や欲求が隠れているからです。
例えば、
・転職を成功させたい
・今より専門性を高めたい
・将来的に独立したい
・副業を始めたい
・年収を上げたい
・社会的信用を得たい
・家族を安心させたい
・自分に自信を持ちたい
・学び続ける人生を送りたい
・定年後も長く働きたい
これらはすべて「資格を取りたい」という言葉の背景にある本当のニーズです。
キャリアコンサルティングでは表面的な相談内容(CL視点)だけではなく、その背景にある本質的な課題(CC視点)を見立てることが重要になります。
例えば「転職したいので資格を取得します。」という相談であれば、転職できない理由は本当に資格不足なのでしょうか。
もしかすると、
・自己PRが苦手
・実務経験の棚卸しができていない
・企業研究が不足している
・面接への苦手意識がある
・キャリアの方向性が定まっていない
ことが課題かもしれません。
資格取得は有効な解決策になることもありますが、唯一の答えとは限りません。資格を取得することが本当に目的達成につながるのか、それとも別の方法があるのか。その可能性を一緒に考えることも、キャリアコンサルタントの重要な役割です。
2-3.資格の理解
一方で、キャリアコンサルタントは資格の専門家である必要はありません。しかし、クライエントが意思決定を支援する立場として、主要な国家資格や資格制度について一定の理解を持つことは大切です。
例えば、
行政書士
社会保険労務士
宅地建物取引士
公認会計士
税理士
中小企業診断士
司法書士
不動産鑑定士
キャリアコンサルタント
ファイナンシャル・プランナー(FP)
看護師
情報技術者試験
日商簿記検定
などは、相談場面でも話題になることが多い資格です。
もちろんすべての資格について詳細な知識を持つ必要はありません。しかし、少なくとも次のような観点は押さえておきたいところです。
・国家資格か民間資格か
・業務独占資格・名称独占資格か
・どのような仕事につながるのか
・受験資格の有無
・試験制度や受験科目
・学習期間や難易度
・合格率
・実務経験の要否
・就職・転職市場での評価
・独立開業の可能性
さらに、資格情報は制度改正や試験制度の変更などもあるため、常に最新情報を確認する姿勢も重要です。
一方で、キャリアコンサルタントが陥りやすいのは、「資格の説明」で終わってしまうことです。
資格制度を紹介するだけであれば、インターネットや資格スクールのホームページでも調べることができます。
キャリアコンサルタントが提供する価値は、その資格が「その人の人生やキャリアにとってどのような意味を持つのか」を一緒に考え、主体的な意思決定を支援することにあります。
資格を知ることは重要です。しかし、それ以上に重要なのは「その資格を取得した先に、どのようなキャリアを築きたいのか」をクライエントとともに描くことです。
3.ライフステージ・ライフロールから考える資格取得と環境・資産・動機
「今から国家資格に挑戦したいのですが、遅くないでしょうか。」キャリア相談の現場ではこのような質問を受けることがあります。40代や50代の方であれば「この年齢から受験しても意味があるでしょうか」と不安を口にされることも少なくありません。
しかし、キャリアコンサルタントの視点から見ると、資格取得に「最適な年齢」があるわけではありません。
重要なのは年齢ではなく、その人が置かれているライフステージやライフロール、そして現在の環境を総合的に理解することです。
●ライフステージによって資格取得の意味は変わる
同じ資格であっても、20代と50代では取得する目的が大きく異なります。
例えば20代であれば、
・社会人としての基礎的な専門性を身につけたい
・将来のキャリアの選択肢を広げたい
・転職市場で評価されるスキルを証明したい
といった動機が多く見られます。
一方、30代から40代になると、
・管理職への昇進を見据えたい
・専門職へのキャリアチェンジを実現したい
・副業や複業を始めたい
・独立開業という将来の可能性を広げたい
など、仕事上の役割や責任の変化に伴って資格取得の目的も変化していきます。
さらに50代以降になると、
・定年後も長く働きたい
・セカンドキャリアを準備したい
・長年の経験を専門性として形にしたい
・社会貢献につながる仕事をしたい
というように「人生100年時代」を見据えた資格取得へと変わっていく傾向があります。
つまり、資格取得は年齢によって価値が変わるのではなく、その時々のキャリア課題に応じて意味が変化するものなのです。
キャリアコンサルタントには、目の前のクライエントがどのようなライフステージにあり、何を実現したいと考えているのかを丁寧に理解する姿勢が求められます。
●ライフロールが資格取得に与える影響
人生には「労働者」「親」「配偶者」「学ぶ者」「子ども」「市民」など、一人が同時に担うさまざまな役割(ライフロール)があります。資格取得を考える際には「受験生」という役割だけを見るのではなく、他の役割との関係も考える必要があります。
例えば、小さな子どもを育てながら国家試験に挑戦する方であれば、勉強時間の確保が大きな課題になります。
また、親の介護を担っている方であれば、学習時間だけでなく、精神的な負担や突発的な出来事への対応も考慮しなければなりません。
反対に、子育てが一段落し、自分自身に使える時間が増えたタイミングで資格取得に挑戦する方もいます。
キャリアコンサルタントは、「何時間勉強できますか」と質問するだけでは十分ではありません。
現在どのような役割を担っているのか、その役割は今後どのように変化していくのかを一緒に整理することが重要です。
資格取得は人生の一部であり、人生そのものではありません。だからこそ資格取得が他のライフロールを犠牲にし過ぎてしまわないかという視点も欠かせません。
●「環境」と「資産」を整理する
資格取得の可能性を考える上では、「環境」と「資産」を整理することも重要です。
ここでいう資産とは、お金だけを指すものではありません。
例えば、
・これまで積み重ねてきた実務経験
・業界で培った専門知識
・人脈やネットワーク
・健康や体力
・家族の理解
・学習習慣
・可処分時間
・経済的な余裕
などもキャリア形成における重要な資産です。
資格取得はゼロからスタートするものではありません。これまでの経験や強みを土台として、新たな専門性を積み重ねていくプロセスです。例えば、営業経験が長い方であれば、宅建士やFPの資格を取得することで、営業力と専門知識を組み合わせた独自の価値を発揮できる可能性があります。また、人事経験が豊富な方が社会保険労務士やキャリアコンサルタントを取得すれば、実務経験を活かした支援ができるでしょう。
このように「資格」と「これまでの経験」を掛け合わせることは新たな専門性にもつながります。
キャリアコンサルタントはクライエントがすでに持っている資産に目を向け、その活用の可能性を共に探ることが重要です。
●「動機」の質が継続を左右する
資格取得には多くの時間と努力が必要です。だからこそ「なぜ挑戦するのか」という動機が非常に重要になります。
例えば「会社で評価されたい」という外的な動機も決して悪いものではありません。
しかし、それだけでは学習が長期化したときにモチベーションを維持することが難しくなる場合があります。
一方で、「この仕事を通じて人の役に立ちたい」「専門性を身に付けて、自分らしい働き方を実現したい」「これまでの経験を社会に還元したい」というような内面的な価値観と結び付いた動機は、困難な場面でも学習を続ける力になってくれるでしょう。
もちろん、動機は一つである必要はありません。転職したい、収入を増やしたい、独立したい、家族を安心させたい、社会貢献したい、そうした複数の思いが重なり合って一人のキャリアが形づくられていきます。
キャリアコンサルタントは、「正しい動機」を探すのではなく、その人自身が納得できる動機を言語化できるよう支援することが大切です。
●キャリアコンサルタントに求められる視点
資格取得を支援する場面では、試験制度や難易度、合格率、受験資格などの情報提供ももちろん必要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。キャリアコンサルタントには、
・今、この人はどのようなライフステージにいるのか。
・どのようなライフロールを担っているのか。
・どのような環境や資産を持っているのか。
・何を大切にし、どのような人生を実現したいのか。
という視点からその人のキャリア全体を捉えることが求められます。
資格取得は人生を豊かにするための一つの選択肢です。だからこそ資格だけを見るのではなく、「クライエント」と「クライエントの人生」に目を向けることがキャリア形成支援の本質ではないでしょうか。
4.資格取得とキャリア形成支援の4ステップ
「おすすめの国家資格はありますか。」キャリアコンサルタントであれば、一度は受けたことがある質問ではないでしょうか。
この問いに対して「転職なら○○がおすすめです」「将来性ならIT資格が人気です」とすぐに資格を紹介することは簡単です。しかし、それでは資格の情報提供にとどまりキャリアコンサルティングとして十分とはいえません。
資格取得は、クライエントの人生やキャリアに関わる重要な意思決定です。だからこそキャリアコンサルタントにはその人が納得して意思決定できるよう支援するプロセスが求められます。
ここでは、資格取得を希望するクライエントへの支援を4つのステップで整理してみます。
<STEP1>動機・目的を明確にする
最初に確認したいのは「なぜ資格を取得したいのか」という動機です。
資格相談では、「行政書士になりたい」「宅建士を取りたい」「キャリアコンサルタントを目指したい」と、資格名から相談が始まることが少なくありません。しかし、キャリアコンサルタントが本当に知りたいのは資格名ではなく、その背景にある思いです。
例えば、
・なぜ今、その資格なのか。
・どのような仕事に就きたいのか。
・どんな働き方を実現したいのか。
・その資格によって何を得たいのか。
こうした問いを通じて、クライエント自身も気づいていなかった価値観や願いが明らかになることがあります。
実際には、「資格を取りたい」という相談が、「今の仕事への不満」や「将来への漠然とした不安」、「自分に自信を持ちたい」という思いにつながっているケースも少なくありません。
だからこそ、資格取得を支援する前に「資格を取得する目的」を共に言語化することが重要です。
<STEP2>望む働き方を描く
次に考えたいのは、「資格を取得した後、どのように働きたいのか」という視点です。
資格は取得しただけでは価値を生みません。その資格をどのように活用するかによって、キャリアの可能性は大きく変わります。例えば、行政書士資格一つを取っても、
・行政書士事務所へ就職する
・一般企業で法務や許認可業務に携わる
・独立開業する
・副業として活用する
・現在の仕事に専門性を加える
など、多様な選択肢があります。
キャリアコンサルタント資格についても同様です。
企業内で人材育成やキャリア支援に携わるのか、大学や教育機関で学生支援を行うのか、地域の就労支援機関で相談業務に従事するのか、それとも独立して活動するのかによって、必要となる経験や準備は異なります。
そのため、資格取得後の「仕事」を具体的にイメージできるよう支援することが大切です。
「どんな一日を送りたいですか。」
「誰の役に立ちたいですか。」
「10年後、どんな働き方をしていたら満足していますか。」
このような問いは、資格取得後のキャリアプランを描くきっかけになります。
<STEP3>現実を一緒に整理する
資格取得を希望するクライエントを支援する際には、理想だけでなく現実も丁寧に確認する必要があります。
例えば、
・学習時間は確保できるか。
・受験費用や講座費用を準備できるか。
・家族の理解は得られているか。
・健康状態や体力に問題はないか。
・実務経験が求められる資格ではないか。
・受験資格を満たしているか。
こうした現実的な条件を整理することは、「諦めさせるため」ではありません。むしろ、資格取得を継続できる環境を一緒につくるためです。
例えば、小さなお子さんがいる方であれば、毎日3時間勉強する計画は現実的ではないかもしれません。
一方で、「平日は30分、休日は2時間」という計画であれば継続できる可能性があります。
また、企業で働きながら資格取得を目指す方であれば、教育訓練給付制度など活用できる支援制度を調べることも有効でしょう。キャリアコンサルタントは、「頑張ればできます」と励ますだけではなく、現実的な実行可能性を一緒に検討する伴走者であることが求められます。
<STEP4>行動を支援する
最後は、資格取得に向けた具体的な行動支援です。
資格試験は、数か月から数年にわたる学習となる場合もあります。途中でモチベーションが下がったり、不合格を経験したりすることもあるでしょう。そのようなとき、キャリアコンサルタントにできることは少なくありません。
例えば、
・現実的な学習計画を一緒に考える
・学習の進捗を振り返る
・モチベーションの低下要因を整理する
・小さな成功体験を確認する
・必要に応じて目標を修正する
といった支援が考えられます。
特に重要なのは、「合格だけ」を評価しないことです。毎日30分学習を続けたこと、仕事と家庭を両立しながら勉強したこと、不合格でも再挑戦を決意したこと、これらもキャリア形成における大切な成長です。
資格取得は知識を身に付けるだけではありません。
計画を立てて行動する力、困難を乗り越える力、自分自身と向き合う力など、多くの力を育むプロセスでもあります。
キャリアコンサルタントは、その成長を共に確認し、自己効力感を高めながら伴走する存在でありたいものです。
●「教える人」ではなく「伴走する人」へ
資格取得支援において、キャリアコンサルタントは資格スクールの講師とは異なる役割を担っています。
資格スクールの講師が試験の合格を支援する専門家だとすれば、キャリアコンサルタントはその資格を通じてどのような人生や働き方を実現したいのかを共に考え、意思決定から実践までを支援する専門家です。もちろん、資格制度や試験概要、業界動向などの情報提供も重要な役割です。しかし、それ以上に大切なのは、クライエントが自らの価値観や強みを踏まえ、納得して一歩を踏み出せるよう支援することです。
資格取得は、一人で取り組む孤独な挑戦になりがちです。その挑戦に寄り添い、迷いや不安を受け止めながら伴走するキャリアコンサルタントの存在は、資格取得そのものだけでなくその後のキャリア形成にも大きな意味を持つのではないでしょうか。
5.資格取得とキャリア形成支援の4ステップ
国家資格や専門資格を目指す多くの方は、「合格すること」を一つの大きな目標に掲げます。もちろん、資格試験に合格することは簡単なことではありません。仕事や家庭と両立しながら何百時間もの学習を積み重ね、試験当日を迎え、合格という結果を得るまでには想像以上の努力が必要です。
しかし、キャリア形成という視点で考えると本当のスタートは「合格したその日」から始まります。
資格取得はゴールではなく、新たなキャリアのスタートラインなのです。
●合格後に訪れる「次の悩み」
資格取得を目指しているときは「合格」という明確な目標があります。ところが、合格後には次のような相談を受けることがあります。
「資格は取ったけれど、どう活かせばよいかわからない。」
「転職したいと思っていたが、自信が持てない。」
「独立したい気持ちはあるが、一歩踏み出せない。」
「燃え尽きてしまい、次の目標が見つからない。」
実は、このような悩みは決して珍しいものではありません。資格取得という大きな目標を達成したからこそ、新たな迷いや不安が生まれるのです。したがってキャリアコンサルタントの役割は資格取得までで終わるものではありません。資格取得後にどのようなキャリアを歩むのか、そのプロセスに寄り添うことも重要な支援になります。
●「資格を活かす」とはどういうことか
「資格を活かしたい」という言葉も相談場面でよく耳にします。しかし、「活かす」という言葉の意味は人それぞれ異なります。
例えば、
・転職して新しい職種で働くこと
・現在の職場で専門性を発揮すること
・社内で新しい役割を担うこと
・副業や複業を始めること
・将来的な独立開業につなげること
・地域活動やボランティアで知識を役立てること
など、資格の活用方法は一つではありません。
特に近年は一つの会社で働き続けるだけではなく、副業や兼業、地域活動など、多様な働き方を選択する人が増えています。
資格もまた、「資格を使う仕事」に就くためだけのものではなく、自分らしいキャリアを実現するための資源(キャリア資本)の一つとして捉えることができます。
例えば、営業経験に行政書士資格を掛け合わせることで、顧客との信頼関係を強みにした専門サービスを提供できるかもしれません。人事経験とキャリアコンサルタント資格を組み合わせれば、採用や人材育成だけでなく、従業員一人ひとりのキャリア支援という新たな価値を生み出すこともできます。
資格単体ではなく、「これまで培ってきた経験」「強み」「価値観」と掛け合わせることで、その人ならではの専門性が生まれるのです。
●資格取得は「学び続ける力」の証でもある
資格取得の価値は、専門知識を身に付けることだけではありません。学習を継続し、目標を設定し、計画的に努力を重ねた経験そのものが、大きな財産になります。企業が資格取得者を評価する理由も単に知識を持っているからではありません。
新しいことを学び続ける姿勢や、自ら目標を設定して行動できる力は、変化の激しい時代において重要な能力だからです。
また、資格取得の過程で得た学習習慣や自己管理能力は、その後のキャリア形成にも生かされます。資格は一度取得して終わりではありません。社会や技術、法制度、ビジネス環境は常に変化しています。その変化に対応するためには、資格取得後も学び続け、自らの専門性を更新し続ける姿勢が求められます。
そして、キャリアコンサルタント自身もまた、継続的な自己研鑽が求められる専門職です。だからこそクライエントにも「資格を取ったら終わり」ではなく、「資格を通じて学び続けるキャリア」を提案したいものです。
●キャリアプランは何度でも描き直してよい
資格取得後、当初思い描いていたキャリアプランどおりに進むとは限りません。転職先が見つからないこともあります。独立開業が思うように軌道に乗らないこともあります。家庭環境が変わり、一度キャリアを見直すこともあるでしょう。
しかし、それは決して失敗ではありません。キャリアとは一度決めたら変えられない一本道ではなく、その時々の経験や価値観、環境に応じて柔軟に描き直していくものです。
資格取得という経験も、その後の人生で新たな意味を持つことがあります。今すぐ活用できなくても、数年後に転職や独立、あるいは地域活動や後進育成の場面で生きてくるかもしれません。
キャリアコンサルタントは「資格をどう活かすか」という短期的な視点だけではなく、「この資格を人生の中でどのような意味ある資産に育てていくか」という長期的な視点を持って支援することが重要です。
●キャリアコンサルタントにできること
資格取得を目指すクライエントに対して、キャリアコンサルタントが提供できる価値は、「合格する方法」を教えることではありません。その人が、資格取得という挑戦を通じて自分自身を深く理解し、自分らしい働き方や生き方を主体的に選択できるよう支援することです。そして、資格取得後も新たな役割や環境に適応しながら、自らの可能性を広げ続けられるよう伴走することです。
資格取得は、人生を豊かにするための一つのきっかけです。
そのきっかけを「合格」だけで終わらせるのではなく、その人らしいキャリアを築くための第一歩へとつなげていくことこそ、キャリアコンサルティングの本質ではないでしょうか。
まとめ
私は会社員時代に「専門職として人や企業の挑戦を支援したい」「組織に頼らず社会に貢献できる仕事がしたい」という思いから、働きながら行政書士試験に挑戦し、5回目の受験で合格しました。合格は一つの節目でしたが、本当の挑戦は独立開業してから始まりました。その経験があったからこそ、現在はキャリアコンサルタントとして資格取得だけではなく、その後のキャリア形成まで見据えた支援の大切さを実感しています。それは「人生を変えるのは資格そのものではない」ということです。
もちろん、国家資格は専門知識やスキルを証明し、転職や就職、昇進、独立開業など、新たな可能性を広げてくれます。
しかし、本当に人生を変えるのはその資格をどのように自分自身の経験や価値観と結び付け、誰のために、どのように活かしていくかということです。
資格取得は人生を変える魔法ではありません。
しかし、資格取得をきっかけに自分自身と向き合い、新しい可能性へ挑戦し、これまで気づかなかった能力や価値観を発見することはできます。その意味で資格取得とは「新しい仕事への挑戦」であると同時に、「新しい自分との出会い」でもあるのです。
変化が激しく、将来の予測が難しい時代だからこそ、資格取得を単なる知識やスキルの習得として捉えるのではなく、自分らしい働き方や生き方を実現するためのキャリア形成の一つのプロセスとして支援していくことが、これからのキャリアコンサルタントにはますます求められていくのではないでしょうか。
筆者

筆者:石井 慎太郎 講師
取得資格;
2級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント/行政書士
/ビジネス実務法務検定2級/ビジネス選択理論能力検定2級/メンタルヘルス・マネジメント検定試験U種
キャリアコンサルタントと行政書士の2つの顔を持つ。長年の人材サービス業と営業経験にもとづくコミュニケーション力とバランス感覚をキャリア支援にも活かしつつ、働く人1人ひとりの可能性の探求に寄り添うことを信条としている。
取得資格;
2級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント/行政書士
/ビジネス実務法務検定2級/ビジネス選択理論能力検定2級/メンタルヘルス・マネジメント検定試験U種
キャリアコンサルタントと行政書士の2つの顔を持つ。長年の人材サービス業と営業経験にもとづくコミュニケーション力とバランス感覚をキャリア支援にも活かしつつ、働く人1人ひとりの可能性の探求に寄り添うことを信条としている。
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