国家資格取得後のキャリアデザイン〜キャリアコンサルタント自身の自己理解・仕事理解〜
『合格を手にした後、胸を膨らませて「さあ!頑張るぞ!」と思ったのは良いものの…なかなか活かせる仕事が無い』
そういった方に、私自身が国家資格でどうやって仕事を得ることができたのか、今後どのような考えでキャリアコンサルタントとしての仕事に向き合うことが大切なのかをお伝えいたします。
- 目次
1.資格取得後の仕事と活動
キャリアコンサルタントとしてどのような第一歩を踏み出したのか。歩み始めの頃の私は、さまざまな現場に身を置き、人と向き合う経験を重ねていきました。
・有期実習型訓練における訓練前キャリアコンサルティング
・職業訓練校での「ジョブ・カード」作成支援
・高校生を対象とした面接指導ボランティア
・専門学校における「キャリアデザイン」の講師登壇
・製造系派遣会社での登録面接業務
・LEC(東京リーガルマインド)でのキャリアコンサルタント養成講座サブ講師
これらは一見すると多岐にわたりますが、一つひとつの現場で丁寧に経験を積むことが、今の私の礎となっています。
1-1.仕事を請け負ったきっかけ
私の仕事や活動の機会は、そのほとんどが「人」とのつながりからもたらされたものです。 では、なぜ周囲の方々は私に仕事を運んでくださったのでしょうか。その基盤にあるのは、「信頼」であると考えます。
1-2.キャリアコンサルタント自身の自己理解
キャリアコンサルタントとして歩み出そうとする際、まずは自分自身に次の問いを投げかけてみてください。
・なぜ、キャリアコンサルタントという道を選んだのか。(★1)
・どの分野で、どのような支援を展開したいのか。(★2)
・自身の「キャリア・アンカー」や「中長期的なビジョン」はどこにあるのか。(★3)
これらの問いに対する答えを「志」として言語化し、周囲へ発信し続けることが重要です。私自身も、「キャリア教育の必要性」や「若年層への支援に携わりたい」という想いを、折に触れて周囲に伝えてきました。
転機となった専門学校での講師案件を繋いでくださったのは、その想いを心に留めてくださっていた恩師でした。登壇経験が皆無だった私を推薦してくださった理由は、「あなたなら任せて大丈夫」という一言でした。
「この人に任せたい」と思われる信頼感は、単なるスキルの有無だけでなく、プロとしての姿勢や、人生における「生き様」そのものから築かれると考えます。すべての事に誠実に向き合い、信頼関係を積み上げていくことで、自ずと周囲の景色は変わり始めます。
また、初期段階においては、報酬以上に「経験値」を優先する姿勢も求められるでしょう。ボランティア活動などにも積極的に参加し、現場での実践を積み重ねることが、経験値となり将来の大きな資産となります。あわせて、常に自己研鑽を怠らないことも不可欠です。国家資格を取得されたばかりの方であれば、ぜひ上位資格である「キャリアコンサルティング技能士」への挑戦をお勧めします。試験対策としてのロールプレイだけでなく、その過程で得られる膨大な知識と深い洞察は、実務家としての厚みを確実に増してくれるはずです。
2.パラレルで働くことの意義や得られた能力
ここで、現代のキャリア形成において重要なキーワードとなっている「パラレルキャリア」についても触れておきましょう。
2-1.パラレルキャリアの意義と現状
パラレルキャリア(Parallel Career)とは、経営学者のピーター・ドラッカーが著書『明日を支配するもの』の中で提唱した概念です。「本業を持ちながら、第2の活動(仕事や非営利活動)を行うこと」を指し、昨今ではセカンドキャリアを模索する方々を中心に、その注目度はますます高まっています。
企業側の姿勢も大きく変化しています。パーソル研究所が2025年8月に公表した調査結果によると、副業を容認する企業の割合(条件付き容認を含む)は64.3%に達しました。かつては制限されることが多かった副業・兼業ですが、現在は企業側も積極的に推進するフェーズに入ったと言えるでしょう。
2-2.パラレルで働くことの相乗効果
キャリアコンサルタントが組織に属しながら活動を続けることには、大きな相乗効果があります。
(1)実践的な視点の獲得
企業内で働くことで、働く人々が直面するリアルな悩みや成功体験に直接触れることができます。この生きた経験があるからこそ、相談者に対してより実感を伴った、血の通った支援が可能になるのです。
(2)社会人基礎力の証明
キャリアコンサルティングの根幹である「傾聴力」や「問題把握力」は、高度な社会人基礎力そのものです。これらのスキルを保持して業務にあたることは、組織において「すでに高い専門性を備えた人材」であるという信頼の証となります。
(3)リスクヘッジとしての側面
複数の収入源を持つことや社会保険の維持など、経済的な安定性を確保しながら挑戦を続けられる点は、精神的なゆとりにも繋がります。
一方で、パラレルキャリアを実践する上で課題となるのが「スケジュール管理」です。
複数の活動を組み合わせる際、時間的な制約から、せっかく舞い込んだ魅力的な案件を断らざるを得ない場面も出てくるでしょう。自身のキャパシティを冷静に見極め、優先順位を明確にする調整力が求められます。
以上の視点が、これから副業や兼業を検討されている皆様にとって、一助となれば幸いです。
3.今後キャリアコンサルタントとして仕事をする方に向けて
1-1で示した★の問いに対する答え、「志」を言語化し、発信することが重要であるとお伝えしました。キャリアコンサルタント自身が「自己理解」を深めることが自身のキャリア形成にも大切なのです。自分自身の志や強み、そして歩むべき方向性を明確にすることが、すべての活動の起点となるからです。
では、もう一方の柱である「仕事理解」については、いかがでしょうか。
キャリアコンサルティングの理論において「自己理解」と「仕事理解」は車の両輪と言われます。しかし、支援者自身が「世の中にどのような仕事があり、今社会がどの方向に向かっているのか」という実情を、どれほど深く、タイムリーに捉えられているでしょうか。
3-1.なぜキャリアコンサルタント自身の仕事理解が重要なのか
キャリアを構築するプロセスにおいて、「仕事理解」が極めて重要な要素であることは、皆様も深く認識されていることでしょう。相談者の方のお話を聞く中で、「仕事への理解が不足しているのだな」と分析し、支援を進めている方も多いのではないでしょうか。しかし、ここで一度、自身に問いかけてみてほしいのです。
「私たちキャリアコンサルタントは、刻々と変化する社会的背景を、タイムリーに捉えられているでしょうか」
仕事理解には、職種や産業、個別の事業所に対する理解が含まれます。しかし、その土台となる「社会の潮流」への理解が、もし10年前の知識で止まっていたとしたらどうでしょうか。
現代は「VUCA(ブーカ)」と呼ばれる時代です。
・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
2020年のパンデミック以降、社会の変化はさらに加速しました。働き方や価値観、求められるスキルが劇的に塗り替えられている中で、支援者側の知識が更新されていなければ、その助言は時代にそぐわない、誤った方向へ導くものになりかねません。だからこそ、キャリアコンサルタント自身が、常に「今」という時代の社会的背景を正しく、かつ迅速に捉え続けること。それこそが、現代における「仕事理解」の真髄であると考えます。
3-2.キャリアコンサルタントが深めるべき仕事理解の範囲
これまでは「今の社会をリアルに捉えること」の大切さをお伝えしてきましたが、ここからはさらにもう一歩踏み込み、「未来に目を向けること」の重要性についてお伝えしたいと思います。
世の中の変化が起きた後に、それに合わせて自分を変えていく「順応」も、もちろん大切です。しかし、それ以上に、未来がどう変化するかをあらかじめ見据えて行動することが、これからの時代には欠かせません。
皆さんも、相談者の方に対して「中長期的なキャリアデザインを描き、そこに向けて今できることから始めていきましょう」という支援をされているのではないでしょうか。実は、私たちが取り組むべき「仕事理解」についても、これと全く同じことが言えるのです。これからの日本、そして世界がどう変わっていくのか。その変化の中で、自分はどう社会に関わり、何ができるのか。そこに思考を巡らせる必要があります。もちろん、未来に確定した「正解」はありません。まさに「神のみぞ知る」領域です。しかし、未来を想像し、考え続けるプロセスそのものに大きな意味があります。その過程で得られる新しい知識や情報は、単なる情報の蓄積に留まらず、皆さん自身の専門性を高める「自己研鑽」へと直結し、クライアントに対しての提案や情報提供の質も向上していくからです。
3-3.仕事理解を深める その1『リカレント教育』
◆リカレント教育・リスキリングの本質
まずは、現代のキーワードである「リカレント教育」について考えてみましょう。
リカレント(recurrent)とは、「繰り返す」「循環する」を意味します。学校教育を終えて社会に出た後も、必要なタイミングで教育機関に戻り、仕事と教育を循環させる仕組みを指します。日本では、仕事を続けながら専門的な知識やスキルを習得するスタイルも含まれ、「社会人の学び直し」として広く浸透しています。
では、なぜ今、これほどまでに学び直しが強調されているのでしょうか。その背景には、私たちが直面している2つの大きなうねりがあります。
Society 5.0の到来:デジタル技術と人間が調和し、ウェルビーイング(Well-being)(※)を実現する社会への移行。
(※)ウェルビーイング(Well-being)とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。(厚生労働省「雇用政策研究会報告書概要」)
人生100年時代:従来の「教育・仕事・引退」という3ステージモデルが崩れ、生涯を通じて学びと仕事を織り交ぜる「マルチステージ」への転換。
こうした時代において、自身の「エンプロイアビリティ(雇用される能力)」を維持・向上させるためには、頻繁なスキルのアップデートが不可欠です。つまり、私たちは組織に依存するのではなく、自らの足でキャリアを切り拓く「キャリア自律」を強く求められているのです。
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出典:政府広報オンライン,"「学び」に遅すぎはない! 社会人の学び直し「リカレント教育」』"
◆2040年を見据えた労働構造の変容
経済産業省が示した「2040年の就業構造推計」という具体的な指標は、私たちに一つの重要な事実を突きつけています。推計によれば、少子高齢化に伴い、2021年に約6,983万人であった労働人口は、2040年には約6,303万人にまで減少すると予測されています。この大幅な労働供給の不足を補う鍵となるのが、「AI・ロボットの利活用促進」と、リスキリング等による「労働の質の向上」です。これらによって、約189万人分の労働力をカバーするというシナリオが描かれています。出典:経済産業省,"2040年の産業構造・就業構造推計"
この客観的なデータからも、リスキリングが単なる一時的な流行ではなく、国家レベルの喫緊の課題であることが理解できるでしょう。企業へ施策を提案する際も、クライエントに動機付けを行う際も、こうした「なぜ今必要なのか」という具体的根拠を、我々キャリアコンサルタント自身が正しく把握しておく必要があります。
しかし、データを知ることはあくまで出発点に過ぎません。真に重要なのは、この数値を踏まえた上で、「では、自分はどう未来に関わっていくのか」という想像力を働かせることです。
「次世代の社会において、どのようなスキルが求められるようになるのか」
「現在の自分の専門性を、不足が予想される他分野と掛け合わせることはできないか」――。
このように、統計的な予測を自分事として捉え、思考を今の枠組みの外へと広げてみてください。未来の社会にどう関わっていくかを主体的に構想すること。その知的な探究心こそが、結果としてキャリアコンサルタントとしての職域を飛躍的に拡大させ、支援の質をより深みのあるものへと変えていくのです。
3-4.仕事理解を深める その2『エンゲージメント』
「仕事理解」を深める上で、近年の組織運営において欠かせない概念が「エンゲージメント」です。これは単なる従業員の満足度を超え、組織と個人が対等に、かつ情熱を持って関わり合う状態を指します。
厚生労働省の定義によれば、エンゲージメントには大きく二つの側面があります。
・ワーク・エンゲージメント: 仕事に誇りを感じ、熱心に取り組み、活力に満ち溢れている状態。
・従業員エンゲージメント: 所属する組織への貢献意欲や、共に成長しようとする絆。
この概念は、もはや一企業の努力目標に留まりません。2023年4月に開催された「G7倉敷労働雇用大臣会合」においても、「ワーク・エンゲージメント」と「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の推進が主要議題の一つとなりました。これらは経済成長と社会の持続可能性を担保するための、国際的な共通課題として位置づけられています。
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出典:厚生労働省,"働き方・休み方改善ポータルサイト「ワークエンゲイジメントとは」"
今後、企業が持続的に成長するためには、エンゲージメントを単独で捉えるのではなく、以下の三つの概念を「一体的」に推進することが不可欠となります。
・エンゲージメント: 組織への貢献意欲と仕事への活力。
・パーパス経営: 企業の社会的意義に基づき、事業の在り方を整列させる経営思想。
・ウェルビーイング: 心身ともに満たされた幸福な状態。主観的幸福度が高い個人は、創造性や生産性、売上のすべての面で高いパフォーマンスを発揮することが証明されています。
近年、従業員において「自身が属する企業が社会にどう貢献しているか」というパーパスへの関心が高まっています。企業の掲げる志と個人の価値観が共鳴することで、満足度や忠誠心は飛躍的に向上します。また、リスキリング(学び直し)の機会を提供できない企業は、従業員のエンゲージメントを損ない、優秀な人材の離職を招くリスクを負うことになるでしょう。
こうした環境変化の中で、鍵を握るのがマネージャークラスです。若手従業員は上司の在り方に強い影響を受けますが、当のマネージャー層は激務に追われ、部下の育成やフォローにまで手が回らないのが実情です。 ここに「戦略人事」の視点からリーダーシップ開発を導入し、組織全体でエンゲージメントを高める仕組み作りが求められています。
経団連が2020年3月に公開したレポート『Society 5.0時代を切り拓く人材の育成』では、次のような厳しい提言がなされています。
「企業は、働き手から選ばれる立場へと変わってきていることを認識し、その魅力を高める必要がある。人材が育つ組織として自社をアピールできなければ、優れた人材を採用し、定着させることは難しくなる」
今や、人材は「コスト(経費)」ではなく、価値を生むための「資本(投資)」です。優秀な人材と共に成長を遂げるためには、企業自らが「選ばれる存在」としての魅力を磨き続けなければなりません。
以上の通り、三つの経営概念を統合的に実践し、エンゲージメントを向上させることこそが、これからの企業のあるべき姿です。キャリアコンサルタントとして相談者と向き合う際、あるいは企業内で研修プログラムを企画される際には、こうした社会的背景を「地図」として携え、より解像度の高い支援を目指していただきたいと思います。
まとめ
まとめとしてお伝えしたいことは、
「経験を積み、信頼関係を築くこと」
仕事を得るために最も大切なのは、まず経験を積み、周囲との信頼関係を築いていくこと。人脈づくりといっても、単に大勢の人と名刺交換をすれば良いというわけではありません。お互いの「志」に共感できる仲間をつくることが重要です。キャリアコンサルタント同士の繋がりに留まらず、他業界や他職種の方々とも積極的に交流を持ち、情報の幅を広げていってください。
「自分らしく自己研鑽に励むこと」
孔子の言葉に『これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず』という一節があります。「努力は夢中には勝てない」ということです。
自己研鑽も情報収集も、まずはご自身が興味のある分野から、楽しみながら着手してみてください。その好奇心が、結果として我々を最も成長させてくれるはずです。
「常に“今の社会”と“未来”を捉えておくこと」
私たちは今、変化が激しく先の読めない「VUCA」の時代に生きています。ここで書かせていただいた内容も、すぐに陳腐なものとなるわけです。常に「今、社会で何が起きているのか」をタイムリーに捉え、さらに思考を未来に向けて、これからのキャリアを構想し続けてください。こうした視点を持つことで、相談者への支援や企業への提案は、より価値のあるものになります。
以上のことを、皆様のこれからの活動や提案のヒントにしていただければ幸いです。
そして最後になりましたが、何よりキャリアコンサルタントである皆様自身のウェルビーイングが向上され、各分野でご活躍されることを心より願っております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
筆者

取得資格;
国家資格キャリアコンサルタント/2級キャリアコンサルティング技能士/一般旅行業務取扱主任者/損害保険プランナー/医科医療事務検定 2級
キャリアコンサルタントとシンクタンク系企業においての営業事務のパラレルワークを実現中。
旅行業界、金融業界、外資系IT企業、データバンク等、多業界での就業経験を生かし、社会の動きを体感しながら、ありたい姿に向かって意思決定していけるような支援をモットーに、ジョブカード作成支援、面接指導、就職相談カウンセリング、キャリアデザイン講師として活動。
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