フリーランスキャリアコンサルタントという生き方〜独立準備と働き方〜
バブルの崩壊以降、自律的にキャリアデザインすることが当たり前とされてきています。健康寿命は年々長期化し、職業人生は一つの職業・企業では到底、充足できないことはすべての方に当てはまると思います。その中で、パラレル・キャリアについて考えてみるヒントになれば幸いです。
- 目次
1.フリーランスキャリアコンサルタントという生き方を選んだ理由
私がキャリアコンサルタントとして独立を決めたのは、安定した企業に勤務する中で「このまま、ここに居続けていいのだろうか」という違和感を抱いたことがきっかけです。会社の中で求められる役割を果たすうちに、自分が本当にやりたいことや大切にしたい価値観が見えづらくなっていきました。人の人生に寄り添い、働き方を支えるキャリアコンサルタントの仕事は、私自身の生き方を見つめ直すきっかけにもなりました。
独立を考え始めた頃、最も大きな壁は「安定を手放す恐怖」でした。会社という組織に守られ、毎月の給与が保証される生活を手放すことは、想像以上に勇気がいります。のちに会社都合の無給期間を経験し、「自分の力だけでやっていけるのか」という不安は尽きませんでした。しかし、その経験が「時間も収入も自分でコントロールできる生き方を選びたい」という意志を強くしました
キャリアコンサルタントの学びを通じて、私は「働くとは、誰かの期待に応えるだけでなく、自分の人生をどう使うかを選ぶ行為だ」と気づきました。組織の中で成果を出すの素晴らしいことですが、「自分の裁量で、関わる人や仕事を選びたい」という思いが、徐々に確信に変わっていきました。そしてある日、「いつか」ではなく「今」動こうと決め、独立を実行に移し、そこから本当の意味でのキャリアの再構築が始まりました。
2.フリーランスになるまでに取り組んだ3つの基盤づくり
独立を決意しても、すぐに軌道には乗りません。資格を持っていても、最初は「何から始めればいいのか」「どう仕事を得るのか」がわからず、手探りの日々が続きました。私が振り返って感じるのは、フリーランスとして長く続けるためには、「実務力」・「発信力」・「信頼構築力」の3つの基盤を、準備期間のうちに整えることが大切だということです。
まず、最初に必要なのは、「実務力」です。資格試験で得た知識はあくまで出発点であり、実際の現場では「理論よりも対応力」が問われます。私は企業や組織の研修運営やキャリア面談に携わることや、再就職支援の現場でもさまざまな立場の相談者と向き合ってきました。こうした実務経験を積みながら、相手の課題を短時間で把握し、納得感のある支援につなげる力を磨いていきました。この段階で得た経験は、独立後の案件獲得や信頼構築に繋がったと思います。
次に意識したのは、「発信力」です。フリーランスは、待っていても仕事は来ません。自分が何者で、どんな支援を得意としているのかを、外に伝える必要があります。私はSNSやブログ、講座登壇などを通して、自分の考えや実践事例を発信するようにしていました。すると、同じ志を持つ人や企業担当者から声がかかるようになりました。発信は単なる宣伝ではなく、「この人に相談したい」と思ってもらうための信頼の入口だと実感しています。
そして最も重要なのが、「信頼構築力」です。フリーランスにとっての最大の財産は“信用”です。一つひとつの仕事に誠実に向き合い、相手の期待を超える成果を出すこと。それを積み重ねることで、リピートや紹介の仕事が生まれる。私も最初の頃は報酬よりも「まず信頼を得る」ことを優先しました。小さな案件でも全力を尽くし、結果的に次のチャンスへと繋がっていきました。
独立の準備期間は、焦る時期でもあります。しかしこの3つの基盤を丁寧に整えることで、初めてフリーランスとして「安定した活動の土台」が築かれます。資格を活かして働くというよりも、「自分の力で価値を生み出す」姿勢が、次のステージへの扉を開いていくと考えます。
3.フリーランスとして生き抜くために意識した3つのこと
フリーランスとして活動を始めると、最初に感じるのは「自由」と「不安」が表裏一体であるということです。時間も働き方も自分で決められる一方で、すべての結果に責任を持つ必要があります。仕事が途切れたときの焦りや、誰にも相談できない孤独は、会社員時代にはなかった感覚でした。だからこそ、私はこの仕事を続けていくうえで、次の3つの意識を大切にしてきました。
1つ目は、ご縁を大切にする意識です。キャリア支援の仕事は、「人とのつながり」で成り立っています。研修先や相談者、同業の仲間、講座で出会う受講生など、どんな出会いも次の仕事のきっかけになり得ます。私は、たとえ一度きりの仕事でも、感謝の気持ちを忘れず丁寧に対応することを心がけてきました。すると、半年後や一年後に「あのときのご縁がきっかけで」と新しい仕事が舞い込むことが増えました。信頼は一瞬で築けませんが、誠実さは確実に相手に伝わります。
2つ目は、学び続ける意識です。キャリア支援の現場は常に変化しています。相談者の年齢層や働き方、価値観は年々多様化し、「昨日までの正解」が通用しないことも多いです。私自身も、講座受講や読書、スーパービジョン(※1)などを通じて、常に自分をアップデートしてきました。学び続けることで新しい視点が得られ、支援の質も高まります。そして何より、学ぶ姿勢そのものが「信頼される専門家」の証になるのです。
3つ目は、一件一件に誠実である意識です。どんなに小さな依頼でも、全力で取り組む。たとえ単発の仕事であっても、その一回の面談や研修が誰かの人生を変える可能性があります。私は「この時間を選んでくれた人に、何を残せるか」を常に考えてきました。その積み重ねが、やがて大きな信頼と実績へと変わっていくと確信しています。
独立して数年経った今も、「続ける」ことは決して簡単ではありません。しかし、キャリアコンサルタントという仕事は、人の成長に寄り添いながら、自分自身も成長し続けられる稀有な職業だと思います。ご縁をつなぎ、学びを重ね、誠実に仕事を積み上げていけば、必ず自分らしい働き方が形になっていく。フリーランスとしての安定とは、仕事の量ではなく、信頼を積み重ねる覚悟の中にあると感じます。
※1見識豊かな指導者に、自分のクライエントへの対応について指導や助言を受けること(引用元:LECキャリアコンサルタント養成講座テキスト)
4.キャリアだけでなく人生そのものを豊かにするために
キャリアコンサルタントとして活動を続けるうちに気づいたのは、「キャリア」は単なる職業の積み重ねではなく、“人生全体のデザイン”そのものだということです。どれだけ仕事が順調でも、心身のバランスや家族との関係、自分の時間が犠牲になっては、真の意味でのキャリアの成功とは言えません。フリーランスとして働く今、私は「どう生きたいか」を軸に、「どう働くか」を決めています。
会社員時代は、仕事とプライベートを明確に分けようと意識していました。仕事モードと休息モードを切り替えることが、自分を守る方法だと思っていました。しかし、独立してからは、仕事と生活の境界が自然と混ざり合うようになり、夜に読んだ本の一節が、翌日の研修内容につながることもありました。そんなふうに、仕事と生活が“ひと続き”になっていく感覚は、フリーランスならではの豊かさだと感じています。
もちろん、自由である分、時間の使い方には責任が伴います。すべて自分次第だからこそ、「何を優先し、どこにエネルギーを使うか」を意識的に選ばなければなりません。私は時々、自分の働き方を振り返る時間を設け、「今の仕事が自分の理想の生き方につながっているか」を確認します。フリーランスにとってのキャリアデザインは、未来を予測することではなく、日々の選択を積み重ねる“現在進行形の設計”なのです。
さらに、今の時代は、働き方の選択肢が驚くほど広がっています。副業やパラレルキャリア、在宅やオンラインでの支援など、自分のライフステージに合わせた柔軟な働き方が可能になりました。私自身も、複数のプロジェクトを掛け持ちしながら、自分のリズムで働くという多様な働き方を経験することで、支援対象者への理解も深まり、「あなたらしく働くとは何か」をより実感をもって伝えられるようになりました。
結局のところ、キャリアとは「自分の時間の使い方」の総称だと思います。誰かの正解をなぞるのではなく、自分が納得できるリズムで生きること。それが人生を豊かにし、支援者としての言葉にも深みを与えてくれます。仕事と人生を切り離さず、どちらも自分の手で描いていく・・・それがフリーランスとして生きる最大の醍醐味です。
5.あなたがあなたらしく働くために伝えたいこと
独立して仕事を続けていくうえで欠かせないのが、「自分の強みを知り、それを発信すること」です。キャリアコンサルタントの仕事は、人の人生に寄り添う尊い職業である一方、支援者の数も増え、差別化が難しくなっている一面もあると感じています。だからこそ、他者と比べるのではなく、自分の経験・価値観・得意分野を軸にした“自分ブランド”を築くことが重要になります。
私自身、独立当初は「どんな相談者でも対応できるように」と思っていました。しかし実際には、すべてを引き受けようとするほど自分の軸がぼやけ、相手にも伝わりづらくなります。そこで意識を変え、「自分はどんな人を支援したいのか」「どんな場面で最も力を発揮できるのか」を具体的に言語化するようにしました。
自分ブランドを築く第一歩は、「自分の物語を語ること」だと思います。資格取得のきっかけ、転機となった出来事、支援を通じて学んだこと・・・その一つ一つが、あなたの信頼を形づくるストーリーになります。私も、SNSやセミナーで失敗談を含めて等身大の経験を共有するようにしています。完璧さではなく「リアルさ」にこそ、人は心を動かされると思うからです。
次に大切なのは、発信の一貫性です。プロフィール文やSNSの投稿、講座テーマ、配信するメッセージの方向性をそろえることで、「この人は何を大切にしているのか」が明確に伝わります。たとえば私は、“自分らしい働き方の実現”をひとつのテーマに掲げ、その軸を中心に発信しています。こうした積み重ねが、やがて「〇〇といえばこの人」という認知へとつながっていくと思います。
そして何より、自分らしさを恐れないこと。キャリア支援者である私たち自身が、自分の強みや価値観を大切にしながら働く姿を見せることが、最大のメッセージになります。どんな分野に挑戦しても、どんなスタイルを選んでも、“あなたにしかできない支援”があります。それを見つけ、磨き、伝えていくことが、フリーランスとしての真のブランディングです。
まとめ:キャリアコンサルタント資格を活用し、新たな仕事を引き寄せよう
資格を取ることは、ゴールではなく新しいスタートラインです。多くの人が「資格を取れば仕事が安定する」「自分に自信が持てる」と思いがちですが、実際にはそこからが本当のキャリアデザインの始まりなのです。
フリーランスとして自分らしい働き方を築くには、「資格」よりも「価値観」や「ライフスタイル」、そして「どんな人を幸せにしたいか」という軸を明確にすることが鍵となります。
自分の強みを生かすことは、「誰に、どんな価値を届けるか」を意識することです。資格はそのための“手段”であり、“目的”ではない。資格を持っているという事実に頼るのではなく、それを通して「どんな未来を描きたいか」「どのように社会に貢献したいか」を問い続けることが、長く続くキャリアを支えることになります。
ここで伝えたかったのは、『「資格の延長にあるキャリア」ではなく、「自分の物語の延長に資格がある」』という考え方です。資格は、あなたという人間の一部に過ぎません。けれど、その資格をどう使うかで、人生の物語はまったく異なる展開を見せます。今こそ、自分の原点を振り返り、「何のためにこの資格を取ったのか」「その先にどんな生き方をしたいのか」を再確認してみてください。資格は、あなたの生き方を制約するものではなく、自由を拡張するためのツールです。“資格の外側”にある自分の可能性を信じ、あなたらしいキャリアを築いていってください。
筆者

取得資格;
国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/グリーフ専門士/CompTIA CTT+ Classroom Trainer/グローバルマナーインストラクター
団体職員として人事総務事務を経験。より貢献できる場を求めて2008年からカウンセラー・セミナー講師のキャリアをスタート。民間企業、地方自治体、職業訓練校、ハローワーク、高校・大学で、キャリア面談・メンタルヘルス研修・講演等を行い、のべ2万人以上に関わる。
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