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老年学から学ぶキャリアデザインとは?

老年学の視点を活用することは、人生の後半に起こる加齢による心身の変化を理解し、高齢期を新たなステージとして捉えたキャリア設計のヒントになります。

目次

老年学とは何か

「老年学とは、加齢に伴う身体的、心理学的、経済学的、社会学的な変化を研究する学際的な学問です。老年学は、英語でジェロントロジーと呼ばれ、1903年にロシアの生物学者イリヤ・メチニコフによって提唱されました。ジェロントロジーとは、ギリシャ語の老人を意味する「Geront」に、学問という意味の「ology」を組み合わせた造語です。
この老年学は、加齢を研究テーマとしています。具体的には、加齢による認知機能や身体機能の変化、定年や家族の独立、介護などによる生活環境や人間関係の変化、さらに家計や老後の生活資金など多岐にわたるテーマを扱っています。そのため、老年学では、「人生100年時代」が直面する様々な課題を解決する実践的な学問としての役割を担っています。
また、老年学の目的は、高齢期における身体的・心理的変化や社会的役割の再構築に焦点をあて、人生設計の基盤を提供する学問です。

老年学が注目される背景と人生への影響

「老年学が注目されている背景は、主に次の3点からです。

①人口構造の変化と高齢期の役割の拡大
少子高齢化が進む日本では、65歳以上の人口が増加し高齢化率が上昇しています。この結果、年金や医療費などの社会全体を支える社会補償制度に対する負担が増加し、支える側と支えられる側のバランスが課題となっています。このことにより、高齢期は「表舞台引退」だけでなく、次世代を支える役割を担う時期として捉えられるようになりました。

②健康寿命の延伸がもたらす影響
医療技術の進歩や生活環境の改善によって、日本人の平均寿命が伸びています。これに伴い、老後の生活設計が大きく変わっています。長く生きるだけでなく、健康で自立した生活をどう維持するかが重要になっています。

③多様化するキャリアと人生設計への影響
定年延長や再雇用、早期退職制度など、働き方の選択肢が多様化しています。定年後は引退して余生を過ごすというイメージは変わりつつあり、知識や経験を活かしながら新たな挑戦をする時期として再定義されています。
また、人生への影響については、老年学は、未来の人生にもたらす影響を理解できるだけでなく、人生設計に具体的なヒントを与える学問です。さらに、若い世代にとっても老年学を学ぶことは重要です。
老年学により世代間の相互理解を深めることは、人生の各ライフステージにおける選択肢を認識し、幅広い視点で人生設計を考えるきっかけとなるからです。

長寿化社会におけるキャリアの必要性

「人生100年時代を迎えた現代では、定年退職後の時間が大幅に長くなってきました。このような時代においては、従来のキャリア観を見直し、定年退職後を含めた「キャリアの再設計」が必須となっています。特に高齢期を「余生」ではなく、「新たな挑戦の機会」として捉える視点が求めれます。
仕事を続けることは、収入を得る手段にとどまらず、心身の健康にも良い影響を与えることが研究で明らかにされています。そのため、仕事を通じて社会とつながることで、孤独感や喪失感が軽減され、生きがいを感じやすくなります。また、年齢に応じた働き方を選ぶことで、健康面での負担を抑えながら働き続けることも可能です。
さらに、変化の激しい現代では、仕事の内容や求められるスキルも刻々と変化しています。そのため、生涯を通じての「学び直し」がますます重要になっています。学び直しは、スキルの習得だけでなく、自己成長や新たなキャリアの可能性を切り開くことができます。

また、労働力人口の減少が進む中、シニア世代が担う役割も変化しています。組織内でのメンターや地域社会でのボランティア活動などを通じて、次世代に知識や経験を伝える役割が求められるようにもなっています。
その他、寿命が延びることでの定年退職後の経済的自立も課題となっています。仕事を通じて収入を得ることは、生活の安定だけでなく、自己実現や社会的な役割の場としても重要です。そのため、定年退職後を見据えた「新たなキャリア」を設計することは、これからの長寿社会で生きるすべての人にとって重要なテーマとなっています。
一方、シニア人材に活躍してもらう側にとっても、老年学の視点は有益です。加齢による特性や強みを理解し、それを活かした採用や職場での役割分担を行うことは、シニア人材の能力を引き出し、若い世代との協働を促進することが可能となるためです。

ライフステージに基づいたキャリア設計の意識

「中高年期のライフステージでは、徐々に第一線から退き、次のステージに向けた変化が近づいてくる時期です。しかし、寿命が延び、人生100年時代を迎えた現代では、高齢期に入っても生きがいや社会貢献を求めて働き続けたり、ボランティア活動を行ったりする人が増えています。そのため、長くなった高齢期を「どう生きるのか」を主体的に考えざるを得ない時代になってきました。現役時代と同じ、またはそれ以上の時間をどのように過ごすかということは、重要なテーマとなっています。
そのため、高齢期を充実したものにするためには、ライフステージごとにキャリア設計を行うことが必要です。ただし、高齢期に入ってから考え始めるのでは準備不足になりがちになるため、中年期の段階から、将来に向けた具体的な計画や準備を進めることが必要です。

中年期から高齢期に向けて意識することは、
・中年期:これまでの経験やスキルの棚卸しを行い、未来に向けた計画づくり
・高齢期:「余生」ではなく、「新しい挑戦の時期」と捉え、主体的に活動する
・柔軟性の確保:健康状態や価値観の変化に応じてキャリアや生活スタイルを調整する


これらにより、高齢期を「余生」と捉えるのはなく、豊かで充実した時期にするために「新しい挑戦」という意識を持ち、戦略的にキャリアを設計することが求められています。各ライフステージでキャリアを見直し、計画的に準備を進めることは、長寿社会の中での「自分らしい生き方の実現」を可能にしていきます。

老年学的視点で考えるキャリアのステップ

「老年学視点で考えるキャリアのステップは、「新たな人生の歩み」として、これまでの人生を振り返りながら、心身の変化や環境に適応しながら、新たな役割や社会的なつながりを継続的に作り上げていくプロセスと考えます。そのため、ライフステージごとにキャリアを再構築し、年齢を重ねつつも自分らしい生き方を実現することが老年学視点でのキャリアステップです。
高齢期は「表舞台からの引退」を意味するだけではなく、新たな役割や価値を見つけるための重要な時期と捉え、以下のように考えていきます。
1.社会的な役割の再構築
仕事中心の役割から、家庭・趣味・学び・地域・社会貢献などの多様な役割を再構築があげられます。具体的には、これまで培ってきたスキルや経験をどういった分野や方向性でどう活かしていくのかを考えることです。
2.社会とのつながりの構築
社会的なつながりを維持し、新たなつながりを作ることです。具体的には、自治会やボランティア活動への参加、趣味を通じた仲間づくりなどです。このことは、孤立感を防ぎ、充実感や達成観のある生活へ導き精神的にも大きな影響を与えます。
3.自己実現、成長の継続
中高齢期においても、新しい目標を持ち続けることは大切です。これまでの人生を振り返り、経験やスキルを自分自身に問いかけ、人生の意味を見出していきます。また、新たなステップへの目標を持つことは、自己実現へのプロセスであり、成長の継続といえます。
4.環境への適応と調和
中高齢期になると、個人差はあれ加齢による身体的・心理的な変化が現れます。そのため、自分の能力や体力に合わせた柔軟な選択や環境への適応も大切になります。多様な働き方の選択肢の検討や新たな環境へ順応していく。

長期的視点をもったキャリア設計の重要性

長期的な視点を持ったキャリア設計は、現在の働き方や生き方だけでなく、将来を見据えた変化や可能性を考慮しながら、計画を立てることができるという点で重要です。特に老年学の視点を取り入れることで、まだ経験していない心身の変化を事前に予測し、準備や対策を行うことができます。また加齢や老化をネガティブに捉えるのではなく、加齢によって得られる知識や経験、スキルを認識することで、ポジティブに未来のキャリアを考えることができます。
長期的なキャリアを考える際には、人間の能力の変化を理解することも重要です。能力には、「流動性知能」と「結晶性知能」という二つの知能があります。

・流動性知能:記憶力や体力、判断力などの持って生まれた能力。一般的には20代をピークに徐々に低下していくとされています。
・結晶性能力:経験や知識に基づく課題解決力や言語力、対人スキル。年齢を重ねることで強化される傾向があります。


これらの違いを活用することで、自分の強みを活かし続けることが可能になります。知識や経験を活かしての指導やアドバイスなどもこの知能の活用例です。
このように、長期的視点をもったキャリア設計は、加齢や環境の変化に柔軟に対応し、自分の強みや可能性を活かす重要な要素となります。特に、結晶性知能の特徴を理解することは、キャリア設計に非常に役立ちます。

キャリアコンサルタントの魅力
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柔軟性を持ったキャリアパスを採用する方法

現代社会では、定年退職の概念が変化し、柔軟性をもったキャリアパスを採用することが、個人の幸福感や社会の持続可能性を支える重要な要素となっています。
中高齢期の学び直しは、知識やスキルの更新することで、新たな仕事やキャリアの選択を広げ、異なる分野へのキャリアチェンジを可能にします。また、シニア世代にとっても学び続けることで、長年同じ仕事を続けることによって生じるストレスや倦怠感を軽減し、より意欲的に仕事に取り組むことが可能になります。
さらに、テレワークやフレックスタイム、パートタイムやプロジェクトベースの仕事など、柔軟な働き方を採用することは、シニア世代が自分のペースで働き方を調整することができます。このような選択肢は、シニア世代がより自由で充実したキャリアを築く助けとなります。

多世代での協働と新たなキャリア形成の事例

多くの企業がAIやDXの推進などの業務の効率化を図っています。この流れにおいて、情報技術を扱える人材が必要になってきています。しかし、既存のシステムから新たなシステムへの移行には、現在の情報技術だけでなく、過去に主流だった技術の知識やスキルも重要な役割をはたします。その代表例が、COBOL言語を使ったシステムです。
COBOLはかつて広く使われていたプログラム言語です。いまでも様々な基幹業務システムで使われています。しかし、若手技術者は、最新の情報技術を習得していても、COBOLに関するスキルは十分ではないことが課題となっています。そのため、COBOL言語を使いこなせる技術者に注目が集まっています。この言語を熟知した技術者としてシニア世代の技術者が注目されています。
シニア世代の技術者たちは、COBOL言語に関する豊富な知識と経験をいかし、現役世代の若手技術者と協働して業務を進めています。シニア世代の技術者達は、これまでの経験を活かし、現役世代と協働しながら活躍しています。この事例は、シニア世代が持つ経験と若い世代が持つ最新の技術を融合させることで、多世代での協働が生産性向上に寄与している事例です。
このように多世代での協働は、個人のキャリア形成を豊かにするだけでなく、企業や社会全体の成長を促す重要な取組みです。

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未来志向で実現可能なキャリアプランの方法

人生100年時代を見据えたミドル・シニア世代がキャリアプラン作成する際には、「キャリアの終わり」を意識するのではなく、「新しいライフステージへのスタート」という考え方が重要です。この考え方を取り入れることで、年齢を重ねても新たなステージへ挑戦する気持ちを持ち続け、充実したキャリアを築くことができます。
そのため、キャリアを通じて中高年期の充実感と幸福感を引き出す未来志向のキャリアプランを設計するポイントは
1.過去の経験を振返り、未来志向で考え活かす
中高年期のキャリアプランでは、これまでの経験とスキルを棚卸し、未来にどう活かすかを考えることが出発点となります。具体的には
・これまでの経験やスキルを見直し、それをどのように活用出来るか
・そのスキルを新たな分野でどのように活用をできるか
・自分の興味ややりたいことは何か
例:営業職で培った「人との信頼関係を築く」スキルを活かし、地域の小規模企業のコンサルタントやアドバイザーに挑戦するなど
2.変化への対応
加齢による体力や価値観の変化も考慮し、働き方や仕事内容に固執せず、状況に応じ柔軟に調整できるキャリアプランを設計する。
例:フルタイムの仕事から、非常勤講師や地域の学習ボランティアに移行することで、柔軟性を確保しながらキャリアを維持するするなど
3.キャリアを通じて人とのつながりを維持・強化し、社会的な役割を維持
老年学の視点では、社会的な孤立が心身に悪影響を及ぼすとされています。そのため、仕事だけでなく、地域活動や趣味やコミュニティー参加による人間関係の維持は、未来志向のキャリアプランにおいて重要な要素です。
例:地域での講師活動や趣味を活かしたワークショップの開催によりキャリア形成と社会とのつながりの両立など
しかしこの視点を欠いた場合には、目的意識の欠如による心理的なリスクや、退職後の人間関係の喪失や新たな環境への不適応、経済的な問題などのリスクを伴う大きな課題をもたらすことになります。これらのリスクを回避するためにも、現実的な柔軟なキャリアプランを設計し、実行していくことが必要です。

現実的な目標と継続的な学び直しのすすめ

老年学の視点では、ミドルやシニア世代が現実的な目標を持ち、それを達成するための継続的な学び直しを行うことが、人生の後半を豊かにする重要な要素です。目標を達成するためには、これまでの経験やスキルを振返り、「自分がどのような価値を提供できるのか」、「どのような役割を担えるか」を明確にしていきます。この作業には、自分の興味や強みを見据え、過去のキャリアを基にして新たな目標を作る作業が含まれます。
例えば、定年後に地域貢献を目指していきたい場合、これまで培ってきた職務経験を活かして地域の教育プログラムに携わる、ビジネスのコンサルタントを目指すなどの目標設定が考えられます。
 目標を実現するためには、知識やスキルの習得が必要です。継続的に学ぶことは、単なるスキルアップだけでなく新しい可能性の扉を開く重要な要素にもなります。学びの機会は、心身の活性化が促進されるだけでなく、自己肯定感の向上や社会とのつながりを維持していく効果もあります。
学び直しに取り組む際には、「今後必要となるスキルは何か?」を見極め、
・オンライン学習や地元の教育プログラムへの参加
・地域の図書館や自治体が主催する講座への参加
・今までの仕事の経験を活かし、地域での講師やアドバイザーへの挑戦
など、無理なく継続できる方法を選ぶことも重要です。この学び直しは、スキルの習得だけでなく、目標実現に向けての現実的な道筋となります。
 現実的な目標を設定し、継続的な学び直しを行うことは、新たな可能性を切り開き、人生の後半をより豊かに過ごすことを可能にするだけでなく、自分の存在価値を再認識するきっかけにもなります。

まとめ

老年学の視点を取り入れたキャリアデザインは、ミドル・シニア世代が人生の後半をより充実させるための有効なアプローチと言えます。このアプローチを実現するために、キャリアコンサルタントには、次の視点から支援を行うことが必要です。
クライエントの経験やスキルを一緒に振り返り、どう活かしていくかを検討します。具体的には、地域活動や専門性を活かしたコンサルタントや後輩育成のためのメンターなどを提案します。これにより、クライエントが達成感や自己実現が得られる役割と同時に、自分自身の価値を再発見できるよう支援します。
また、学び続けることも中高齢期のキャリア形成には欠かせません。学びは、新たな知識やスキルの習得だけでなく、人脈形成や新たな視点の獲得にもつながります。この過程では、キャリアコンサルタントには、無理なく学び続けられる環境を整える支援が求められます。
さらに、ミドル・シニア世代特有の心身や環境の変化に目を向けることも重要です。柔軟なキャリア設計の提案や心理的なサポートを行うことで、不安やネガティブな感情を軽減し、ポジティブな思考への変革を支援することが求められます。
また、2025年4月から「65歳までの雇用確保」が完全義務化されることをはじめ、65歳から70歳までの就業機会の確保、役職定年制廃止や早期退職制度など社会は大きな変化を迎えています。このような変化への適応には、心身の健康を維持しながら、自分らしいキャリアを再構築する支援が求められます。中高齢期のキャリア支援では、ミドル、シニア世代のクライエントが自分の価値や役割を再定義し、成長と挑戦に前向きに取り組めるように支援することが重要です。
最後に、キャリアコンサルタントが老年学の視点を取り入れることは。今後はますます必要となるでしょう。老年学の視点を活用することで、ロールモデルが少ない中で多様な選択肢を模索しているミドル、シニア世代のクライエントに対し、より具体的で実践的なキャリアデザインの支援を行うことが可能となります。これにより、クライエントが「より自分らしいキャリア」を再構築する際の力強い助けとなってくれることでしょう。

LECキャリアコンサルタント養成講座国家資格「キャリアコンサルタント」試験対策講座キャリアコンサルティング技能検定(1級・2級)対策講座更新講習

筆者

北村 美智子
筆者:北村 美智子 講師

取得資格;
2級キャリアコンサルティング技能士/国家資格キャリアコンサルタント/産業ジェロントロジーシニアアドバイザー/MBA取得/中四国商経学会員/ファイナンシャルプランナー/セカンドキャリアアドバイザー

大手教育会社にて営業・企画に従事し、新規拠点立上げ時に支店長として運営業務に携わる。その後人材事業部にて人材派遣の業務に携わる。この経験を活かしてキャリアコンサルタントの資格を取得。その後、ジョブカフェ、大学での若年者就業支援からシニアの就労支援に従事。大学院にて若年者の職場定着をテーマに人的資源を学びMBAを取得。2018年、人材採用・定着、シニア人材活用を主とするL&Lラボを起業。大学生からシニアまでのキャリア支援を実施中。

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