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農林業がもつ多面的な機能と役割

スイスの黄色い花


 以上のような私の理念の原点の一つにヨーロッパでの体験があります。
 昭和51年、県会議員で2期目に、スイスへ視察に行ったときのことです。
美しい景勝地で、道路の脇にある広い駐車場のある展望台で、写真を撮っているとき、ふと見ると、バスの運転手と車掌さんが道端に生えている黄色い花を引き抜き、袋に入れているのです。私はバス会社が漢方薬の工場でもやっているのかと不思議に思って(笑)、
「なぜ、そんなことをしているのですか?」と聞きました。すると、車掌さんは「われわれは国民教育の中で、『黄色い花は毒素があると思え』と教えられています。スイスは観光と農業の国です。それを牛や羊が食べて中毒を起こしたら、国家の損失ですから」と言うのです。それは農林水産大臣の国会答弁のように立派な説明でした。


 その言葉に感動して、すぐにスイスで農政にかかわる人を取材したところ、「農業者は農業を通じて国土保全という役割を担っている国家公務員である。それによって治山治水が行われ、安全な国民生活が保証され、さらに自然資源としての緑、水、空気が確保されている。 そのうえに工業や商業も成り立っている」というものでした。
それを聞いて、私は国民の意識の格差を感じました。そして農林業政策には精神、哲学がなければ駄目だと理解したのです。それはある意味ではショックで、また感動的な体験でした。


 日本は経済の面では世界の国々に見劣りしない国になりましたが、国家としては、そういう点が欠落している。そう思えてならないのです。
 自然や国土、水や空気を守ること。
地方と都市の関係をきちんととらえること。これから孫の世代、子どもの世代と人間社会がより豊かになり、繁栄していくためにはそのような哲学が不可欠と言えるでしょう。

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