↑What's New ←目次 ←特集表紙
0 1 2 3 4 5 6 7 8 vol.2
農林業がもつ多面的な機能と役割

農林業の多面的機能(国民の理解と評価をどうするか)


 農林業とは、単に農産物や林産物を生産するだけの業でしょうか?
 私の答はNOです。当然、農林業は生産活動ではありますが、そのほかにも多面的で公益的な国家・社会にとって大切な役割を果たしています。私はそれを「農林業が持つ多面的な機能と役割」と言ってきました。今回の農業基本法の見直しの中で、政府も「多面的機能」を打ち出し ています(注1)。
 ところが、残念ながらそのような農林業の役割は国民にほとんど理解されていません。都市に住む人たち、例えば学者、国会議員としてバッジをつけている人たちの間でさえ、都市と農山村はあたかも対立構造にあるかのような議論が行われています。
 私はこれに対してもNOと言っています。


 都市と農山村は互いに補完し合い、共存共栄する関係にあります。
 例えば水の問題です。都市部の工業地域で、生活の場で、水をどのように確保するのか?東京で水をすべて生み出すことは不可能です。
 水源涵養の機能一つとっても、上流にある山地の森林がもつ水源かん養機能に多大な恩恵をこうむっているのです。山に木を植えて育てる人、中山間地で農業を営む人がいなかったらどうなるでしょうか?さらに上流の森林や田畑は土砂崩れ、
河川の氾濫などの自然災害を未然に抑止する役割も担っているのです。
 国家存立の基盤は国土です。それを保全し、多面的な機能を維持管理するのがまさに農林業であり、その役割を担った人が農林業者だと私は考えています。
 所得を求めるための農林業というのみの見方から脱却しなければなりません。発想をそのように改め理解し評価しないと、今後、好ましい形での日本の国土の発展はないと私は考えます。


(注1)多面的機能
「食料・農業・農村基本法」
(多面的機能の発揮)
第三条  国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能(以下「多面機能」という。)については、国民生活及び国民経済の安定に果たす役割にかんがみ、将来にわたって、適切かつ十分に発揮されなければならない。

→Next

↑What's New ←目次 ←特集表紙
0 1 2 3 4 5 6 7 8 vol.2
Copyright 1999 株式会社東京リーガルマインド
(c)1999 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.