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「食料・農業・農村基本法案」の概要とその目的

新農業基本法の具体的内容


 新基本法は、具体的にどのような新機軸が盛り込まれているのか。
「まず第一に、基本計画を策定することです。基本法は宣言法であり、単に宣言しただけで実態面が伴わない場合は、基本法としての意味を失ってしまうことになります。基本法に書かれてることと
政策の橋渡しとして基本計画を位置付けることにしたのです」
 基本計画は、10年程先を見通して、5年ごとに施策に関する評価を踏まえ、変更することとされている。
 基本計画には、基本的な政策の方針、講じるべき施策を書くこととなっている。


「中でも目玉は、第15条第2項第2号に食料自給率の目標を掲げたことです。食料自給率の低下に対して消費者や生産者が不安を持っていることに対応して、基本法の基本計画の中に位置付けることをはっきりさせたものです」
 食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨として、国内の農業生産と国民の食料消費に関する指針として農業者、消費者そのほかの関係者が
取り組むべき課題を明らかにして定めるものとされている。すなわち、食料自給率の目標というのは、市場での選択を通じて、国民全体が取り組み、その結果として達成されるという性格のものであることを規定している。
 また、新農業基本法は、「食料」「農業」「農村」という柱を打ち出している。それぞれについては、どのような内容が盛り込まれているのか。


[1]食料 「食料の安定供給の確保に関する施策」

「消費者の視点を重視した『食料』政策“消費者重視の食料政策”を展開していかなければならないことをうたっています。食料の安全性の確保、品質の改善、表示の問題、昨今話題になっていま遺伝子組み替え食品などを含めた表示の適正化などです」
 また食料政策の中には、「健全な食生活に関する指針の作成」がある。どういう食生活を送れば、健康に暮らすことができて、なおかつそれが国内を消費することとなり、さらに食料自給率を上げることにつながる議論だ。


[2]農業 「農業の持続的な発展に関する施策」

 以下の三つが農業に関係する政策のポイントとなる。
(1)望ましい農業構造の確立
 効率的で安定的な農業経営を育成して、これらの経営が農業生産の相当部分を担うような農業構造を確立する。
「そのためには、個々の農業者が創意工夫を生かして農業経営を展開できるような仕組みを作っていくことが必要です。現状として日本は家族経営が農家の9割以上を占めています。
それをどのように発展させていくか。さらにより合理的、効率的な経営を行うため、経営の法人化を進めていくことが重要だと考えています。法人化の中には、土地利用型農業における株式会社の農地取得の問題が含まれています。農業生産法人制度の見直しの中で、株式会社の形態の導入を行うこととしており、現在、それに伴う懸念を払拭するための提案を検討中です」


(2)価格政策の見直し
 市場評価を適切に反映した価格形成を行い、同時に経営安定対策を施策していくことが求められている。
 これまで、農産物の価格政策については、一定の価格でものを取引するため、消費者の需要が生産者に伝わりにくく、農業者の経営感覚の育成の妨げとなっているという面が指摘されてきた。
今後は市場評価につながる価格形成に努めていくことが必要だ。
「ただし一気に実施すれば、個々の農業経営にとってあまりにも影響が大きく、育成しようとしている農業経営そのものを圧迫してしまうことが考えられます。経営安定対策を同時並行的に行っていかなければなりません」


(3)自然循環機能の維持増進
 農業の自然循環機能の維持増進を図るため、農薬や肥料を適正に使用することなどによって、
地力の増進を図っていくことが必要だ。
「農業の持続的な発展のためには、環境と調和した農業生産を展開していかなければならないと考えています」


[3]農村 「農村の振興に関する施策」

 農村、特に中山間地域等で人口が減少し、農業生産活動が行われなくなりつつある。その対策として適切な農業生産活動が維持されるよう“直接支払い”、つまりヨーロッパで行われているデ・カップリングのような制度を導入する方向が打ち出された。


「中山間地域等の直接支払については、耕作放棄を防止し、多面的機能を確保する観点から、その実現に向け、具体的な検討を行っています。学識経験者を交えた検討会を設け平成12年度からの実施を目指しているところです」


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