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「食料・農業・農村基本法案」の概要とその目的

現行の農業基本法の目的


 今国会にかけられた「食料・農業・農村基本法案」(以下、新農業基本法と略す)は今後の日本の農業政策の基本となる極めて重要な法律である。その内容はどのようなものか、また新たに制定されることになった経緯はどのようなものか。農林水産省大臣官房企画室企画官・青山豊久氏にまず現行の農業基本法のことからお聞きした。
「日本には“基本法”と呼ばれる法律が15ありますが、そのうち農業基本法は3番目にできたもので、制定されたのは昭和36年です。制定の当時は高度経済成長の初期の段階であり、農村は人口過剰であり、逆に都市部では労働力が不足しているという状況でした」


 当時、考えられたのは農村の人口を都市部に移動させることだった。
 移動後、人口が減少する農村では、残った個々の農業者たちが事業規模の拡大を図ることができる。そのことで生産性が向上し、農業が産業として成立する。
また農業者の生活水準が上がり、農工間格差を是正することができる。
 同時に都市部では他産業における労働力需要を満たすことができる。
 それが現行の農業基本法の青写真だった。
 政策として三つの柱が掲げられた。


[1]生産政策

 需要の減少するものの生産は、需要が増加するものに切り替え、生産を増大させていく。具体的には当時、需要が増えていた畜産物や果樹、野菜をたくさん作るということ。コメも当時は増産の方向だった。
[2]価格・流通政策

 当時、流通システムの整備が不十分だったので、流通の合理化を図っていく。また価格政策を実施することで、消費者負担の可能な範囲で価格水準の安定を図り、農業所得の角の変動を防止し、安定的な生産を図る。


[3]構造政策

 経営規模の拡大を図って、自立経営と呼ばれる他産業と均衡する農業経営を育成していく。
 現行の農業基本法はそのような目的を持って制定された。しかし、その後の社会情勢の変化によって誤算が生じた。高度経済成長によって地価が急激に上昇し、


農家の土地に対する資産保有的な志向が強くなるという現象が生じたのだ。そのため農業の経営規模の拡大が狙ったように進まなかった。
「目指した方向は非常に美しいものでしたが、必ずしももくろみ通りにはいかなかったということです」


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