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新憲法では、あらゆる分野を見直す

反町 憲法を改正するとすれば、第9条以外にはどのような課題があるでしょうか?
藤井 21世紀の新憲法を作るのであれば、あらゆる分野について、見直さなければなりません。例えば、日本国憲法には世界規模の問題である地球環境を守ることについての何の規定もありません。新しい憲法にはこの規定を入れるべきです。
 基本的人権では、犯罪被害者の人権のことがあろうかと思います。現憲法で、犯罪加害者・被疑者を保護する規定は8条近くあります。国家権力を制約するのが憲法のひとつの機能ですから、私はそれはそれでいいと思います。ただ一方で、犯罪被害で泣いている方のための規定が1条もないのです。そのバランス
をとるべきでしょう。
 立法府の在り方でいえば、今の制度のままであれば、衆議院と参議院の差がわかりません。世の中には、選挙は嫌いだけれど、見識があり、良識のある方はいっぱいいらっしゃいます。もし二院制を維持するのであれば、そのような方々に参画いただけるような制度を考えるべきではないかと思います。
 司法については、憲法判断のことがあると思います。日本では、自衛隊が何をしたからというように、具体的な事件があって初めて、違憲か合憲か判断する。アメリカから入った制度だからです。ヨーロッパでは、規定の内容そのものが憲法違反か訴えることができます。そういう仕組にしなければならないと思います。


反町 教育についはどのようなお考えをおもちですか?
藤井 教育基本法には、何も悪いことは書いてありません。実にいいことが書いてある。ただ抜けていることがあります。それは人間が生きていくうえで基本となるのは家庭であり、地域社会であり、国家である。そういう社会の中に、個々の人間がいるという位置づけについての規定です。
反町 日本国の教育基本法でなく、世界のどこに行っても、役に立つ教育基本法になっています。つまり日本という国の歴史が欠落しています。
藤井 歴史と地理の教育は本当に大事なことだと思います。ヘンリー・A・キッシンジャー(元米国務長官)は著書『外交』の中で、外交官たらんものは、世界の歴史と地理を学び、そのうえに自分の理
念を作るのが理想だと言っています。これは外交官に限らず、すべての人間について同じことがいえます。砂漠で遊牧民だった人たちが今、立派な国家を作っています。日本のように四季がある国で農耕をしていた人たちも立派な国を作っている。成り立ちが異なる国が理解し合い、仲良くしていくためには、相手の国の歴史と地理を知らなければなりません。



 
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