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司法制度改革

国民とともに考える


反町
司法の在り方を審議するうえで、どのような要素を考慮すべきだとお考えですか?
    保岡
    まず、外国の司法は文化的背景も含めて徹底的に研究する必要があります。同時に、わが国の司法制度、司法文化を分析して、その特質を明らかにする。「和の精神」、つまり、無用の抗争を避け、できるだけ話し合いによって、人情味ある平和的な解決をはかるということです。それが良い面であるとすれば、一方、悪い面もあります。紛争を隠密利に明確なルールに基づくわけでもなく解決してしまう。そこでは個人が組織に埋没し、権利や尊厳が疎かにされる危険性もあります。よく見極めて、良い面を制度に反映させ、悪い影響をもたらすものを取り除く形で、新しい司法を求めていくべきです。もう一つ重要なのは、世界や日本がこれからどのようになっていくのか、その変化を読むことです。
反町
そのような分析の中から基本理念を明解にして、理論的な筋道を通すのですね。
    保岡
    過去にも、日本の社会構造全体を変えた時期がありました。明治維新を迎えて近代国家を作ろうとしたとき、あるいは戦後の焼け野原から豊かな民主国家に進もうしたとき。同じように現在、わが国は時代の転換点にあります。これまでは常に欧米モデルがありましたが、今度はそれがありません。先が読めないからこそ、理想や目標を明確にすることが必要です。それこそが司法制度改革審議会の役割です。見えない未来に向かうときは、理念、理想、確とした方向性があればいい。新しい日本はどこへ向かうのか? どういう国是をもつのか? 世界一の司法とは何か? その答えは日本人が知恵と工夫で自ら作る気概を持たなければ、生まれません。役人にすべて依存するのではなく、われわれ国民で積極的に取り組む。国民が政治のリーダーシップ、あるいは専門家と手を組んで良いものをつくる。そういう意思を持っていただきたいと思います。
反町
大事業になりますね。
    保岡
    2年間では簡単ではないでしょうが、国会の審議でも、衆議院の法務委員会に小委員会を設置しましたので、委員会での積極的・多面的な審議が望まれます。専門委員会もある。各政党も部会をもっていますが、各党単位でもアプローチすべきです。国民の力を結集するため、ヒアリングやシンポジウムを工夫するなど、ありとあらゆる方法で国民の意見や考えを吸収できる運営方法をとりたいと思っています。
反町
自民党も相当、本腰を入れなければなりませんね。
    保岡
    「21世紀の司法の確かな指針」(報告書)を昨年まとめるときも、二つの分科会を設置し、集中的に議論・検討を重ねました。もちろん、できる限り、国民的視点に立って、各界・各層・国民各位の意見・提言などを参考にさせていただきました。今後は、党の調査会としても、私案として、いくつかの検討チームを設置し、担当者を決めて、精力的に制度改革を推進して行きたいと思っています。その過程で、再度、国民からの意見を拝聴したいと考えています。
     検討チームについては、例えば、
    1. 法律扶助制度の充実・強化に関するチーム
    2. 知的財産権の法的保護・特許裁判のあり方に関するチーム
    3. 司法文化と司法制度の改革に関するチーム
    4. 高等教育と法曹教育のあり方に関するチーム
    5. ADR(裁判外紛争処理)などに関する分野やアジアの法整備・協力に関する分野についてのチーム
    など、いくつか考えられますが、プロジェクトチームの設置や検討に際しては、関係者の意見をうけたまわり、調整した上で、決定したいと考えています。
     いずれにしても、何か新しい形での検討方法も必要かと思います。自民党内の議員だけではなく、広く国民と議論していく機会をもって、新しい時代にふさわしい司法の在り方を国民と共にもとめ、実現して行きたいと思います。
反町
ありがとうございました。




衆議院議員・保岡興治(やすおか おきはる)氏

昭和14年5月11日生まれ。中央大学法学部卒業、司法試験合格(司法修習19期)。裁判官を経て、昭和47年衆議院議員に立候補し初当選。現在8期目(鹿児島一区選出)。国土庁、大蔵省の政務次官、衆議院では建設委員長、国会等の移転に関する特別委員長、大蔵委員会筆頭理事、金融安定化に関する特別委員会筆頭理事。自民党では副幹事長(4期)、政治改革本部企画委員長、財務委員長、政調総括副会長等を歴任。初当選以来「伝統的工芸品産業振興法」「選挙腐敗防止法」「民事執行法の改正」「ストックオプション制度の一般化」等を議員立法で成立させ、「教育改革推進の提言」「土地・債権流動化トータルプラン」なども策定。現在、金融再生トータルプラン推進特別調査会長、定期借家権等に関する特別調査会長、商法に関する小委員長、税制調査会幹事、教育改革実施本部本部長代理、憲法調査会会長代理等。

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