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司法制度改革

“世界で一番良い制度”を作る


反町
改革の議論にあたって、保岡先生が強調されていることはどのようなことでしょうか?
    保岡
    私は常々、“世界で一番良い制度”(国際社会から理想とされる司法制度)をつくる覚悟を持っていただきたいと言っています。世界一すばらしい司法とはどのようなものか? それを実現するための戦略性やプロセスはどうあるべきか? 裁判の迅速化、法的サービスの強化、法曹養成の質・量の問題など、いろいろな角度から、あるべき司法制度の全体像を描き、その像に向けて収斂させていく道筋や方向性を明確にする。それによって、国民や国会が検討しやすいように枠組みや目標を設定する。良い制度をつくるには、基本がしっかりしていなければなりません。それをよく議論するのが審議会の使命ではないでしょうか。メンバーの方には司法改革に対する構想や実現のためのプロセスを楽しむつもりで意欲的に取り組んでいただきたいですね。
反町
全体像を描くことが課題とのことですが、具体的な答えを早急に出すべき件もあるのではありませんか?
    保岡
    やりやすいものから取り組み、司法制度改革に勢いをつけることは必要でしょう。そういう意味では、民事法律扶助制度を第一に取り上げていただきたいと考えています。現在、予算はわずか6億円くらいです。これを大幅に増やさなければなりません。そのような初年度の取り組み方が審議会の意欲と力を示します。「この審議会はすごいことをやるな」と国民が感じられるようにすることです。それによって、勢いをつけ、自民党の司法制度調査会や法務部会でバックアップして司法関係予算の抜本的拡大につながるような動きを生みたい。概算要求の期限は8月末日です。そういう大問題をすぐにやらなければならない状況にあるのです。
反町
難しい課題の中にも、緊急を要するものがありますね。
    保岡
    例えば、知的財産権の法的保護は日本の産業の生きる道であり、日本の将来にかかわる重大な問題です。ソフト関連の法制度を早く再構築しなければならない。今や、いわゆるジャパン・パッシングが起きています。日本における特許裁判は時間がかかりすぎてラチがあかない、アメリカで解決したほうが早いと、日本の裁判所を素通りするという現象が生じているとの指摘があるのです。これをどうにかしなればならない。現在、特許関連の裁判では、調査官のような形で特許庁から人が出ていますが、これを最高裁の調査官のようにするのか、裁判官の中に専門家を一人は取り入れるのか、その件に詳しい弁護士を登用する道を開くのか、方策はいろいろあるでしょう。その指針は早急に明確にすべきです。
反町
一方、審議に十分時間をかけるべき性質の内容もありますね。
    保岡
    法曹一元について言えば、昭和39年の臨時司法制度調査会の意見書でも「ひとつの望ましい制度」とされていますが、その中で「基盤となる諸条件は、いまだ整備されていない」と指摘されています。すなわち、法曹人口の飛躍的増加、弁護士の地域的分布の平均化、弁護士の職域拡大などです。法曹一元は来年度予算を拡充する民事法律扶助制度のように今日、明日にでも実行できるというわけではありません。また、一気に改革できるものでもない。ただ21世紀の司法全体の在り方を考えるうえで、裁判官任用制度の在り方を検討することは有意義でしょう。
     じっくり検討を加えるもの、大枠の考え方を決めて具体的な中身は後からつめていくもの、すぐ答えを出してスタートすべきもの、審議のテーマにもいろいろな性格があります。審議会にはまずそれを整理してもらう必要があります。


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