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官僚主導型の税制

−日本における税務行政は通達が支配しているといわれます。それはどのような理由から生じているのでしょうか?
  「わが国の税制は官僚主導型です。官僚が租税の政策企画立案の権限を実質的に握って、法が不十分なところは通達で補っている。それが現状です。実務にあたる税理士にしてみれば、通達に沿って業務をこなしていれば、争いが無いということで、それに従っているという傾向があります。
  私自身、大部分の通達は法の正しい解釈・適用をしていると思います。しかし、例えば、税収が激減したときなど、通達によって、解釈を曲げるようなことが起きる恐れは否定できないわけです。そのとき、現状では、チェックすることができないわけです。
  立法についても、実質的に官僚が政策企画立案して、国会が通すというような形を採っていました。21世紀には、官僚主導から国会主導による租税立法にしなければなりません。本来、租税立法によって行うべき部分を通達が支配しているのも、根源は今の官僚主導にあるのですから、それを是正することが、通達行政を無くしていくことにつながると思います」

−官僚主導という意味では、税の使い方についてもその面がないでしょうか?
  「納税者が主権者として、自分たちで国家の費用を共同で分担する申告納税制度という考えを採れば、その行き着くところは、分担した税金の使い道が、本当に国民の利益になっているかを監視して、もし不当な支出があれば、返してもらうということになります。私はそれが正しい税制の在り方だと思っています。そのような国民が租税の使い道までコントロールできることを、私は『真の納税者主権主義』と呼んでいます。
  なぜ日本でそのような考え方が定着していないかといえば、やはり税は国にとられるものという間違ったとらえ方をしているためでしょう。そのことが、税金は法律で決められた分だけ払っていればいい、使い方については口を出してもしょうがないという意識を生じさせたのではないでしょうか。そうではなく、自分たちが費用を分担しているという申告納税の意識をもてば、税の使い方を監視して、不当な使い方をしていれば返してもらおうということになるはずです。


  その具体的な表れが、地方税における納税者訴訟です。納税者訴訟は地方自治法に定められているもので、地方税における住民訴訟です。地方自治体で、財務の監査請求を求め、不当な支出について訴訟を起こして、その返還を求める制度です。さらにそれに基づいて、条例の制定、議会の解散、首長のリコールというように色々な制度が認められてます。国の制度では、これが法令化されていません。私は地方自治体が直接民主制だからこそ、そのような制度が可能になると思います。国の場合、全体の見地において政策にあたるので、国民が直接コントロールしにいくわけです。理想的な国家像からいえば、地方自治体のように納税者訴訟をしなくても、政治家が正しい国家の在り方を考え、きちんとした税金の使い方をすれば良いと思いますが、やはり理想と現実にはギャップが生じることがあるわけです。
  その根本には、国と地方の役割分担の問題があります。今のように何でも国がやる、税金も中央で集めて、地方にバラまけばいい、住民の生活に関する政策も国でやるといった発想では、どうしても問題が出ます。そこから改革しなければならないと思います」





 
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