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市民、企業、法律家の役割

−行政評価、行政監視の目的を達成するために、国民、市民に求められる役割についてどのようにお考えですか?
「行政評価のガイドラインや法律ができたとしても、官僚だけで、すべての面で行き届く政策評価ができるわけではありませんから、自ずから市民が一定の役割を担うことが求められます。まず市民はボランティアとして、それぞれの地域・地域のさまざまな事業や計画について、問題点を指摘していくことが大切です。それは重箱の隅をつつくというようなチェックという意識ではなく、市民が、行政の透明性、効率的な行政を進めていくうえで必要な役割をしっかり果たしていくということです」

−企業に求められる意識はどのようなことでしょうか?
「企業は行政の仕事を受注して、それを推進する側に立つこともありうるわけですが、行政評価が実施されるようになると、仕事が減るとか、仕事をするうえでさまざまな制約がかかるといった不平や不満が出てくるかもしれません。しかし、もはや税収が右肩上がりに増えていたときのように、思い切って色々な事業に税金を投入できるような時代ではありませんから、限られた税金を有効に使うには、行政評価による厳しいチェックが不可欠です。民間企業が役所の仕事を受ける際、そういう前提を認識する必要があると思います。今、具体的に議論になっているところでは、土地を売買するときの鑑定評価書の情報公開であるとか、建物を建築する際の入札予定価格の事後公表、入札に


出した積算内訳書といった書類の公表が迫られていますが、それらは効率的な行政を進めるうえで重要なことになっているのです。企業としては、そのような状況をよく承知した上で、入札や随意契約に応じる必要があると思います」

−法律家としてはどのように役割を果たすべきでしょうか?
「今や市民がどんどんレベルアップしている時代です。情報公開をめぐる裁判などでは、市民が弁護士顔負けの訴訟手続きをしているケースが全国で見られるようになっています。法律家には市民よりさらにレベルの高い役割が要求されるわけです。法律家としては、情報公開や行政監視などの問題をきちんとフォローしておいて、それに関する相談がきたら、的確に応じられるだけ
の事前の調査であるとか、準備を進めておく必要があります。
 もう一点、監査委員制度(注2)において、問題点として指摘されたようなことが無いようにすることです。これまでは行政サイドから行政評価に係る個別の監査などを依頼され、委員に選任されるようなことになると、多くの専門家たちは、自治体の首長などに対して厳しいことを言えず、なあなあの関係になってしまうようなことがあったと思います。そうではなく、高度の専門性や倫理性を要求される法律家として、行政を厳しくチェックしていくことです。市民は自分たちでできない部分について、監査委員などになってチェックしてくれるプロフェッショナルを求めている。そういう自覚が求められます」

注2.「監査委員制度」
 自治体の財務に関する事務の執行、自治体の経営に関わる事業の管理など監査する制度。首長が議会の同意を得て、優れた識見を有する者および議員のうちから選出する。

 
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