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会長インタビュー
日本公認会計士協会会長 増田  宏一  氏
日本公認会計士協会会長
増田 宏一 氏

Q

今年は、日本の公認会計士制度が60周年に当たります。

A

我が国の公認会計士制度の歴史を紐解けば、第二次世界大戦後に遡ります。当時、証券市場の民主化のため、公認会計士監査が必要だということで、大蔵省の主導の下、トップダウンで導入されました。しかし、日本には、既に大陸法の影響を強く受けた商法があったため、日本の監査法人制度が創設されたとき、基本的に監査しかやってはならないという法律上の建付けとなり、税務はできず、コンサルは限られるなど、独特のものとなりました。それは、日本の監査法人を英語でオウディット・カンパニーと言うのに対して、アメリカの公認会計士の事務所をアカウティング・ファーム、つまり会計事務所という、何でもできる総合事務所を意味する言い方をすることにも現われています。
このような独特の監査法人制度について、我々は変えるべきだと言い続けてきたのですが、日本では、いったん法律ができてしまうとそれを変えることは大変難しく、多少フレキシブルになっても、完全に変えることができません。
また、監査という我々にとっての中核業務においても、監査される側が監査する側の状況を全部決めたり、法制度上は企業ガバナンスにおいて重要な役割を果たすべき監査役が十分機能を果たせない仕組みになっていたりと、制度上の不備も解消されていない状況にあります。これは、結局のところ日本の歴史、文化、風土などを踏まえずに始まった制度だからではないかと思わずにはいられません。
そんな我が国に対して、例えばアメリカは、自分はちゃんとやっているということを利害関係者に正しく説明しなくてはならないという認識が社会一般にあり、自主的に監査を行う風土があります。
60周年に際して日本公認会計士協会では、そのような歴史、経緯も踏まえつつ、公認会計士が我が国の経済社会のために何ができるのか、今一度問い直したいと思っています。現執行部では3カ年活動計画を策定しており、自主規制の強化、国際会計基準・国際監査基準への対応、公会計分野への貢献、会計プロフェッションの育成など、日本経済に重要な意味を持つ内容を盛り込んでいます。

Q

60年経った現在、公認会計士を取り巻く経済社会の変化とはどのようなものなのでしょうか?

A

グローバル化する経済社会の中で、世界各国において会計・監査のインフラ整備が急がれています。我が国においても、グローバル化、IT化によりますます複雑化する経済社会の基盤を強くするために、また、日本市場の透明性を確保してアジアのマーケットで日本がリーダーシップを発揮するためにも、会計・監査を正しく理解し、活用できる土壌を育てていかなくてはならないと思います。会計プロフェッションたる我々公認会計士は、経済社会の重要なインフラであり、我々の持つ専門的知識を活用する機会を増やすことが、社会から期待されていると認識しています。

Q

そのような複雑化する経済社会の状況の下で、公認会計士に求められることとは?

A

公認会計士は、このような経済社会の変化を十二分に認識し、監査実務のさらなる向上を通じて財務情報の信頼性を確保し、我が国経済の健全な発展に寄与するという使命の遂行に邁進し続けなければなりません。そのためにも、会計・監査の知識に加えて、ITあるいは金融商品、公会計といった、さらなる専門分野に関する知識を持つようにしていただきたいと思います。高度化、複雑化する経済社会の中では今まで以上に専門性を持った会計士が必要と思われるからです。

Q

ここ数年、公認会計士試験の合格率は8.5%で推移していましたが、平成19年度試験の合格率は、14.8%と大幅に上昇しました。今後の公認会計士試験の合格率は、どのように推移していくのでしょうか。

A

合格率の大幅な上昇は、平成15年の公認会計士法改正に基づく公認会計士試験制度の変更によるものです。この変更は、産業界からの非常に強い要望によるものでした。経済・社会構造が大きく変化している中で、産業界では、企業内に公認会計士という専門家をおきたいという要望が高まりました。しかし当時、公認会計士はまだ非常に少なく1万7,000人くらいでしたので、希望する企業に公認会計士を手配することは出来ませんでした。そこで、社会人でも受験しやすい試験制度に変えて、もっと増やそうではないかとなり、平成30年までに5万人体制を目指すことになったのです。
そういった経緯による制度の変更でしたので、ある程度人数が増えると予想していました。今年度は予想より多かったように思いますが、来年度以降も、2,000人以上の合格者が出るのではないかと思っています。

Q

今後、2,000人以上の合格者が輩出されていくと想定されますが、合格者に根強い人気の監査法人への就職状況はどのようになっていくでしょうか。

A

就職先を監査法人だけだと考えていては、限界があります。とはいえ、2006年6月に制定された金融商品取引法により、2008年4月1日から内部統制報告制度及び四半期報告制度がスタートします。従来の財務諸表監査に加えての制度ですから、監査法人もそれなりの人数が必要となり、当面は採用していくと思います。しかし、それがずっと続くことはありません。
 前述のように今回の試験制度変更による増員は、産業界からの要望です。つまり、企業側に会計専門家が必要であるという認識が非常に強いわけです。公認会計士は、監査業務の担い手のみならず、多様化し拡大する監査業務以外の業務分野での担い手として、我が国経済社会における重要な役割を担うことが期待されています。具体的には、中核業務である監査業務で得た経験と知識をもって、監査業務以外の保証業務、税務業務やコンサルティング、アドバイザリー業務に従事し、あるいは公的分野での会計監査の諸基準の開発に関与し、又は企業内や教育機関で活躍すること、さらには、これらの分野で培った経験と知識をもって監査業務に回帰してくることが望まれます。
監査法人以外の企業あるいは自治体と公認会計士の活躍の場は広がっています。これからは、就職先も視野を広げて考える必要があるでしょう。

Q

一企業、一個人の利益の追求ではなく、常に公共の利益(パブリックインタレスト)を考える公認会計士として、近年増加傾向にある社会人合格者に期待することをお聞かせください。

A

社会人合格者の多くは、企業内でその専門性を生かした業務を担当することと思います。その際、当然、自分が属する組織のことを考えなくてはいけないのですが、それと同時に社会のことも考えて欲しいのです。例えば、いったん組織に入ると、組織に巻き込まれてしまいがちですが、公認会計士として本来あるべき姿をきちんと自分で見据え、社会的公正や透明性を求められていることを自覚し、意識してやっていただきたい。そのような公認会計士の自覚が、不祥事に対する一つの歯止めになると思います。公認会計士は、そのような気概を持ってやるべきだと思いますし、社会はこのような役割を期待しているのだと思います。

Q

公認会計士を目指している方に、持って欲しい志とは何か、メッセージをお願いします。

A

何事もまずは、パブリックインタレスト(公共の利益)を考え、行動していただきたいと思います。
経済社会が複雑化する中、会計・監査のプロたる公認会計士には、これまでにも増して高度なスキルや多くの知識が求められます。ITをはじめとした急速な技術革新に対応できないプロフェッションは、社会のニーズに対応することができず、社会的存在基盤自体も失いかねません。公認会計士は、技術的進歩の動向にも目を配り、日々の研鑽を通じ、常に最新知識と技術を習得し、その業務の改善に努めなければならないのです。
また、公認会計士は世界共通語の数字を言語とする仕事ですので、グローバルな視点を持つことも必要です。世界を舞台に活躍する公認会計士が多数輩出されることを期待しています。

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