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若手育成・定着のためのITパスポートの活用法

2025.6.27

今回は、多数のIT導入・DX推進プロジェクトと企業研修を手がけ、人材育成の現場を熟知している黒川貴弘講師に、深刻な人手不足の中で若手人材をどう育成・定着させるか、そしてITパスポートがなぜ効果的な解決策となるのかについて詳しくお話を伺いました。
目次

人手不足時代における戦略的人材投資とは

現在の企業が直面している人材課題について教えてください



黒川講師: 現代の日本企業は、避けることのできない構造的な課題に直面しています。その一つが、生産年齢人口の減少です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、この人口は2030年には6,773万人にまで減少すると予測されており、長期的な労働力不足は避けられません。
このマクロな動向は、既に各企業の経営に具体的な影響を及ぼし始めています。帝国データバンクの調査(2024年4月)では、52.1%の企業が正社員の人手不足を実感していると回答しており、人材獲得競争の激化は明らかです。このような環境下では、新規採用の難易度が上がるだけでなく、既存社員、特に将来を担う若手人材の育成と定着が、企業の持続的成長における最重要課題となります。

従来の若手育成手法にはどのような課題がありますか?



黒川講師: 多くの企業で、従来の育成手法がうまく機能しなくなっているという声が聞かれます。その背景には、若手社員の価値観の変化と、旧来の育成システムのミスマッチが存在します。
終身雇用が前提ではなくなった現代において、若手社員は企業への帰属意識よりも、自らの市場価値を高める「キャリア自律」への関心を強く持っています。彼らが職場に求めるのは、安定だけでなく、自身の専門性やスキルを高められる「成長環境」です。

OJTについてはいかがでしょうか?



黒川講師: かつて有効とされた「OJT(On-the-Job Training)」も、その効果を発揮しづらくなっています。業務の複雑化や人手不足により、指導役である先輩社員自身が余裕を失い、体系的な指導を行うことが困難になっているケースが少なくありません。
結果として、若手社員は「この会社にいても成長できない」と感じ、早期離職を選択するリスクが高まります。実際に、若年層の離職理由の上位には、常に「仕事を通じた成長実感の欠如」や「キャリアパスの不透明さ」が挙げられており、育成機会の不足が直接的に人材流出に繋がっていることが分かります。


DX推進における課題についても教えてください



黒川講師: 人材育成と並行して、多くの企業が取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)にも、見えない壁が存在します。それは、社員間のITリテラシーの格差です。
例えば、若手社員が最新のクラウド関連のツール導入を提案しても、管理部門がクラウド技術のリスクを正しく理解できなければ、承認プロセスは停滞します。こうした部門間の「共通言語」の欠如が、全社的なデジタル化の足かせとなっているのです。
この課題を解決するためには、承認をする側の管理部門のITリテラシーを一定水準まで引き上げる、全社的な取り組みが前提です。そのうえで、若手社員側としても管理部門に対して「わかりやすい提案」をする必要も発生します。せっかくの若手のアイデアをつぶさないためにも、若手社員の提案力が向上するようにサポートしてあげたいですね。


これらの課題に対して、ITパスポートがなぜ有効なのでしょうか?



黒川講師: ITパスポートの有効性は、その応募者数の推移にも表れています。主催団体であるIPA(情報処理推進機構)によれば、応募者数は近年急増し、2023年度には年間25万人を突破しました。特に社会人の割合が増加していることは、ITパスポートがビジネスパーソンの必須教養として社会的に認知されつつあることを示唆しています。
ITパスポートが優れている点は、特定の技術に偏らず、ビジネスに必要なIT知識を体系的に網羅していることです。


具体的にはどのような内容を学ぶのでしょうか?



黒川講師: ITパスポートは3つの分野で構成されています。
ストラテジ系(経営全般)では、経営戦略や法務など、ITをビジネスにどう活かすかという視点を学びます。マネジメント系(IT管理)では、プロジェクト管理や情報セキュリティなど、ITをどう管理・運用するかという視点。そしてテクノロジ系(IT技術)では、AIやネットワークなど、ITそのものの仕組みに関する基礎知識を身に付けます。
この3分野を学ぶことは、ビジネスにおけるバランスが取れた知識の土台を作るということです。これが社員に実践されて初めて、デジタル活用などが、全社でスムーズに機能するのです。


企業での導入はどのように進めるべきでしょうか?



黒川講師: 企業におけるITパスポート試験の合格支援は、単なる福利厚生ではなく、企業の未来を創る「戦略的投資」と位置づけるべきです。
IPA(情報処理推進機構)の「DX白書2023」では、DXに本格的に取り組む企業は、そうでない企業に比べて営業利益の増加率が高い傾向にあることが示されています。さらに同じくIPAの「DX動向2024」では、効率化や生産性だけではなく、DXの成果が出ている企業の方が新たな価値創造を目的としたデータ利活用が進んでいる状況が示されており、より高度な価値を作り上げる段階に達しはじめていることがわかります。
そして、DX推進の成否を分ける最大の要因は「人材」です。全社的なITリテラシー向上への投資は、将来的な業績向上に繋がる可能性が高いと言えます。


具体的な導入ステップを教えてください



黒川講師: 効果的な導入のためには、以下のようなステップが考えられます。
まず対象者の設定です。新人研修や2、3年目の若手社員への組み込みは特に効果が高いですが、もちろん全社員を対象とすることも有効です。
次に学習環境の提供。eラーニングや集合研修など、社員が学習しやすい環境を会社として提供します。
そしてインセンティブの導入。受験料補助や合格一時金に加え、資格手当としての賃金アップは、社員のモチベーションを大きく向上させます。


資格手当についてはコスト面での懸念もありそうですが



黒川講師: 月額数千円の資格手当は、一見するとコスト増に思えるかもしれません。しかし、これにより社員のスキルとエンゲージメントが向上し、離職率が低下するのであれば、一人の社員を採用・再教育するためにかかる数百万単位のコストを削減できる、極めて費用対効果の高い投資と評価できるでしょう。

ITパスポート活用によってどのような効果が期待できるでしょうか?




黒川講師: ITパスポートの戦略的活用は、企業に明確なリターンをもたらします。
まず生産性の向上です。社員のITリテラシーが向上することで、ツールの利活用が進み、業務効率が改善します。また、情報セキュリティへの意識統一は、インシデント発生リスクを低減させ、事業継続性を高めます。
次に従業員エンゲージメントの向上。米ギャラップ社などの調査では、従業員エンゲージメント(仕事への熱意)と企業の業績には強い相関関係があることが知られています。会社が「成長機会」と「公正な評価(報酬)」を提供することは、エンゲージメントを高め、自律的に行動する人材を育てる上で不可欠です。
そしてDX推進における「人材不足」への直接的アプローチ。DX推進の最大の課題として挙げられるのは「人材の量・質の不足」です。ITパスポートの資格取得支援の全社的な取得推進は、この根深い課題に対し、すべての企業が今日から取り組める、直接的かつ現実的な解決策と言えるでしょう。


最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします



黒川講師: 若手社員の育成と定着、そして全社的な生産性向上は、もはや精神論や場当たり的な施策で達成できるものではありません。客観的な指標(国家資格)を目標として設定し、学習環境を整え、その成果に報いる。この論理的で体系的な仕組みを構築することこそが、持続可能な人材育成戦略の第一歩となります。

執筆者情報



黒川 貴弘(くろかわ たかひろ)

株式会社拠り所 代表取締役
株式会社フロントビジョン 取締役
株式会社AtFilm 顧問
LEC東京リーガルマインド講師

大学在学中に中小企業診断士資格に合格。システムエンジニアとして6年間勤務後、2011年に独立起業。IT導入・DX推進プロジェクトを多数行いながら、IT系企業研修、大学講師、資格取得予備校講師を拝命。その他、自社ブランドのキャンプ用品開発・販売やコーヒー豆の焙煎・販売なども手掛けている。

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