リスキリングとITパスポートで得られるスキル
2025.6.27

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DX時代に求められる人材育成の鍵とは
今回は、IT導入・DX推進プロジェクトを数多く手がけ、企業研修講師としても活躍されている黒川貴弘講師にお話を伺いました。デジタル技術の急速な発展により変化する企業環境の中で、従業員のリスキリングがなぜ重要なのか、そしてITパスポート試験がどのような役割を果たすのかについて詳しく語っていただきました。
なぜ今、リスキリングが重要なのでしょうか?
黒川講師: 現代は第4次産業革命の真っ只中にあり、AIをはじめとするデジタル技術の急速な発展と浸透が進んでいます。このような中で、企業が置かれている状況の変化も激しくなっているんです。労働人口が減少に向かう中で、働き手が少ない状況で高い付加価値の創出が求められています。そこで自然と求められるのが、一人ひとりの従業員が高い付加価値を生み出す生産性向上です。
それを実現するために欠かせないのが従業員の育成であり、リスキリングという取り組みなんです。
リスキリングの背景にはどのような変化があるのでしょうか?
黒川講師: リスキリングの重要性が高まっている背景には、デジタル技術の急速な発展と浸透があります。従来までのスキルに加えて、デジタル技術を使いこなすための知識や能力が広い世代・広い職種で求められるようになりました。これまでデジタル技術やITとは無縁だった人たちも、デジタル技術の活用が求められるのです。そのため、IT分野のリスキリングは最重要と呼べるでしょう。
リスキリングによって、従業員が新たなスキルを身に付けることができれば、企業側のメリットも大きく、新たな時代に対応できるようにビジネスチャンスを捉えられるようになります。
IT分野のリスキリングにおいて、なぜITパスポート試験が有効なのでしょうか?
黒川講師: IT分野のリスキリングで求められるスキルを、最も手軽でかつ体系的、そして効率的に学べるのがITパスポート試験の試験対策学習だからです。ITパスポートはITに関する幅広い基礎的な知識を横断的に学習するため、特定分野への偏りがなくITのベースを作るという意味では最適なんです。
技術的に深く難しい内容までは踏み込まないので、若手だけでなく、50代・60代のシニア層でITはちょっと苦手という方でも無理なく学習可能です。
ITパスポート試験の具体的な内容について教えてください
黒川講師: ITパスポートは、ストラテジ・マネジメント・テクノロジの3分野構成となっています。企業内でのIT戦略を意識しつつ、技術の内容や、IT導入する際のプロジェクト管理の手法などまで学べます。基礎的な知識といえども、かなり実践的なんです。
特に最近の傾向では、生成AIなどの機械学習分野もよく出題され、現代の技術トレンドが積極的に出題されるので、時代に合わせた対策につながります。
企業側からの評価や活用方法はいかがでしょうか?
黒川講師: ITパスポートは学習して終わりではなく、資格試験という位置づけなので、試験を受験してもらうことで合否が明確になります。そのため、知識・スキルの習得度合いの管理が実施しやすいんです。これを従業員のキャリア形成への指標として使うことも可能ですし、企業全体のデジタル化への達成度の指標として捉えることもできます。
企業でのリスキリング推進において、どのような課題がありますか?
黒川講師: リスキリングそのものや、ITパスポートなどの資格取得を従業員の個人任せにするだけでは、なかなか思ったようには進みません。単に資格報奨金制度を作るだけでは効果が出ないんです。そこで企業側として習得してほしい知識・スキルを明確に伝え、支援していく取り組みが重要となります。
効果的な研修方法について教えてください
黒川講師: 集合研修を行うことで、受講者同士のコミュニケーションが生まれます。普段交わらない人同士でグループワークをしてもらうことも、そのきっかけとなります。それが通常業務でもプラスに働くことにつながりますし、知識の情報交換によりリスキリングの浸透度合いも上がります。
また、オンラインでの学習を取り入れることも、受講者の多様な学習スタイルに合わせる意味では重要です。昨今ではe-ラーニング向けのプラットフォームやコンテンツが充実していますので、便利で快適なサービスも多く存在します。e-ラーニングを採用することで、一人ひとりの学習状況などもリアルタイムで把握できるシステムもあります。
リスキリングをより良く進めるためのポイントは何でしょうか?
黒川講師: まず、企業として何のために実施するのか、何を目指しているのかを明確にする必要があります。従業員がデジタル技術を身に付けて、リスキリングに成功していることは企業イメージ向上にも業績向上にもつながりますが、具体的にどのような状況を求めているか明確にしたうえで推進することが重要となります。
次に、従業員が求めていることは何なのかもしっかりとヒアリングやアンケートなどを取ってみることも必要です。統計的な内容だけでなく、一人ひとりのキャリアプランなども把握することも大事です。その上でリスキリングをサポートしていきましょう。
そして、インセンティブや評価をしっかり行うことで、従業員側の態度やモチベーションに影響を与えます。企業全体の費用対効果を考えながら、効果的な制度を打ち出すようにして、積極的に取り組んでいくことが重要です。
最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします
黒川講師: リスキリングは、企業の成長に不可欠な取り組みです。リスキリングプログラムを構築し、従業員の成長を支援することで、企業全体の競争力強化、時代に合わせた戦略構築への第一歩につなげていきましょう。
執筆者情報
黒川 貴弘(くろかわ たかひろ)
株式会社拠り所 代表取締役
株式会社フロントビジョン 取締役
株式会社AtFilm 顧問
LEC東京リーガルマインド講師
大学在学中に中小企業診断士資格に合格。システムエンジニアとして6年間勤務後、2011年に独立起業。IT導入・DX推進プロジェクトを多数行いながら、IT系企業研修、大学講師、資格取得予備校講師を拝命。その他、自社ブランドのキャンプ用品開発・販売やコーヒー豆の焙煎・販売なども手掛けている。
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