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特別寄稿
さようなら20世紀(1)
――残り500日のあいだに
株式会社インサイダー代表 高野 孟 氏

★ 市場の世紀 ★


 20世紀はさらに,市場の世紀であった.イチバは大昔からあったが,シジョウは国民 国家と鶏と卵の関係にある.本格的かつ典型的な市場経済社会が生まれたのは産業革命 後のイギリスであり,それが国民国家と共にその経済的インフラストラクチャーとして 広まった.
 原材料や農工業製品など生活財も労働も金融も,基本的に市場を通じて適正に配分さ れうるとする市場原理に対して,
それがしばしば不可測の暴力的な結果をもたらすこと を指摘して,人間の理性による計画的な配分の優位性を主張したのがマルクス主義だが, それを具現化するための実験は,ロシア革命(1917)からソ連邦解体(1990)の73年 間をかけて,肥大化した官僚機構による戦時もしくは準戦時的な総動員経済の一変種を 生んだだけで終わった.


 とはいえ,市場が万能であることが証明されたのかと言えばそんなことはなく,例え ばレーガノミックスの落とし子である金融の自由化と電子的グローバル化の結果,98年 の外国為替取引は550 兆ドルで,現実の物・サービスの取引の40倍に達するといった モノとカネの乖離が激しく進行し,その動きはもはや誰もコントロールできずに思わぬ 時と場所で実体経済を攪乱するようにさえなっている.市場の暴力性は極限にまで進み つつあり, それを経済外の例えば国家による規制によって抑さえ込もうとする努力はた ぶん空しいものとなるはずで,では経済の内からそれを自律的に制御するような新しい 原理はあり得るのかというのがテーマとなるだろう.
 それは,経済はますます国境を超えていくが,政治はまだまだ国境を超えられないと いう,国民国家時代末期の大矛盾の一部であり,EU統合はその答えを見出そうとする21 世紀的な実験であることは疑いない.

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