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特別寄稿
さようなら20世紀(1)
――残り500日のあいだに
株式会社インサイダー代表 高野 孟 氏

★ 石油と化学の世紀 ★


 19世紀までは石炭の時代で,20世紀は石油の時代である.2つの大戦が,一面では, 大国による石油資源争奪戦であり,その結果最後に立ち現れた両超大国が,共に世界有 数の石油生産・消費大国だったのは偶然ではない.武力を持つ者は石油を制するという のが,20世紀を貫いた原理の1つで,95年の統計で,米国のエネルギー消費は石油換算 21億1500万トンで世界シェア25.8%,それを筆頭に中国,ロシア,日本,ドイツと続 き, その5カ国で世界が使う総エネルギーの53.7%を使ってしまっているのが,この世 紀の結末である.
 ケネス・ボールディングが指摘したように,人類が火を焚くようになってから1960年 までに使った全エネルギーと,それから10年間に燃やした石油を主とするエネルギーの 量は等しいとすると,それから今までの30年間にまたそれと同じ分くらい燃やしている のは確実で,それこそが自然の摂理を無視した過剰・放埒・傲慢を表象する.


 20世紀はまた化学の世紀である.産業としての石炭化学が始まったのは今世紀初めの ドイツで,それはナチスの毒ガス兵器開発と結びついて発達を遂げ,それを打ち破りつ つ半世紀前に石油化学の時代の扉を開いたのは米国である.以来,人工的に合成された 化学物質は数千万種類に及び,それらは確かに生活の利便を向上させるのに大いに貢献 したとはいえ,本当のところ生命にどんな破滅的な影響を及ぼすのか分からないままに, 今なお生産され消費され続けている.  20世紀は,地球生命体がかつてない危機にまで追い詰められた環境破壊の世紀でもあ ったが,その主な原因が石油そのものとそこから生まれる化学物質の大量使用にあるこ とは疑いがない.ところがそれを実際に大量使用しているのは,トップ5カ国で全エネ ルギーの半分以上を使っっているという上記数字が示すように,ごく一部の大国であり, 圧倒的多数の第3世界諸国はその恩恵にあずかれないまま,しかし地球環境の悪化の影 響だけはまことに平等に降りかかってくるという形で,20世紀のもう1つの問題である 南北格差を一層深刻にしている.

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