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大臣がト書き通りに『演技』するか

―かつて浜田先生は大蔵官僚として、そのような現場をよくご覧になっていたわけですね?
 「昔、私は大蔵省にいまして、国会議員の面倒をみていました。『面倒をみる』という言い方は役人的な物言いですが(笑い)。
 大蔵省の中で国会に対応するセクションは大臣官房文書課です。私もそこで若い頃、見習いの役人として苦労した経験があります。官僚は法律案や予算案を提出すると、委員会の質疑を乗り越えるために、野党の質問者を集中的にカバーして、質問の内容をとるわけです。
翌日、委員会が開催されるとなると、夜中までかかって質問をとって、夜明けまでに回答を準備する。翌朝、大臣が出勤してくると、すでに机の上には、『今日は野党の委員からこういう質問が出てきますから、これにはこう答えてください』という想定問答、いわばト書きがきちんと準備されているわけです。
 しかも、役人は大臣がそのト書き通りに『演技』するかどうか不安なものですから、風呂敷包みを抱えて、大臣の見張りのために国会について行く。そして大臣がヘマをしそうになると、


すかさず後ろからメモを渡します。そのメモの出し方が上手な人が役人として出世する(笑い)なり戯画的に言うなら、そういうことが行われているわけです。  しかも、これまでは少し難しいことになると、法案を作成した側である役所の局長クラスの役人が政府委員という立場で答弁していたわけです。これでは自問自答と同じで、ほとんど意味がありません。  私が政界に転じる決意をした動機のひとつとして、そのような立法府と行政府の関係を目の当たりにしたという体験がありました」 



 
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