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土地の境界紛争解決を担うスペシャリスト・土地家屋調査士

西本 孔昭氏 日本土地家屋調査士会連合会名誉会長/土地家屋調査士/土地区画整理士

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

土地家屋調査士の多種多様な業務の中でも、土地の境界の確認、発見を目的とする事案は相当数に上り、その中には紛争性のあるものや紛争手前のものは多数存在している。土地の境界紛争は、隣接の所有者間で感情的対立が深刻化す
るなど、解決が困難となる場合が決して少なくないので、感情的対立が根深いものになる前に解決が望まれることから、土地家屋調査士がその専門知識を活かしつつ筆界特定登記官を補佐して事案にあたる筆界特定制度や他の法律専門職等とともに行う裁判外紛争解決手続(ADR)等がある。これまでそれら境界紛争解決手段の整備に取り組まれてきている、日本土地家屋調査士会連合会名誉会長・愛知県土地家屋調査士会最高顧問の西本氏に、土地家屋調査士の展望についてうかがった。


■ 描いていた夢よりもよいかたちになった

反町

土地家屋調査士は、司法制度改革を経て、知見を活かした業務が広がっており、魅力が増している法律専門職です。

西本 孔昭氏 日本土地家屋調査士会連合会名誉会長/土地家屋調査士/土地区画整理士

西本

司法制度改革を経て、隣接法律専門職と称される者は、大なり小なり意識改革を迫られました。われわれ土地家屋調査士も例外ではなく、それを受けて各種研修の機会を多く設け、いかに対処していくべきかを考え、話し合い、述べて参りました。現在は、司法制度改革全般を広く理解した上で、将来的に望まれる法律専門職の一員として、能力の向上に研鑽を重ねています。

反町

西本先生は、開業して46年目を迎えられましたが、長年にわたって土地家屋調査士業界をご覧になってきていかがでしょうか。

西本

土地家屋調査士の業務を通して社会を眺めていますと、かつて専門家・専門職を目指してコツコツと努力を重ねる人達が、ありとあらゆるところに溢れていたものですが、二度のオイルショックとバブル崩壊を経て、ふと気がつくと、専門技術者を育成して応援することに社会が熱心でなくなったように思います。もう一つの現象として、町内のことは何でも知っている、山へ入れば山のことは何でも知っているといった、町の知恵袋としての長老が減って、郊外の森林が荒れて境界が分からなくなることがままあり、それによる紛争が発生しています。

西本孔昭氏、反町勝夫対談

反町

西本先生は、土地家屋調査士の知見を活かせる新しい業務のひとつであるADRについて、積極的な取り組みされてきています。

西本

土地家屋調査士は、長年、裁判所の筆界(※1)鑑定に取り組んできています。したがって、境界の紛争においては、唯一の専門家である土地家屋調査士がもっと深く関与できるのではないかと考えていました。そこで、われわれは、昭和61年から本格的に取り組み始め、全国で鑑定委員会を立ち上げるといった活動を展開してきました。私自身も、昭和62年に愛知県で基礎研究のための準備委員会をスタートさせ、平成2年にはその初代委員長に就任して、4年間務めました。当時から、「専門の訴訟には専門家が関与することは当然であり、むしろ解決をリードすべきである」と主張していました。さらに「境界訴訟においては、土地家屋調査士による意見書を付けるところまでもっていかなければならない」と号令をかけながら、法務省の研究会に参画したり、司法制度改革の議論へ提言したりといった運動を展開してきました。

反町

弁護士と協力し、相談センターもつくられました。

西本

弁護士とともに温かい民間型の相談センターをつくろうと立ち上がり、まず、私の地元・名古屋で全国最初の境界問題相談センターをつくり、その後すぐに大阪・東京と続いて立ち上がり、現在、36(2009年8月31日現在)の土地家屋調査士会がセンターを立ち上げています。
先ほど述べました通り、取り組み始めたころは、「いつの日か、境界訴訟を起こすときには土地家屋調査士会の筆界鑑定委員会の意見書を付けるかたちにしたい」という夢を描いていたのですが、その夢よりもよいかたちになっています。

■ 筆界特定制度、ADR、裁判と、機能的な連携を図る

反町

平成17年の不動産登記法改正によって平成18年にスタートした筆界特定制度(※2)の経過はいかがでしょうか。

西本

各法務局・地方法務局に配された筆界特定登記官が正しい筆界を探査・特定する筆界特定制度は、境界紛争を解決する有効な手段のひとつとなっており、即紛争解決に直結しない場合でも、論点整理と解決の糸口を見出すことは容易となり得ます。この筆界特定制度は、弁護士協働型調査士会ADRとともに、不動産登記に自浄能力を与え、関係する人々にそのメンテナンスの重要性を説く、極めて重要な手法です。両方がうまく協力し合ってこそ制度も安定します。

反町

筆界特定制度とADRは、やはり裁判とは違うのでしょうか。

西本 孔昭氏 日本土地家屋調査士会連合会名誉会長/土地家屋調査士/土地区画整理士

西本

まず、筆界特定制度とADRは現場が重視してもらえる可能性が高いという点で違います。裁判では双方どちらの弁護士も現場に来ず、よっぽど鑑定人から言われなければ裁判官もきません。しかし、筆界特定もADRであれば、現場で考え、当事者の言うことも現場で聞いて、食い違う理由や、食い違いの程度なども良く理解できると思います。
また、裁判は、白黒をつけるのに最高の手段であっても、判決の結果を登記に反映し切れなかったり、近隣へのしこりが残ったりしかねないのに対し、ADRは、紛争当事者と専門家が協力することで、裁判よりスピーディに問題を解決でき、極力遺恨が尾を引かないようにすることもできるという違いがあります。もちろん、境界紛争の中には裁判という手法が適しているものがあります。筆界特定制度、ADR、裁判と、機能的な連携を図ることで、より国民に役立つようにしなくてはなりません。

反町

業務が拡がっている土地家屋調査士のあり方についてお聞かせください。

西本

新しいステップを踏み出したということは、それだけ基本に忠実に、与えられた能力ではなく、開発した能力にそぐわなくてはなりません。紛争の中に入っていく上で、当事者としてそれを解決するにふさわしい人かどうか、ということがより問われていると思います。測量で解決する問題にしても、少し前まで要求されていたものよりはるかに精度の高い測量が求められます。自らの能力向上、環境整備に努めると同時に、従来からある業務も大切にしていかなければならないと思います。

反町

西本先生には、是非、土地家屋調査士を発展させるべく、リーダーシップを発揮されることを期待しております。本日はご多忙のところありがとうございました。

※1 筆界:登録された、地番の境。公法上の境界。

※2 筆界特定制度:筆界不明のとき、それを特定する制度。土地の所有権者が、意見と資料を添えて法務局に申請すると、筆界特定登記官が、外部の専門調査員(主として、土地家屋調査士)の現地調査の結果に基づき、筆界を特定する。2005年4月の不動産登記法の改正により導入し、2006年1月施行された。

≪ご経歴≫

日本土地家屋調査士会連合会名誉会長/土地家屋調査士/土地区画整理士
西本 孔昭(にしもと よしあき)
1963年土地家屋調査士登録後、愛知県土地家屋調査士会会長、日本土地家屋調査士会連合会会長、法制審議会不動産登記法部会委員などの要職を歴任し、現在、日本土地家屋調査士会連合会名誉会長。著書に、『筆界特定制度と調査会ADR』(編著/日本加除出版・2007)、『Q&A表示登記実務マニュアル』(編集代表/新日本法規出版・2006)、『不動産境界入門―境界トラブルを避ける方法』(共著/住宅新報社・2007)、『登記所が現地と登記に符合する地図を整う灯を消さないで』(日本加除出版・2009)ほか多数。

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