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向上心をサポートする教育環境の整備を

藤末 健三氏 早稲田大学客員教授/参議院議員

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

これまで数々の難関試験を突破し、通産省(現・経済産業省)の官僚を経て、参議院議員に当選してからも早稲田大学大学院の博士課程に在学して勉強を続けている藤末健三氏は、生涯学習の必要性と学びたいときに学べる環境整備を訴える。


■ 社会人になってからの勉強にこそ意味がある

反町

藤末さんが勉強を継続的に始めるようになったのには何かきっかけがあるのでしょうか。

藤末 健三氏 早稲田大学客員教授/参議院議員

藤末

通産省(現・経済産業省)に入省したとき、まわりは東大法学部出身で経済職の試験で1位とか、法律職の試験で2位とかいう人たちばかりだったことから、そういう人たちに負けまいと勉強を始めたのがきっかけです。勉強を始めてからは、自信もついてきて、圧倒されるようなことはなくなりました。

反町

そういうものです。暗記ばかりの試験勉強だけでは、なかなか応用は利きません。暗記では、体系的に考える力が身につきませんから。藤末先生のように、社会人になって始める勉強は、実際社会に出て社会で必要だと思ったものですから、本当に身になります。

藤末

そうですね。仕事は、はじめこそコピー取りや資料配りなどの下働きばかりでしたが、当時の通産省は現場の権限が強かったこともあり、勉強したことを役立てられる仕事をする機会が次第に増えてきました。スーパーコンピュータの日米交渉にあたったり、環境政策課で法案作りをしたりと、休みも半年間で二日しかとれないほど忙しい状態になった中、英語を読む機会が増えたこと、視野を広げてさらに力をつけたいと思ったことから、留学したいと考えるようになりました。実はその時点で、留学するための省内規程での年齢制限をすでに超えていたのですが、上司と人事に掛け合って、マサチューセッツ工科大学(MIT)の経営大学院留学もさせていただきました。
こうして自分の人生を振り返ってみると、学生のころよりも社会人になってからの方が勉強しています。私の経験から申しますと、社会人になってから勉強するのが最も意味があるように思います。

反町

藤末さんは、今なお大学院で学ばれていますが、政策や法案づくりに役立てていらっしゃるのでしょうか。

藤末 健三氏、反町 勝夫対談

藤末

さまざまな局面で、これまでに身につけた知識や理論は役立っていると思います。政権交代になってからは離れていますが、高校の授業を無料化する法案を作る担当でした。将来的には、学びたいときにすぐ学べる環境づくりの一環で、大学、大学院ももっと学びたい人に対して門戸を広げられるようにできればと思います。その代わり、きちんと勉強しないと卒業できないようにするのです。私の母は、72歳で大学に通っています。大人になってから改めて勉強したいという人には、もっともっと学ぶ機会を提供していかなくてはいけないと思います。

反町

ずっと働きながら学ばれてきたので、説得力があります。

藤末

大学にはさまざまな学問があり、それはそれで必要ですが、御社のような、資格取得のための勉強ができる、専門的知識を身につけられる教育システムも必要です。子ども手当てなど子どもの教育の議論が盛んですが、生涯教育についてもっと議論すべきです。

■ 学ぶ機会は平等に

反町

昨今の大学生の就職難は、大不況によるところが大きいですが、せっかく大学で勉強しても、身につけたことが社会に出てあまり役に立たない、仕事に結びつきにくい側面があることについても、ぜひご検討いただきたいと思います。

藤末 健三氏 早稲田大学客員教授/参議院議員

藤末

私としては、負け組・勝ち組といったものがあってはならないと考えています。常に自分が向上できるときに向上できるようにし、教育の機会を平等にしなくてはならないと思います。

反町

勉強したいときに勉強する場があるかないかは大事です。勉強できる場を使うか使わないかで勝ち負けがつくようにすべきです。また、お金のあるなしで教育の機会が制限されるようなことがあってはならないということにも留意すべきです。

藤末

おっしゃるとおりです。例えば、法科大学院については、学費がかかる上、社会人は会社を辞めなくてはならないことがままあり、合格率も低くて受かるかどうかわからないといった状況で、二の足を踏む制度になっています。

反町

予備試験(※)という、働きながらでも法曹を目指しやすい制度がスタートします。

藤末

さまざまな分野から法曹を輩出させるという目的を踏まえ、社会人が法曹を目指しやすい制度は必要です。

反町

創業以来ずっと司法試験対策講座を取り扱っている弊社は、今後も働きながら法曹を目指す方をバックアップしていけるようにしたてまいりたいと思っています。藤末先生には、誰もが勉強したいときに勉強できる制度、環境づくりにお取り組みいただきたいと思います。本日はありがとうございました。

(※)予備試験:これまで、新司法試験の受験資格を得るには、原則として2年ないしは3年間法科大学院で学習し所定の単位をすべて取得するほかありませんでした。しかし、2011年からは、司法試験予備試験(以下、予備試験)に合格すれば、法科大学院を修了していなくとも新司法試験の受験資格を得ることができるようになります。予備試験が導入されることにより、社会人の方もお仕事を続けながら法曹を目指すことができ、旧司法試験受験生の方は、従来の受験勉強を活用できます。また、学費の節約になるほか、時間の面でも大きなメリットがあります。

≪ご経歴≫

早稲田大学客員教授/参議院議員
藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
参議院議員。1986年東京工業大学卒業、通商産業省(現・経済産業省)入省。1994年アメリカ留学後、マサチューセッツ工科大学ハーバード大学両校で修士号取得。1999年東京大学講師、翌年東京大学助教授就任、東京工業大学で博士号取得。2004年参議院議員(全国比例)当選。2005年早稲田大学客員教授就任、清華大学(中国・北京)客員教授就任(現在顧問)。現在、参議院議員、予算委員会理事。

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