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日本の民法の立ち遅れ


今後、さらに必要と思われる法の整備についてお聞きしたいと思います。
    額田
    「中身に関していえば、法案の内容が財産管理面に片寄っていることがあげられます。これを身上監護、生活面の配慮にもっと目を向けた制度にしていかなければならないでしょう。
     大きな枠組みとしては、従来の行為能力制限の発想から抜け出して、必要な範囲で必要な支援をするという発想に切り替える必要があります。たんに能力で、支援の内容を縦割りに決めるのではなく、個々の状況を見て、必要な範囲で、どういった援助をするのか。代理権だけでいいのか、取消権まで必要なのか、状況に応じて細かく見ていくことができるような制度にすべきです。
     また最後的な責任を国が負うという国家後見の制度作りが必要になると思います。
     非常に気難しくて、普通の方法では対処できない高齢者がいたり、家族の軋轢がきわめて激しいといったケースで、後見人個人の責任に帰させても、難しいケースがあるはずです。場所によっては、担い手になるボランティアを集めることさえままならないようなこともあるでしょう。そのような可能性まで考慮して、公的機関が後見を引き受ける最後の受け皿となる制度を用意しておかなければなりません。
     国が最後の受け皿になるというのはフランスやドイツの制度にもありますが、アメリカやカナダには、より積極的に後見を要するとみられる高齢者がいて、悪質な消費者被害に遭いそうであれば、後見にかかわる公的な機関が自分を後見人に選任してほしいと申し立てられるような制度があります。
     また現在、イギリスでは、後見制度に虐待防止制度をつけて、行政機関に施設や家庭への立ち入り調査権を認めるような法案が検討されています。法的手当てがないと、虐待が行われている可能性がある施設があっても、その裏づけ調査が必要になったとき、法的根拠がないため、立ち入ることさえできない可能性があるわけです」

日本の法制度には立ち遅れている部分があると。
    額田
    「今回、禁治産・準禁治産の二段階しかなかった制度を滑らかにしましたが、それはフランスでは30年前に行っていることです。カナダでは、任意後見と法定後見を並列的にして、それぞれに財産面と身上面に区分けできる法制度を1992年に完成させているのですから、これと比べても、日本の制度は特に進歩的とはいえないでしょう。そもそも日本の民法は成立してから100年も経って、基本的には制定当時のままです。その原形は19世紀初頭のナポレオン法典を参考にしたもので、それが脈々と21世紀まで続こうというのですから(笑)」

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