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“援助の必要性”という判断基準


審議された法案の内容は、どのように評価されていますか?
    額田
    「これまでの日本の成年の後見制度は禁治産か準禁治産しかなく、非常に硬直的であると指摘されてきました。人の能力はさまざまです。いくつもの段階があるはずなのに、二つのいずれかで我慢しろという制度です。それが今回の改正で修正されます。いわば二段だった階段に、なめらかなスロープをつけるようにした。
     補助の制度ができたわけですが、これは限り無く保佐に近づけることができます。
     準禁治産に相当するほど判断力が低下しているわけではないが、十分な判断力はない。そういう人が悪徳業者につけ込まれて、不利益な取り引きをさせられるような事例があるわけです。
     この補助の制度はきわめて弾力的に運用できます。取消権・同意権・代理権の範囲を当事者側が選べる。よけいなお仕着せもない。当事者が申し立ててきた範囲で、裁判所が決めるという非常に柔軟なものです。
     今ままでの禁治産・準禁治産宣告では、判断力がこの程度なら、この制度というふうに、判断能力のみを基準にして段階づけをしていましたが、それに加えて、別の角度、つまり、“援助の必要性”という判断基準をとり入れました。これは画期的な理論といえます。これは私たちが大陸系の後見法として、もっとも進んでいるとみなしているドイツの法制度に近い考え方です。端的に言えば、後見は必要な範囲にとどめ、余計な制限や余計な世話をしないという考え方を取り入れている。このことは高く評価されるべきだと思います。
     また自分の老後を自分で決めるという任意後見制度の採用に踏み切ったことは、福祉における自己決定権を支援するものとして評価できます。私自身、弁護士として任意後見の必要を訴えてきたわけで、そのことは評価しています。しかしながら、今回の制度では、任意後見は後見監督人を間に入れなければならないことから、家庭裁判所がやや引いたような形になっていることが気がかりです。裁判所の積極的関与がなくなり、監督人が入ることによって、使い勝手という点からみれば、重装備といいますか、やや重たい制度になったのではないでしょうか。また、裁判所に代われるだけの能力のある人をどのように確保していくかという課題が残されたと言えます」

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