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呉市をあげての大騒動



それでは、これまで手がけた中で、印象に残った事案を紹介していただけますか?

    田島
    20代後半の母子家庭のある女性が相談に来られたのです。ある消費者金融で、30万円借りたが、四苦八苦しながら、なんとか返した。しかし、ある日突然、別の消費者金融から内容証明が送られてきた。どういうことだろうと、私のもとに持ってきたわけです。それは債権譲渡通知書でした。読むと、借用証書が偽造されていて、彼女と似たような筆跡の署名、似たような認印が押されていて、前の消費者金融が他の消費者金融に債権譲渡して、逃げてしまったようになっている。しかし、どうも文面がおかしい、非常に話ができすぎている。譲渡された消費者金融も、何もかもわかった上で、というようなマニュアル的な対応をとるわけです。彼女は市役所や警察にも行ったけれど、民事ということで相手にもしてくれないという。私は新聞社の支局へ事件をリークして、記者会見を行う手配をしました。さらに海事代理士会で理事をやっていたラインから、弁護士会の副会長に話して、被害者の会を結成してもらって、地検のほうに告訴状を提出しつつ、監督官庁の県庁の金融課には調査依頼の上申書を出しました。新聞に載ると、さすがに警察も泡を食ったらしくて、副署長以下で捜査態勢に出るから、被害届を出してくれと、彼女に電話をしてきたそうです。その後、新聞社から連絡があり、300件ほどの同様の被害者がいることがわかり、地域を揺るがす一大事件へ発展していったんです。

呉市をあげての大騒ぎになってしまった。

    田島
    なりました。新聞記事を見て、被害に遭ったと気づいた人もいると市役所から連絡がきました。私はその件に関して内容証明を作成していました。このような債権譲渡通知書が来たが、債務とされているものについて、その存在は無いという内容ですが、市役所ではそれをコピーしてみなさんに配布したようです(笑)。

その行動力には目をみはるものがありますが、消費者金融を相手にするような場合、暴力団とかの恐怖はないですか?

    田島
    結局のところ、暴力団もビジネスなのです。その辺のラインさえわきまえていたら渡り合えます。本当の意味で、危ない筋の人が出てきた場合、弁護士に振るなり、弁護士から委任を頂いて交渉するなりします。私の発想は法律家としてはアバウトなほうで、たとえ行政書士法、弁護士法という営業許可の枠があっても、無報酬でやるなら、助けになればいいじゃないかと。地域で食べさせてもらっているのだから、地域に貢献しようという考えで動くところもありましたから。

そのあたり、「人情知らぬは……」というイメージとぴったりだと思いますね。

    田島
    ありがとうございます。損得で動くと、地方の場合、まず受け入れてもらえないし、なにより地方でやる意味がありませんね。

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