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二審判決(東京地方裁判所1993年2月26日判決言渡)

 一審の東京地裁は、1の点につき、「父母がともに知れないとき」を国籍付与の要件としたのは、父母のいずれかが特定され、かつ外国籍を有しているときは、一般的に子がその父または母の有する国籍を取得できる可能性が大きいことを根拠とするものであるから、その要件の判断に当たっては、子に国籍が付与されることが可能な程度に父母のいずれかが特定されているかどうかという観点から検討する必要がある。
 2の点につき、自己が日本国籍を有することの確認を求める訴訟においては、自己に日本国籍があると主張する者が、国籍取得の根拠となる法規に定められた要件に自己が該当する事実を立
証しなければならないが、国籍法第2条3号の「父母がともに知れない」という要件についても、これと異なるところはない。しかし、人の身元がわからないことを証明することは困難であるから、その立証については、その者の出生当時の状況などにより、通常は父母をともに知ることができないであろうと考えられる程度に事実を立証すれば足り、その相手方において、父又は母のいずれかの身元が判明していることを立証しない限り、要件該当の事実につき証明があったものとして取扱うのが相当である。なお、反証として父または母が知れていることを立証するには、父母のいずれかについて、子にその親の国籍取得を可能にしうる程


度にこれを特定して示す必要がある。」
 1の点につき、外国人出入国記録によればフィリピン国籍の「セシリア・ロゼテ」という1960年11月21日生まれの女性が1988年に日本に入国していることが判明している。しかし、病院では当該女性は自分の生年月日を1965年11月21日といっており、5年の違いがあり、また、出入国の記載記録上の、氏名と入国の際のEDカードへの署名とが異なっている。同一人物で自らの名前の綴りをこのように間違うことは考え難い。「セシリア・ロゼテ」を名乗って、何者かが同名の旅券を取得しわが国に入国した疑いが払拭できない。結局父母がともに知れないと認める外はない、と原告アンデレちゃんに日本国籍を与える勝訴の判決を言い渡した。


 もう少し簡単に言うと、
1.「父母が知れないとき」を立証する責任は、あ程度「知れないこと」という事実を立証すれば、相方において父または母が判明していることを反しなければならない
2.母親は「ロゼテ」とは違う可能性 が十分にあるとの内容の判決でした。私は、判決後の記者会見用に、完全勝訴・一部勝訴・敗訴の3つの声明・コメントを用意していました。勿論、司法記者クラブでは「この判決は、子どもには生来的、根元的な人権として国籍取得の権利があることを認めたものとして、画期的な意義を有しています」とコメントした勝訴声明を読み上げました。


 
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