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雇用

緊急経済対策・能力開発対策等


 長氏の言うように、行政も能力開発に力を入れようとしている。昨年11月にまとめられた「緊急経済対策」(注1)の中でも、雇用対策が重視され、「雇用活性化総合プラン」(注2)、
「労働力需給調整機能の強化」が盛り込まれた。能力開発に関係する政策では、「雇用活性化総合プラン」の中に「能力開発対策等」としてあげられている。その柱は以下の4点だ。


1 職業能力開発相談支援事業の実施
「中高年離職者に対する職業能力開発に関するきめ細かな相談援助及び民間教育訓練機関を活用した職業訓練の実施」(「雇用活性化総合プラン」より)
 たんなる能力開発だけではなく、「相談事業」、つまりその人がどのような能力をもっているか、あるいは今後、その人にどのような教育訓練を施していくことが必要かというカウンセリングを含む。
   対象者としては今、厳しい状況に置かれている非自発的な中高年離職者で、訓練受講費は無料となっている。また失業期間の生活保障のため、雇用保険受給資格者については雇用保険給付がなされ、これに該当しない人に対しても奨励金という形で生活保障をする。


 能力開発に関して言えば、行政の役割は施設を建設して、そこで教育訓練を施すことに加えて、いかにして民間の活力を生かしていくかが重要といえる。今回、示されたプランはその観点から、民間の教育訓練機関である専修学校や
各種学校に対する委託訓練を行い、官民一体となった支援をしていこうというもの。「雇用活性化総合プラン」では特に一般会計を導入して、民間の教育訓練機関への委託訓練を取り入れた。

2 アビリティガーデン等を活用した職業能力開発の積極的展開
 平成9年に作られたアビリティガーデン(注3)はホワイトカラー向けの職業訓練の実施、そのための研究を目的とする施設である。また全国に雇用促進事業団の施設の職業能力開発促進センターがある。
   今回の「雇用活性化総合プラン」の目玉のひ一として、これまでアビリティガーデンが産業界などと協力してつくってきたホワイトカラー向けの訓練コースを職業能力開発促進センター等で実施していくことが盛り込まれた。


 ホワイトカラーの能力開発は技能工向けの職業訓練とは性質が違う。産業によって必要なスキルは異なるうえに、一つの企業の中でも、管理職と一般の社員というように階層によっても異なる。さらに企業の業務も日々、進歩していることもあり、産業界との情報交換は大切である。 「実際に民間企業で人事労務の業務に携わっているような方の知恵をお借りするということです。アビリティガーデンの調査研究開発事業も民間の方が入られていて、それぞれの産業に持ち帰って活用していただいています」  (長氏)


3 職業能力開発促進センターにおける 夜間コースの導入等離転職者訓練の拡充
 1の職業能力開発相談支援事業で民間の教育・訓練機関を活用するが、国(事業団)がもっている施設についても、可能な限り受け入れていく。   それぞれのコースで、訓練定員を1〜2割、増員する。また夜間コース(3〜9時)も導入することで、より多くの離職者に対して訓練ができるようにする。


4 教育訓練給付制度等の活用による主体的な職業能力開発の支援
 昨年12月に教育訓練給付制度が施行された。これは労働大臣が指定した教育訓練の講座を受け、その修了後、ハローワーク(公共職業安定所)に申請をして、教育訓練を受けたという証明がなされ、かつ雇用保険の被保険者であれば

  (要件は被保険者期間が5年以上であること、なお離職後1年以内であれば可)、教育訓練を受けるに当たってかかった授業料、入学金などの8割を支給するというもの(20万円を上限とする)。今年4月には約4,000講座を労働大臣が指定している。


アメリカ型かヨーロッパ型か
 今後、雇用問題を考えるとき、よく取り沙汰されるのが、「アメリカ型かヨーロッパ型か」という議論だ。“アメリカ型”は市場原理に任せて、労働移動を進めている。一方、ヨーロッパ型は社会民主主義的な手法による雇用対策だが、社会保障を完備するため、コストが高くつく。
 労働省はどのようなスタンスをとろうとしているのか。
  「今後、労働移動が増えるのは時代の流れからして不可避としても、ある会社からある会社に移るとき、失業という期間を経ないようにすることが大切だと思います。市場原理を重視する論調から言えば、それと逆行するように感じられるかもしれませんが、“失業なき労働移動”ということを掲げています」(長氏)


 そのため、雇用を維持する正業に対する雇用調整助成金の支給という従来からの施策に加えて、今回のプログラムには労働力を受け入れた企業に対する助成金の支給が盛り込まれている。
 日本の労働政策はどのような方向に進もうとしているのか。
 労働省は社会経済情勢の変化に鑑み、第9次「雇用対策基本計画」に関する検討を始めた。
 その際、一つには省庁を超えた連携が望まれる。現在も関係省庁連絡会議が設けられ、雇用創出という意味において将来有望とされる15分野(注4)に関する情報交換などが行われているが、一層の協力によって総合的、戦略的な政策を講じることが求められる。また特に教育訓練については民間の力をいかに活用していくかが問われているとも言えよう。



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