↑What's New ←目次 ←特集表紙
0 1 2 3 vol.1
雇用

能力開発行政の必要性


「現下の景気局面の中で、事業縮小等を余儀なくされた企業に対する雇用の安定のための対応が重要となっている一方、中長期的に見ても、産業構造の変化の進展を背景にして、離転職などの形で産業間・企業間の労働移動が増大することが予想されるが、その移動に当たっては、 職業転換や職業能力の再開発が必要とされる場合が多いものと考えられる。こうした中で、これらの労働移動が円滑に行われるためには、職業能力開発の果たす役割が大きくなっており、企業内外における職業能力開発を積極的に推進するとともに、その受講の機会を確保していくことが重要である」


 以上は労働省が5年に1度、策定している「職業能力開発基本計画」からの引用である。今、労働移動を活性化させ、労働需給のミスマッチを解消する必要性が説かれている。“需給調整機能”を整備することによって、これまで民間企業が抱えてきた余剰人員の労働移動を円滑に行うことが求められる。だが現実問題として、中高年が一度、離職した場合、 再就職をすることは難しい。行政としては、求職者ができるだけ多くの求人情報にアクセスできるように整備するだけでは円滑に進むとは言えない。また、例えば50歳くらいで退職して、新しい職場に移り、20〜30万円の月給を得たとしても、とても家族を養っていくことができないという現状もある。


 いずれも、その背景に、これまでの企業の従業員の教育訓練の問題がある。
 長期雇用という慣行が続いた日本企業の場合、教育訓練はOJT(on the job training)という形で、事業所ごとに、それぞれの特性に応じた訓練を行ってきた。逆に言えば、労働者がその企業から出たときの、
汎用性が必ずしも十分ではない手法とも言えるだろう。
 今後、労働移動が活発化するとすると、個々人が事業所に所属しているうちから、自発的に必要とする能力開発をすることができるシステムの構築が求められる。そのような意味から、行政上の課題として、今、能力開発が注目されている。


 従来、能力開発に関する行政は事業所に助成金を出すなど、事業所の自発的な努力を尊重しつつその実情に応じて必要な援助を行うことを主流としてきたが、これからは個人が主体的に能力開発をしたいとき、それを支援できるシステムをどのように構築していくかが重要になってくる。 個々人が自ら採用されやすいような能力を身につけること、いわゆるエンプロイアビリティ(employability)の向上をサポートすることが求められているのだ。
 能力開発行政に関して、労働省職業能力開発局能力開発課政策計画係長・長正敏氏もその点を強調する。


「個人がいかに主体的に能力開発を行っていくか、それに対して国はどのような支援ができるのか。これからの労働行政はそれが大きな柱になると思います。昨年12月に立ち上がった教育訓練給付制度はまさにそのような制度です。
これは、在職者、離職者ともに活用できる制度であり、在職中から、主体的な能力開発をすることによって、新たな職務に転換するための能力を身に付けることも可能です。対象者の現在の職務に関係する訓練でなければならないという規定は設けていません」


→Next

↑What's New ←目次 ←特集表紙
0 1 2 3 vol.1
Copyright 1999 株式会社東京リーガルマインド
(c)1999 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.