生成AIは突然現れた魔法じゃない−AIブーム「3つの波」と「学ぶAI」への転換
2026.2.5
生成AIが話題になるたびに、「時代が急に変わった」「乗り遅れたらダメかも」と、少し胸がざわつく人は多いと思います。でも、生成AIは「突然降ってきた魔法」ではありません。実はAIは、期待が高まっては冷え込む波を何度も経験してきました。では、なぜ今回の波はここまで大きく、しかも現場の仕事にまで入り込んできたのか。鍵は、AIが賢くなる方法が「人がルールを書く」から「データから学ぶ」へと根本的に変わり、そのための土台(データ・計算資源・手法)が揃ったことにあります。<執筆者>
林 雄次(はやし ゆうじ)LEC専任講師/はやし総合支援事務所 代表
情報処理安全確保支援士・資格ソムリエ・デジタル士業

- 目次
「ブーム」の前にあるもの:AIは波を繰り返してきた
AIの歴史は一直線ではありません。進歩はしているのに、社会の熱量は上がったり下がったりしてきました。理由は単純で、期待が先に膨らむと、できないことの方が目立って失望が来るからです。
この「期待→失望→冷え込み」は、いわゆる「AI冬の時代」として語られてきました。代表的には資金や関心が落ち込んだ期間として、1970年代後半〜1980年前後、そして1987〜1993年頃が挙げられます。
「じゃあ今回も冬が来て終わるの?」という不安(または、終わってくれるのかという安心)が出るのは自然です。でも、今回は「波が引いても残るもの」が以前より大きくなるでしょう。その理由を、AIが賢くなる仕組みの変化から見ていきます。
第1の波:ルールで賢くするAI(エキスパートシステムの時代)
初期のAIは、ざっくりまとめると「賢さ=人間の知識をルール化する」という発想でした。専門家が「もしAならB」「条件CならD」という形で判断手順を積み上げ、機械に教え込む。これが「エキスパートシステム」と呼ばれる流れです。(今がそうなのではないかと思う方がいるかもしれませんが、残念ながらこれは過去の話です)
でも実際、現実世界は例外だらけでした。ルールを増やせば増やすほど、矛盾や抜け漏れが出て、メンテナンスが難しくなる。環境が変わればルールは陳腐化する。すると「作るのも大変、維持も大変、成果は限定的」という状態になりやすい。ブームが一度冷えた背景には、この「現実世界の複雑さ」と「人がルールを書く限界」がありました。
ここで得られた教訓は、今でも効いています。
「世界はルールだけでは書ききれない」ということです。だから次の波では、AIの育て方が逆転します。
第2の波:データから学ぶAI(機械学習で発想がひっくり返る)
機械学習が広がったきっかけは、「人がルールを書く」代わりに、正解例(データ)を見せて規則性を学ばせるという育て方の誕生でした。迷惑メール判定なら、迷惑メールの例とそうでない例を大量に与え、どこが違うかを学ばせる。需要予測なら、過去の販売データと季節要因からパターンを掴ませる。
ここで起きた変化は、現場の感覚に寄せるなら「職人が一本ずつ手作り」から「データで回す生産ライン」へのシフトに近いイメージです。
ただし、当時の機械学習には「もう一段の壁」がありました。
それは「どこに注目させるか(特徴量)」を人が設計しないと、性能が伸びにくいこと。つまり、ルールを書く作業は減ったけれど、人の手作業はまだ残っており、キーになっていました。
第3の波:深層学習(ディープラーニング)が「特徴量づくり」も自動化した
さらに進歩した仕組み「深層学習」で強くなったのは、注目すべき特徴そのものを、モデル内部で自動的に見いだせる点です。画像なら、最初はエッジや輪郭、次に模様、次に顔のパーツ……と、層を重ねながら表現が洗練されていく。音声でも同様に、波形から音素、単語、文脈へと段階的に扱えるようになります。
そして、この頃からAIが「本当に使える」という実感が増えてきました。
なぜなら、成果が目に見えたからです。写真の中の物体を当てる。音声を文字起こしする。これらは成功・失敗が分かりやすい。社会が納得しやすかったのです。
そして今回は「条件が違う」−3点セットが揃った
AIが進歩するために大事なのは、技術だけではありません。技術が伸びるには、現実側の条件が必要です。
- データ:インターネットと業務のデジタル化で、学習に使えるデジタルデータが増えた
- 計算資源:高性能なGPU、メモリなどの半導体が普及し学習を大規模に回せるようになった
- 手法:深層学習を中心に、これまでの研究の成果が積み上がった
この三点セットが揃うと、研究室のデモのように限られた場所で見られる「サンプル」が「現場の道具」へと近づいていきます。ここまでが、生成AIの前段階、つまり「文章が本格的に得意になる前の物語」です。
ここから先が「生成AI」−でも、文章にはもう一段の壁があった
「じゃあ、ここまでで生成AIが完成したの?」といえば、まだです。
文章は画像より厄介なのです。例えば、文脈が長い。遠く離れた言葉同士の関係が意味を変える。さらに、文章は「正解が一つに定まりにくい」。この壁を越える決定打が、次回の主役になります。
次回
次回は、文章が得意になった決定打Transformerと、そこからChatGPTが「検索」だけではなく「共同作業」へ世界を変えた流れを追います。これを押さえると、生成AIの「使いどころ」が一気に現実的になっていきます。
執筆者情報
林 雄次(はやし ゆうじ)
LEC専任講師/はやし総合支援事務所 代表
情報処理安全確保支援士・資格ソムリエ・デジタル士業
はやし総合支援事務所代表。LEC講師(ITストラテジスト/G検定/基本情報技術者/情報セキュリティマネジメント/ITパスポート/DX戦略研修/生成AI活用研修など)。1980年生まれ、東京都足立区出身。筑波大学附属高校卒業後、社会福祉を志し、淑徳大学にて社会福祉を学び社会福祉士の資格を取得。卒業後はITを通じて多くの方に役立つべく、IT関連企業で1000社以上の中小企業の業務改善に従事し、業務・システムに精通。副業として「はやし総合支援事務所」開業、兼業2年を経て独立。保有資格はシステム監査技術者、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、情報処理安全確保支援士、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、ITサービスマネージャ等の高度情報処理技術者資格から、kintone認定カイゼンマネジメントエキスパート、中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー等ビジネス系、健康経営アドバイザー、潜水士、防災士、さらには僧侶まで大変幅広く、550を超える。上場企業からベンチャーまで幅広い企業での顧問や、講演、執筆、監修などに対応。士業向けに「デジタル士業」オンラインサロン主催、個人向けの資格・開業コンサルなどで幅広く活動。「資格ソムリエ」としてテレビ・ラジオ・雑誌等のメディアで活躍中。
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