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カテーテル特許訴訟の逆転劇 米国特許弁護士 服部健一
米国特許弁護士 服部健一

情報隠し
 我々の主張はまずヤマザキ・メディカル社の特許が無効ということだ。しかも無効という理由は1つだけではない。まず、ヤマザキ・メディカル社が特許出願をした際、本当にカテーテルの全ての技術を開示したか否かだ。この直前にヤマザキ・メディカル社は厚生省に製造許可願いを提出している。ここにはカテーテルの表面を親水性のコーティングでカバーするということも開示されている。これはカテーテルが血管に入った場合、抵抗が少なく、痛みを感じさせないためだ。しかし特許出願にはこのコーティングのことは一切開示されていない。ヤマザキ・メディカル社はこの情報を隠して特許を取ったともいえる。特許は技術内容を公開する代償として独占権が与えられるので、知られた技術情報のベストのものは全て記載しなければならない。しかし得てして出願企業は模倣を許さないため全てを開示しないことがある。これがトレード・シークレットに近い情報の場合はなおさらだ。些細な技術ならともかく、「重要な情報」を隠した場合、ベスト・モード違反といい、アメリカでは特許は無効になる。コーティングがこの「重要な情報」に値するか否かはにわかには判断できないが、少なくともそれを開示しなかったことは間違いない。
 これに対するヤマザキ・メディカル社の反論は、この種のコーティング技術は全てのカテーテルに用いられる当たり前の技術で、当業者なら誰でも知っていることであり、敢えて開示する必要性は全くないというものだった。両者のこの主張を判事自身が公判前に結着させるのか、あるいは判事は公判で陪審員に決定させるのかまだわからない。
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