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21世紀の大学象とは?
“産学断絶”を解消するために


反町
実務に役に立つ社会科学を実現していくには、これまでのように欧米のサイエンスをもとにして実際の世界を見るのではなく、例えば30歳くらいの、若い、講師レベルの方が実務の世界に飛び込んで、企業の現実の問題に正面からぶつかり、自分の考えを活かしながら解決していく。そのときにサイエンスを利用するという逆転の発想をしなければならないでしょう。
 ただ、そのような方法論は従来の社会科学とはまったく別もので、評価されないし、助教授にもなれないかもしれない。それでは何のために大学に残ったか分からないことになってしまう。講座制があって、先生の覚えが悪いと助教授になれないという意識。まずはそれを取り払わなければならないですね。そうしなければ、若い人は実社会のほうに歩み寄らない。歩み寄ったところで、自分が助教授になれなければどうしようもないわけですから。
    手塚
    その点、アメリカで勉強してきた人はその枠から外れています。そういう人が日本でドクター論文を書くと苦労するのです。古い文献から10ページ引用しないとドクター論文が通らないということがある。
反町
そのような状況をどうにかしなければ、社会科学はダメでしょう。自然科学は法則や原理に従うものですから、学者と実務家は共通の地盤に立つことができます。しかし、社会科学は素粒子の世界を相手にするわけではなく、人間のイマジネーションを対象とするものです。学者と実務家のイマジネーションが異なれば、共通の基盤がなくなる。現状は産業界と学会の断絶、つまり“産学断絶”であって、産学協同と呼べるようなものではない。それを変えていくには、大学で30歳前後の人がもっと自由に動けるよう、タガを緩めるべきです。講座制があって、先生に睨まれたら、助教授になれないようでは、突破口が開けません。逆に、そんな縛りには驚かない、講座制の枠を飛び出していけるというような大物は日本の枠も飛び出して、アメリカに行ってしまいます(笑)。頭脳の空洞化を防ぐためにも、早急で、根本的な大学改革が望まれますね。


プロフィール

手塚和彰氏 手塚和彰

1941年長野県松本市生まれ。
東京大学法学部卒業。
同大学助手を経て、1970年千葉大学講師、1974年同大学助教授、1984年同大学教授。
1985年〜87年ドイツケルン大学客員教授等を兼任。
1999年4月より法経学部学部長。
1995年以降、マックス・プランク国際社会保障法研究所(ドイツ)と高齢化社会への対応の共同研究を行い、日欧社会保障研究会を日本側代表者として主催。本年も10月4日(月)より9日(土)まで高齢化社会問題についてヨーロッパから20人の著名な研究者などをよび日欧高齢社会シンポジウムを開催。

著書に『国の福祉にどこまで頼れるか』(中央公論社、1999年)、『高齢社会への途』(編著、 信山社、1998年)、『外国人と法』(有斐閣、1999年第二版)ほか多数。また「ドイツ介護保険法の成立と展開」(ジュリスト、1996年2月1日号〜2月15日号)、「高齢者社会のひとこま」(書斎の窓、1996年1月号〜12月号)を発表。


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