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特集2 司法制度改革3
日弁連が目指す法曹一元

反町
審議会の「論点整理」の項目についてご意見をうかがっていきたいと思います。まず法曹一元です。「基本的提言」でも、これを推進すると表明されています。しかし、弁護士任官(注3)という制度がすでに存在し、立候補か推薦で弁護士が裁判官に登用される枠があるわけですが、いつもその枠に満たないのが現状と聞いています。
    吉野
    確かに弁護士任官の数はこれまで累計で40名に達するか達しないかという水準で、少なすぎるとのご批判もあります。
     ただ、理解していただきたいのは、現在の裁判官のキャリア・システム(官僚裁判官制度)体制における弁護士任官制度と、われわれが考える法曹一元は根本的に異なるということです。現在のキャリア・システムを基本的には維持したまま、一部に弁護士経験者を入れて、これを修正しようという方法は、まさに大海の一滴です。私どもが提案する法曹一元は、裁判官の任用資格を弁護士などの経験者からとするだけではなく、裁判官を選ぶ方法として地域住民を中心とする推薦委員会によって選任し、裁判官の昇給、任地などについても司法行政による統制を排除する制度を提案しています。法曹一元下では、裁判官の官僚性を徹底的に排除し、裁判官の独立と市民的自由を確保するための抜本的改革を提示しています。現行のキャリアシステム下の弁護士任官とは根本的に異なるので、現在の弁護士任官数のみをもって法曹一元の実現性を論じるのは妥当性を欠くと考えます。いづれにしても部分的な改良策では、どうしても弁護士任官者等の確保も難しく、また基本的な変革にはつながりません。
     われわれは法曹一元を「市民による司法」というより民主主義的制度の実現ととらえています。2010年の実現を提唱していますが、それ以降は判事補制度を廃止してすべての裁判官は弁護士を10年以上経験した人の中から採用する。その選任にあたるのは市民が加わった裁判官推薦委員会とする制度です。
反町
中坊公平委員が審議会で発言されましたが、法曹一元が法律として制定されるまでの段階は、指名なり、任命があれば、弁護士は応ずる義務があるという制度を取り入れることは不可能でしょうか?
    吉野
    それについては日弁連内部でもかなり議論しています。中坊先生のご意見も、方向性としては、われわれとそれほど違わないと思いますが、ただそれを実現するにしても、少なくとも本人意向を全然無視したものであってはならないと思うのです。
     個人的な意見としては、弁護士、弁護士会には当然、公益的義務があるわけで、会として弁護士会、弁護士の法的義務を拡大することは可能かと思います。また弁護士法が改正され、任官が法的義務として設定され、あるいは弁護士会の会則に規定されれば、それもひとつの在り方だろうと思います。しかし、弁護士法改正なくして、個人に対して法的義務を負わせることが是か否かというと、憲法問題ともからむぎりぎりの法律論になるわけです。
     私としてひとつ言えるのは、われわれの考える法曹一元の制度の採用が決定して、10年後にはキャリア・システムが廃止され、民間の弁護士による裁判官制度ができるとの見込みが立てば、これまでは補完策だった弁護士任官制度とは事情が大きく変わって、相当数の弁護士任官が発生するだろうということです。また弁護士会としても、東京会・大阪会を中心に、法曹一元制度が採用されるならば、それに至る期間、年に50人程度の弁護士任官を進めていく計画を立てています。

注3 「弁護士第72条(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)」
 弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審請求等行政庁に対する若しくは不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。但し、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

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