日本のヤマザキ・メディカル社がアメリカのインデイアナ州にあるウィルソン社製造のカテーテルに特許侵害があるとして、訴訟を起こした。ウィルソン社長は公私ともに親しい弁護士エムハルトに弁護を依頼。
ワグナー、ベルベスコス、ズレイタスを加えた訴訟チームが結成された。ヤマザキ・メディカル社が提訴した裁判所はバージニア州東部地区裁判所。通常3年はかかる特許訴訟を10ｶ月で決着させる裁判所だ。
彼らは、この事件には日本の特許弁護士がぜひとも必要だということで、ワシントンD.C.にいる私に、チームに入るよう依頼をしてきた。日本企業を相手にした訴訟の弁護はしないという信念を持つ私だったが、彼らの熱意に動かされ、アドバイザーとして参加することにした。
ヤマザキ・メディカル社のカテーテル開発にかかわった5人の研究者のうち、4人はすでに退社し、所在不明であったが、4人の居所を突き止め、デポジションを行うことになった。デポジションの準備にヤマザキ・メディカル社の書類を1枚、1枚丹念にチェックしていた私は、日本の厚生省へ提出した1枚の書類に目がとまり、ベルベスコスらの待つインディアナポリスでの作戦会議上、このたった1枚の書類がこの事件のカギとなるベストモード違反の立証となる糸口となることを指摘した。どうにか裁判所からベストモード違反の立証となる書類の強制提出命令を出させることに成功し、デポジションまで多忙な毎日を送った。
原告側開発者のデポジションを行うため関係者一同は大阪へ向かった。原告側開発者は緊張のあまり顔が引きつり、声をかけて緊張を和らげてやりたいくらいだったが私の立場ではどうすることもできなかった。原告側のシュナイダー弁護士は執拗にオブジェクションを行うが、私には単なる時間稼ぎのようにしか思えなかった。
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