↑What's New ←目次
通巻 196号

 
獨協大学法学部シンポジウム
「法学教育とロースクール構想」

 22日、獨協大学法学部のシンポジウムが開催された。有力他大学に対抗する形で、小規模法科大学院の設立、他大学との連立・連携をも視野に入れた現実味あふれる試案が示された。また、司法試験予備校との提携に大学として初めて触れたことが特筆に値する。
<獨協大学試案(要旨)>
1. 法学部教育
前期2年を「基礎教育」期間とし、専門基礎的な教育を学科共通でおこなう。後期2年を「職業教育」期間とし、卒業後の進路を学生に明確に意識させるプログラムを提供する。
現在の法律学科を「企業一般コース」「公務員コース」「法曹コース」に改組する
新設される「法曹コース」では職業教育として六法を基幹科目とする
2. 地域社会との関係
東京にも近く、北関東地区への入り口、東北地区にも開かれているという地理的条件を活かす
3. 小規模ロースクール
1学年20〜30名程度の定員
専門大学院の教員基準からしてこれ以上の規模は財政的に困難
4. 連合型ロースクール
同一学校法人内部での提携、複数大学間での提携を視野に入れる
5. 司法試験予備校との提携可能性
法科大学院制度スタート後、むしろ予備校への社会的需要が増えるかもしれず、積極的な提携を模索したほうが生産的
 
政府行政改革推進本部規制改革委員会
「規制改革に関する論点公開」

 26日、政府の規制改革委員会は『規制改革に関する論点公開』を行った。規制緩和推進3か年計画の最終年度にあたることから、過去2か年度の進捗状況のフォローアップが行われているほか、IT化、環境問題の分野で論点が追加されている。
  業務独占資格の見直しについては、強制入会制、報酬規定のあり方について論点が詳細に検討されている。
<規制改革委員会の意見(要旨抜粋)>
1. 強制入会制
強制入会制下の資格者団体は一種のギルドであり、法定されたボイコットに他ならない。
現在のような情報化社会では、国内外の関係行政の動向、関係法令の改正状況等の情報を資格者個人が入手することは容易。研修実施は根拠とならない。
弁護士には繰返し懲戒処分を受ける者が多数いる。およそ資格者の品質維持と強制入会とは関係ない。弁護士の場合は、団体自治と組織維持のためでしかない。
公正取引委員会は、平成10年9月に司法書士及び行政書士の報酬規定及び広告規制について競争政策上の観点から指摘を行っている。競争制限的行為は強制入会制をとる資格者団体固有のものである。
競争制限的行為は、報酬水準の高騰やサービスの質低下を招き、利用者たる国民に不利益となる。
医師、建築士などの資格では任意入会制が採られている。全体として資格者の資質低下や倫理観の欠如は指摘されていない。
2. 報酬規定
行政書士、弁理士については報酬規定を会則記載事項としない旨、法改正が行われた。弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士及び社会保険労務士についても報酬規定を外すべきである。
資格者団体は個々の資格者の原価計算の要素を考慮せずに一律に基準額を示すことは適切ではなく、各資格者が独自の報酬額を算定できるよう、報酬についての基本的な考え方や原価計算の方法を示すことにとどめるべき。
結果として資格者間でほぼ横並びの報酬となってしまい、自由な競争はむしろ阻害されている。事実、日本司法書士会連合会は会則基準を改正している。
利用者に対して参考として、また広報として報酬の基準を示すのであれば、報酬規定を弁護士に遵守義務が課される会則記載事項としたり、着手金及び報酬金を増減できる範囲を制限したり、着手金の最低額を制限する必要はないはず。
 
日弁連シンポジウム
「日本型ロースクール 〜公平、解放、
多様なロースクールを確立するために」

 29日に行われた日弁連のシンポジウムでは、まず第1部としてアメリカとカナダのロースクール事情につき、遠藤直哉、由岐和広両弁護士から報告があった。
  第2部のディベートでは、これまで独自の法科大学院構想を発表している主な大学から1名ずつ出席し、大学間の利害が衝突し、意見の対立する論点について活発な議論が繰り広げられた。コーディネーターの塚原英治弁護士によって法科大学院制度設計に係る論点整理が十分に行われていたことから、大学間の意見対立が如実に明らかとなり、普段の大学主催のシンポジウムでは垣間見ることのできない白熱した討論であった。
  第3部のパネルディスカッションでは、第二東京弁護士会の川端和治会長が日本型ロースクール設置の提言を行った。ここでもまた、参加者から現在進行中の文部省検討会議に対して多くの疑問が投げかけられた。
<川端和治・日弁会長による法科大学院試案(要旨)>
1. 法科大学院の基本理念
「公平」「開放」「多様」という基本理念を実現する
法曹一元制を目指して、21世紀の社会にふさわしい質と量を備えた弁護士の養成を主眼とする
2. 教育対象
当面、狭義の法曹養成を目的とするが、多様な法廷外活動、専門も視野に入れたカリキュラムを展開する
3. 出願資格
「開放性」「多様性」の確保のため、出身大学、出身学部、年齢、社会経験等にかかわりなく平等に出願しうる制度とする
4. 入学選抜方法
法科大学院が特定大学出身者に占められることは、「公平性」「開放性」の理念に反する
アメリカのLSATのような適性試験を導入する
適性試験のほか、学士課程の成績・履修状況、他の大学院での成績・履修状況、社会的経験、推薦状等を加味して総合的な評価を行う。
自大学法学部出身者に制度上・事実上優先的地位を与えることは認めない
5. 修業年限と学位
昼間フルタイム課程の修業年限は、3年間とする
夜間フルタイム課程の場合は、4年間以上とする
昼間・夜間課程ともにパートタイム制の設置を認める
法科大学院修了者には法務博士の学位を与える
6. 認可・監査と外部評価
文部省の監督下に置くべきではない
法曹三者、法科大学院の代表者からなる「法科大学院管理委員会」により、認可と監査を行う
7. 設置数と総定員
基準を充たせば、設立を認める
高裁管内に最低限1校設置されるように考慮する
8. 教員
実務家教員を含める。そのため、弁護士法第30条等は廃止する。
9. 学費
奨学金制度や学費貸与制度を充実する
学費が高額なものとならないよう、国立大学への補助、私学助成金の拡充を行う
10. 新司法試験
法科大学院修了者に受験資格を与える
新司法試験管理委員会を法曹三者で組織する
合格率は7割程度、3回までの受験制限を課す
11. 実務修習
新司法試験合格者に対し、1年間実施する
実施主体は法曹三者で構成する研修機関とする

←Back


↑What's New ←目次
通巻 196号
Copyright 2000 株式会社東京リーガルマインド
(c)2000 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.