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【提言 4】 ディスカバリー手続の導入

 わが国の特許訴訟の遅滞を打破するために参考となるのが、アメリカの訴訟におけるディスカバリー(証拠開示)手続である。

 アメリカの訴訟ではまず、本案審理に入る前に、訴訟当事者が相手方の関係者から事前に証言を録取するデポジション手続が行われる。そして、法廷に出頭される証人と提出する証拠とを開示するディスカバリー手続が実施される。ディスカバリー手続の段階で証拠が明白な場合には、そのまま略式判決が出され、解決に至る。

 実際、アメリカでは、これら審理前手続の段階でほとんどの紛争が解決する。

 特許訴訟が迅速に行えないのは、特許の技術的範囲の確定、侵害行為の特定、損害の確定、賠償額の認定に困難がつきまとう上、弁護士が訴訟追行上の戦略として証拠提出の時期を見図らったりするなどして、円滑な訴訟手続より訴訟戦略を重視しているからに他ならない。

 もっとも、平成10年の民事訴訟法改正により、時期に遅れて提出した証拠は却下されうるものとなったが(民事訴訟法第157条第1項)、訴額が莫大で遅延損害金もそれに比例して大きくなること、そして少しもの訴訟の遅れが、変動する特許の市場価値により損害賠償額も変わる特許訴訟の本質に鑑みると、さらなる制度的手段が必要であり、この条文の合目的的運用だけには期待できない。

 そこで、わが国でも特許訴訟については、その審理前にディスカバリー手続を導入すべきである。

 また、ディスカバリー手続に消極的な当事者については、真実擬制をするなどの方策も検討すべきである。

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