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司法制度改革

全国15校、定員3,000名規模は適正か?


反町
先生の構想では、法曹基礎教養学部を出た後、ロースクールに入って初めて法律の専門的な勉強を行うことになっています。また教員は現在の法学部の教官を異動させるということですが、助教授や講師も含めれば、ロースクール1校に150人ほどいなければ、回らない。実務的な教育まで行える適切な指導者を十分な数、確保するのは困難ではないでしょうか?
    柳田
    私は現在、法学教育をされている先生のほとんどが有資格者だと思っています。アメリカでは、憲法を教えていた先生がいきなり特許法を教え始めたりする。自ら調べながら、教材を作りながら、教えていくのです。学生と一緒に研究するような形です。
反町
日本はそういう環境ではないですね。講座制ですから、憲法の先生が民法を教えるというようなことになれば大騒ぎになるでしょう。教授会から運営できなくなるでしょうね。
    柳田
    そこも発想を変えなければならないと思います。また実務家が参加して、初めてロースクールが成り立つという考え方には賛同しかねます。ロースクールで必要なのは、あくまで教育であって、訓練ではない。実務家は教育については素人なわけですから。
反町
先生はロースクールの設置として、全国15校、定員3,000名とご提案されています。現在、全国92の大学に法学部がありますが、その中から15校をどのように選ぶのですか?
    柳田
    15校に限定してロースクールをつくるという考え方ではありません。文部省の大学設置基準に合う大学であれば、全部、認めていい。
反町
一定の設備、能力を具備していれば、名乗りをあげればいいということですね。
    柳田
    はい。自由競争を取り入れる形です。成功する大学はどんどん栄えていけばいい。
反町
アメリカのロースクールも粗製濫造になり、途中から優良校を認定する制度になりました。そういう形ですか?
    柳田
    そうですね。法務省と文部省が共管するなりして、独立機関としての認定委員会をつくればいい。その認定校を卒業した人のみに司法試験の受験資格を与えるということです。
反町
法曹大学院の定員を年間3,000名にするというご提案ですが、アメリカの実情と比較して、今後、法律の果たす役割、ロイヤーの守備範囲、グローバルな視点からの日本の位置づけなどを考えますと、あまりにも少な過ぎるのではないですか?
    柳田
    その通りで、私もスタート時点で3,000人程度と申し上げているわけです。国民の法的ニーズからいえば、もっと必要なことは明らかです。ただ、あまりにも急激に増やせば、弁護士の質の低下という問題につながるでしょう。
反町
自由競争を取り入れるという先生のご主旨からすれば、年間3,000人とは言わず、どんどん弁護士にして、それから生き残りの競争をさせればいいのではないですか(笑)。
    柳田
    なるほど、そうかもしれません(笑)。
反町
柳田先生は法学部に限らず、どの学部からでもロースクールに入れるとされています。現在の法学部は定員が5万人くらいですが、大学、短大を含めますと、1学年、70万〜80万人いる。たいへんな過当競争の選抜になりませんか?
    柳田
    今、法学部の学生は5万人弱です。そこから3,000人を選ぶと、残りは放り出されてしまうという錯覚を起こすのですが、そうではなく、一般教養にはそれ自体で価値をもつ自己完結性がある教育を行うという前提があります。今の法学部にいるよりも、付加価値が各段に高い教育を受けることになる。そういう考え方です。
反町
最後に司法制度改革審議会がスタートしていますが、ロースクール構想を含め、審議会へのご提言をおうかがいしたいと思います。
    柳田
    ロースクール方式をも参考にしていただいて、日本の法曹養成制度を立派なものに改革していただきたい。審議会の方々には、三権の一角を担う司法がこの先50年間、100年間きちんと日本を支え、人々を幸福にできる、そういう制度をつくるという純粋な観点から審議していただきたいですね。

プロフィール

柳田幸男氏 弁護士・柳田幸男氏

1933年1月22日、富山県生まれ。1956年、早稲田大学第一法学部卒、同年、司法試験に合格。1958年、同大学院卒(法学修士)。1960年、弁護士登録。1966年、ハーバード大学院卒(LL.M)。1991年、ハーバードロースクール客員教授。ローエイシア日本代表理事、ハーバード大学評議員。

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