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司法制度改革

人間性を重視した一般教養教育の重視


反町
柳田先生のロースクール構想は現在の法学部を改組して、4年制の法曹基礎教養学部にする。そこでは人間性の形成を重視して、一般教養教育に専念するということですが、その狙いはどこにありますか?
    柳田
    今、日本の社会全体が非常にテノクラート化して、人間としてあるべき心が薄らいでいると思われてなりません。その背景に教育の問題があるのではないでしょうか。日本では高校を卒業すると偏差値などで選んで、法学部に入り、4年間を経て、司法試験に合格し、弁護士となる。ところがアメリカでは18歳でカレッジに入る。その4年間は子供が大人になっていく“踊り場”なのです。その間、自らの職業の適性を判断して、カレッジを出てから、専門教育を受ける。エンジニア、経済学、ビジネス、法学とそれぞれ勉強して、向いていないと感じれば、別の方向に行くことができる。日本ではその人格形成期を経ないで、いきなり法律の勉強を始めるわけです。
反町
そうなりますと、むしろ法律家になるのは、法学部以外の学部の人がいいと?
    柳田
    現在の法学部にいきなり入るよりは各段にいいでしょう。4年間、別のことをやってからですから、法律家としても質的に違うものなるはずです。
反町
しかし、日本の大学は先生の主張とは逆の方向に行っています。教養と専門の2年ずつを中途半端だと考え、1年から専門を始めています。現在、専門性を重視する方向へと動いています。
    柳田
    そうしないと、教養課程に学生が集まらないためです。学生を呼び戻すために、1年から学生が興味をもつ専門をやろうと、一般教養教育を疎かにしているのです。
反町
しかし、そもそも人間性は一般教養の座学で身につきますか? 社会に出て、現場で現実に触れることで初めて鍛えられるものではないでしょうか。先生がおっしゃるようにそれが教育で可能なのであれば、具体的にはどのようなカリキュラムで行えば良いのでしょう?
    柳田
    私は教育の専門家ではありませんので、具体的な科目を指摘することは差し控えます。ただ、それを考えるとき、逆転の発想が必要だと申し上げたい。法律家にとって何が必要か? ということから始める。法律家とは法律を使って問題を一刀両断に解決するのではなく、本質的には人々の心の悩みを解決する職業だと思います。そのためには、人間関係と社会に対する深い洞察力が必要となる。では、その力はどのようにすれば得られるのか? それについて、ハーバード・カレッジの学長だったヘンリー・ロソフスキー氏がカレッジの教育の目的は六つの資質を学生に身につけさせることだとしています。「謙虚さ」「人間性」「柔軟性」「批判精神」「広い視野」「倫理的・道徳的問題の理解」、以上の六つの資質を得ることで、深い洞察力を得るための基礎ができる。そのような資質を得るためには、どういう科目が必要で、どうカリキュラムを構成すべきかは教育の専門家たちに、アメリカの実例、日本の教養学部の経験、評価を含めて検討していただきたいと思います。


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