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Y2K コンピュータ西暦2000年問題


アメリカの二つの法律


 これまで日本では官僚が情報を握り、その指導のもとに社会が運営されていました。しかし今、時代が変わりつつあります。“官僚の時代”が終わり、一般の国民の意見を政治家が直接聞いて、自ら法律をつくらなければならない時代を迎えています。
 立法という面においても日本は明らかにアメリカに遅れをとっています。
 Y2Kによって引き起こされる事態を想定して、すでにアメリカでは実効性のある立法作業が行われているのです。
 一つはY2Kに関しては特例として問題点を競争相手と情報交換しても独占禁止法に抵触しないようにするもので、昨年11月、大統領がサインしています。企業の情報交換を助けるような法律をアメリカ政府は通しているわけです。
 もう一つ上院で討議されたのが、Y2Kの損害賠償請求裁判で、賠償額の上限を定める内容の法律です。訴訟を起こされた企業がどんどん潰れてしまうという事態を防ぐためです。


 国だけでなく、民間企業や地方自治自治体の行動にも日米では差があります。
 Y2Kは自分の会社が対応を誤れば、協力会社や地域に迷惑をかけてしまいます。アメリカ人は役立つ情報があれば、喜んで交換する気質を持っています。それを目的とした組織もつくられています。各地にY2Kに対応するための勉強会、ユーザー会合が開かれているのです。
 またアリゾナ州フェニックス市は市のシステムが大丈夫でも、
市内の企業が潰れたら税収面でも影響があるという理由から、市としてY2K対策をバックアップしています。
 残念ながら日本でそのような状況はありません。
 法律の専門家も同様です。私が知る限り、日本の弁護士が本格的にY2Kのセミナーに参加をし始めたのは昨年くらいからです。それに対してアメリカでは、1993年くらいから弁護士がこの問題に取り組んでいます。日米の認識にはそれくらいの差があります。


 また日本は政府も民間企業も都合の悪い情報を隠したがる傾向がありますが、アメリカではこのようなとき、第三者にチェックをさせることが普通です。それによって監視・保証するシステムになっている。日本ではそのような感覚が根付いていません。
 この数年、私は日本でY2Kに関係する仕事をしてきました。その中で、日本の社会が持つ問題点が象徴的に現れていると感じます。
物事を自分の頭で考えようとしない。情報を鵜呑みにする。責任の所在をはっきりさせない……。
 内閣、官僚組織、地方自治体、企業、それぞれでリーダーシップを発揮すべき立場にいる人が自分がやらなければならないことを知り、責任をとる覚悟を持ち、人々のためになることを断行することが必要です。Y2Kの問題を考えるとき、日本にそのような文化が求められていることを強く感じます。

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