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企業法務
企業法務部の役割

次に企業法務についてお聞きしたいと思います。この分野に精通されている高石先生は日本の企業法務を巡る状況をどのようにとらえられていますか?
    高石
    日本では、これまで司法はハイライトを浴びた部分とはいえなかったと思います。企業における法務部についても同様のことがいえます。しかし今、次第に行政優位から司法優位に移り変わっています。法制度的には終戦時からそうなっていたわけですが、現実的には必ずしもそうではなかった。それは日本がこれまで行政優位の国家体制をとっていたことに起因していると思います。しかし護送船団方式が明らかに通用しなくなっています。勢い企業も自らを守らなければならない。これからの日本は不可避的に司法優位になっていくでしょう。企業法務も、相応の質と量を備えなければなりません。
企業の法務部が果たすべき役割とはどのようなことでしょうか?
    高石
    契約書などリーガル文書の点検といった仕事については多くの大企業で十分に行われていると思います。問題は交渉が行われる前に、法務部によってその契約内容がきちんとリーガル・レビューされているかということです。そのあたりは企業によってかなりバラつきがあるようです。かなり多くの日本企業は相手が用意した契約書案に基づいて交渉しているのが現状です。自分たちで契約書を作らなくていいぶん、弁護士費用が安くあがるという考え方が残っているようです(笑い)。それは相手が作った土俵の上で勝負することであり、初めから相手のペースに乗っていることです。契約の交渉をする場合、やはり自分たちでもきちんと契約書を作って、それをもとに交渉する。そのような予防法務を確立すべきです。とくにトップマネジメントが重要な意思決定を行う前に、それを法務部がしっかりレビューしているかということは、その会社の法務部が本当に機能しているかどうかの判断基準になると思います。統計データが存在するわけではないのですが、欧米企業と比べると、その点、多くの日本企業はまだ徹底していないと思われます。
日本企業の中でも、グローバルな活動をしている企業は意識が高いという傾向はありますか?
    高石
    中には、国際法務については徹底した予防法務を実施しているが、国内法務に関しては相変わらず伝統的な日本的な手法をとるという使い分けをしている企業もあるようです(笑い)。一見、合理性のある巧妙な処理と思われますが、実は間違った方法です。そのような二元的な方法をとっていますと、次第に国内基準にひっぱられてしまうものです。国の内外の取引とも同じスタンダードで処理していかなければ、予防法務は徹底できません。そもそも日本国内の企業文化も急速に変わりつつあるのですから、その意味においても、今後、一元的な予防法務の徹底が不可欠になっていきます。

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